Aerosmith - Toys in the Attic

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Aerosmith - Toys in the Attic (1974)
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 70年代を駆け抜けたロックバンドのスピードとそれ以降の同じ時間軸でのスピードは明らかに異なるように感じる。普通に考えればテクノロジーも情報量も増えた近年の方がスピードが増しているハズだし、実際その中で我々も生きているように思えるが、ロックの世界については70年代の疾走感が圧倒的に中身が濃い。ロックが一気に多用な可能性を見せ、皆がそれを試そうとアレコレ試行錯誤し、そのためにバンドが疲弊してドラッグ体質も進み、その結果とんでもない作品が数多く生み出された。80年代以降は革新性は幾つか見られたが多くは基本形からの発展や想像できる範囲での進化に留まっているようにも見えるし、そこから40年経過してもまだそこかと言えばそう見える。ところが70年代はもうそこまで進んだのかと思うような発展性を多く感じられた。だからこそロックは70年代が圧倒的に面白いし今でもその時代のスターがそのままロックの象徴となっている気がする。自分的にロックを聴き始めてすぐに70年代の虜になりひたすら探しては聴き、また情報を収集してレコードを漁りに行く事が日課になってしまい、どこまで進めばこの旅が終わるのか、果たして終わりはあるのかなど考えずにハマっていったのでどうしようもない。その中を今でも歩み続けている部分もあるが、オーソドックスなロックのアルバム群を聴いているとやはり血湧き肉躍る楽しみが味わえるので、好きなのだろう、いや、好きです。

 Aerosmithが1974年にリリースした3枚目のオリジナルアルバム「Toys in the Attic」はプロデュースに恒例のジャック・ダグラスを迎えてこれまでのセールスからは抜き出たヒットを放った会心の一枚。久々にクレジットをマジマジと眺めていて気づいたが、エアロスミス=スティーブン・タイラーとジョー・ペリーのToxic Twinsが中心となった曲作りの印象が強かったものの、ここではほとんどがスティーブン・タイラーの作品だ。ふと過去のアルバムを見直してみれば、それもほとんどがスティーブン・タイラーの作詞作曲が多く、案外Toxic Twinsの、ジョー・ペリーの作曲面での貢献度はクレジット上では見られない。ギターリフや楽曲のかっこ良いアレンジ面では大いに貢献している気がするが、曲作りの根幹はスティーブン・タイラーの才能の豊かさの方が優れていたのだろう。何となくジョー・ペリー楽曲だとあまりにも普通にロックした曲ばかりになりそうで、スティーブン・タイラーが入るとバリエーション豊かに、ロックに縛られない作風が飛び出してきそうだから納得はする。しかし、改めて意外なクレジットだった。

 自分とエアロスミスの出会いは丁度バンドがオリジナルメンバーで復活したぞ、と言うような時期だったので70年代のぶっ飛びパワー全開でドラッグバリバリの時代はリアルでは知らない。後に映像で色々なライブや写真を見ていたのでそのボロボロ具合は疲弊度、逆に毒気のあるステージ姿は正に悪の華と言わんばかりのトゲトゲしさもカッコ良く見ていた。そして70年代に手を付けようと思って最初に入手したのが本作「Toys in the Attic」だったのでなかなか想い入れの深い一枚だ。冒頭の「Toys in the Attic」のギターリフからしてカッコ良すぎるくらいにカッコ良かったから早速ギターを持ってコピーを始めたくらい。それがまたそこまで難しくなかったので余計に好きになって、シンプルなリフでもこれだけカッコ良いギターが弾けるのかと。ジョー・ペリーのギターが実にワイルドっぽい音で録られているのもあって、楽曲全体がワイルドでラフに聴こえるがそこまで音は厚くないし、どちらかと言えばスカスカな質感が70年代のアメリカ。それでもスティーブン・タイラーの圧倒的な歌唱が正にロックを象徴してて、その実目立たないところではトム・ハミルトンのベースが物凄くブリブリと旋律を奏でて弾いているので躍動感が凄い。この一曲にエアロスミス流ロックを全て詰め込みました的な代表曲。次の「Uncle Salty」はスティーブン・タイラーとそのトム・ハミルトンのクレジットなので、ガラリと質感が変わり、軽快なシャッフルを貴重としたアメリカらしいサウンドがジョー・ペリーの英国ロック好きと入り混じって不思議な感触のユニークな曲になってる。コーラスが被さってくるあたりはビートルズを意識したかのようにも思えるし、エアロスミスでもこういう技が使えるのかとの発見もあった。そしてもうひとつのエアロスミスらしいパターンとも言えるスティーブン・タイラー作の「Adam's Apple」は微妙なギターのリフが何気に好きで、こういうパターンは多分ジョー・ペリーからは出てこなかっただろうからブラッド・ウィットフォードの貢献度が強い気がする。あくまでも勝手なる仮説だが、何せバークリー音楽院卒のギタリストなので組み上げられる音の積み重ねは上手そうだから。その流れを一気にぶった切り、スティーブン・タイラーの超ドアホ的な歌詞が炸裂する「Walk This Way」はこの時代でそのリズムとギターリフを奏でるかとぶっ飛ぶ面があるのは事実。後に大ヒットを放つが、この時点でもかなり実験的野心的楽曲。ただ、じっくり聴いていると当然ながらこの時点ではラップや黒人系のリズムを取り入れてという発想ではなく、少々タイトなリズムにガチャガチャとギターを入れてみようとのお遊び要素が強い曲だったと思う。瓢箪から駒の大ヒットとも思えるがメンバーは実際どう思っていたのだろうか。それで案外あのギターが難しいと言うかリズムとフレーズが面倒で弾きにくい曲だし、ベースのボコボコ音がどうにも妙な質感でやはりお遊び要素満載な気がする。そしてA面最後は1952年のブルムース・ジャクソンなるブルースメンのヒット曲「Big Ten Inch Record」をカバーした軽快で躍動感溢れるついついダンスホールで踊りたくなる頼もしい楽曲で、こういうのを持ってくるセンス自体がユニークだし、エアロスミスがブルースに根ざしたバンド感を出してくれるチョイス。カバー云々はともかく、好きな一曲だ。

 B面は後のライブのヘヴィさからすると全然軽めでソフトに作られている「Sweet Emotion」で、これもスティーブン・タイラーとトム・ハミルトンのセンスで生み出されているが、最初聴いてた頃はあまりにも同じパターンばかりで聴いてて飽きてくる曲だと感じてたので好きではなかったが、聴いているウチに徐々にこのヘヴィさや単調さが染みてきて普通に聴いているようになった。鋭く突き刺さってくるようなギターソロプレイも斬新だったしライブではトーキングモジュレーター使ってのプレイも見れて何かと実験的な要素に取り組んでいるバンドの姿も見れる。ここでようやくにしてToxic Twinsの曲「No More No More」が登場するが、なるほどこういうパターンに陥るかとジョー・ペリーのセンスがどことなく分かってくる作風。確かにエアロスミスらしくスティーブン・タイラーが冒頭からハイテンションで畳み掛けて、展開を落としながらまた盛り上げていきギターソロと。ジョー・ペリーの曲だけを抜き出して聴いてみると多分ヤードバーズ的なエッセンスがもっと聞き取れるのだろう。そこを他のメンバーの曲で薄めているからこそエアロスミスになるの納得の発見だったが、ジョー・ペリーの曲でもギターがひたすら攻めてくるような曲にはならないあたりのバランス感覚がバンドの秀逸さかもしれない。ここからの2曲は地味に活躍する男、ブラッド・ウィットフォードがリードギターを取るが、まずはヘヴィなサイケ風味すら持ち合わせる全くエアロスミスらしからぬ「Round and Round」が明るく楽しくおばかなアルバムの雰囲気を一気に否定して重厚さを出している。後期ビートルズにヘヴィなギターをぶち込んだような作風はメンバーにも好まれただろうと想像されるし、ここでのブラッド・ウィットフォードのプレイもさすが、エアロスミスの重鎮と言わんばかり。最後は「You See Me Crying」だが、クレジットに見慣れない名前Darren Solomonとあるので何かと思えばスティーブン・タイラーの昔組んでたバンドのメンバーらしい。と言う事はこの曲は随分昔からスティーブン・タイラーが昔のバンドでやってた曲、持ってた曲で、ここでリアレンジしてエアロスミス流に仕上げて再登場させたのだろう。エアロスミスらしいワイルドさは鳴りを潜め、妙にしっとりとチープな鍵盤でのストリングスまでも登場させて、壮大なバラードに挑戦している。この見事な旋律のギターソロは確かにブラッド・ウィットフォードじゃなきゃ弾けないだろうとは想像に難くないし、アレンジそのものも恐らくブラッド・ウィットフォードの貢献度が高いだろう。そしてスティーブン・タイラーの熱唱ぶりはハンパなく凄まじいので理由はどうあれ本作最後の収録は大正解。最後の最後のピアノに絡むトム・ハミルトンのベースも含めて見事な作品。

 エアロスミスのアルバムはアナログリリース後はCD創成期にアナログからそのままCDにしました的なディスクが市場にリリースされ、その後は1993年前後に早々にリマスター盤がリリースされているが、正直そこまで音質に明らかな変化が見当たらず、多少分離が良くなったか、程度だった。そこからは全くリマスタリングされる事もなく、またリミックスもなく、ボーナストラック付きのデラックス・エディション盤がリリースされる事なく、1974年当時にリリースしたこのまましか出ていない。ある意味当たり前と言えば当たり前で、作品の断片や未完成作など残されていない、リリースする必要もないというアメリカらしいスタンスなのか、そもそも一度リリースした作品だからそれで終わりだとの意思なのか、今回聴き直す際になにか出ているかと思ったらそんな状況だった。商売熱心ではないのか、まだ現役バンドだからそこまで発掘しなくても良いとの判断かもしれない。ただ、アルバムとしてここまで完成度が高ければこれで十二分に満足出来るのはある。アメリカ産なのでその時点で既に最高のミックスやマスタリングは施されているだろうし、何とも合理的な考え方こそ、だ。40分弱しかないコンパクト感に加えてバリエーション豊かでロック的ワイルド感を滲み出させたミックスと音色でエアロスミス史上でも上位に位置する「Toys in the Attic」はやはりカッコ良い。









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フレ
Posted byフレ

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おーぐろ  

このアルバムだと「Walk This Way」があるのでそこばっか注視されますが
曲調的にヴァラエティに富んだアルバムなんですよね 
まぁ、表題曲でいきなりぶっ飛ばされるワケですが
あんなシンプルなリフを組み合わせただけで
あんなにカッコよくなるとか理想的な1曲目ですね
そこから山あり谷ありで最後に静かに落とす
名盤です

2020/12/06 (Sun) 22:34 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おーぐろさん

ですです。

2020/12/12 (Sat) 20:07 | EDIT | REPLY |   

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