Queen - Queen II (Deluxe Edition)

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Queen - Queen II (Deluxe Edition) (1974)
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 Amazon Primeで映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見ていたが、確かによく出来ているし、クイーンを知るのには良い映画かもしれないと思った。バンド結成の逸話からバンドの始め頃、デビューまでの軌跡とノーマルだったフレディの姿からゲイに目覚める瞬間など、見どころはそっちかと思うが、大きな側面なのは事実だし、一方のバンドの成長とフレディのこだわり具合と自信の持ち方、プライドの高さなどそこまで尖らなければあのクイーンも無かったのだろうと想像が付く。それでも自身の才能とセンスを信じて貫き通したからこそのこだわりのアルバム作り、新しい音楽世界を切り開いていく意思、正に未来を創り上げている自負こそが70年代のバンドの強みと楽しみ。その分80年代前後でのバンドの方向性を見失いかけていた面もしっかりと描かれていて、そういう経緯でフレディ・マーキュリーのあのソロアルバムが作られ、だからこそロックバンドのボーカリストのソロアルバムが面白味のない作品になるとの理由も判明した。特にフレディ・マーキュリーのソロアルバムは期待満点の時期にリリースされ、ノエビアのCMでも知られたが、アルバムの出来映えがやたらとポップで面白くなかったのは、何もフレディ・マーキュリーが悪かったのではなく、反動や刺激や助言、アドバイスが一切与えられず自身の中でしか創り上げられなかったからこその反省だったらしい。その意味で化学反応ありきのバンドは面白い。

 Queenが1974年にリリースしたロック的には素晴らしい名盤と語られる傑作「Queen II」。ホワイトサイドはブライアン・メイ楽曲が並び、最後にロジャー・テイラーの曲で満了。ブラックサイドにはフレディ・マーキュリーの組曲がこれでもかと並びまくり、圧倒的な才能を発揮しまくった素晴らしい楽曲群が聴ける最高の一枚、いや、半枚。アナログ時代はA面B面の別無くリリースされており、白いジャケットと黒いジャケットのイメージで区分けされていたが、CD時代になりいつしか白黒のコンセプトが消え、ホワイトサイドからアルバムは始まり、ブラックサイドに流れていく曲順が常態化したが、クイーンからもその曲順に異論は無かったのか、特にクレームが付いた事もなくそのまま現代に至る。自分なんぞはどうしてもブラックサイドから、と言うよりもブラックサイドしか聴かなかったに近いので、CD時代の流れもあまり好みでもなかったが、そこはデジタル時代なので曲を飛ばすのもラクで特に気にしなかったか。だからクイーン側も何も言わなかったのだろう。とは言いつつも当然ホワイトサイドもかなりの回数聴いているし、今回も久々に聴いたがそれこそ勝手知ったる曲ばかり。「Procession」はアルバムのオープニングを飾るに相応しいシンセサイザーで鳴らされるイントロダクション、と書きたいが、この時代のクイーンはシンセサイザーを全く使わないでプレイしているとアルバムにわざわざ記載しているくらいなので、ギターオーケストレーションでこのシンセのように聴こえる音を重ねまくって出している驚き。短い曲ながらもどれだけ苦労して音を何度も重ねてここまで作り上げた事か、想像するだけでもうんざりするが流石だ。そのままの流れでブライアン・メイの曲にしては随分と美しくクラシカルな響きを持つ「Father To Son」へと繋がるが、大いにフレディ・マーキュリーの助言とアレンジが加わっているようにしか思えない、躍動感溢れるこれまでの誰も作り上げた事のない世界感を出した楽曲。フレディ・マーキュリーの美学とブライアン・メイのハードロック路線が見事に融合した壮大な一大絵巻が繰り広げられた作品。クイーンお得意のコーラスワークも見事なまでに楽曲の品位を高めており、只者ではない音楽集団を示している。その余韻を残したまま更に「White Queen (As It Began)」もシンセから、と書きたくなるくらいの妙な音色と共に始まるフレディ・マーキュリーの歌声が物語性を予感させる。これもまたブライアン・メイとは思えないメロディセンスと気品さが漂うので、フレディ・マーキュリー共作だろうと思われるが、そう思うとホワイトサイドも存分に楽しむべき面で、自分も相当聴いてたのだろうから記憶がまざまざと蘇ってくる。それにしてもなんと美しく繊細で練りに練られた音色と音使いが散りばめられている事だろう。中盤などはコーラスワークとギターオーケストレーションが幾重にも重ねられ、物語が展開していき感動的なギターソロからフレディの伸びやかな歌声に繋がる気品溢れる美しき楽曲。続いてのパートもその余韻から始められるアコースティックギターの音色が品を感じさせ、ギターオーケストレーションの重なり具合も半端ないし、アコギの重ね方も他では類を見ないパターン、更にギターの音色もどこからどこまで創り上げているのかと思うばかりのここでしか聴けないマイルドなトーンが特徴的。その一つのストーリーが終わってみればロジャー作曲の歌のヘヴィな作品がテンション高く始まり、芸術とは無縁なロックらしいスタイルがアクセント的に目立つ。

 そしてブラックサイドだ。全くの別世界への扉を開いて恐る恐る歩き始めてみるまで何も分からない状況で、「Ogre Battle」の疾走感溢れるイントロに導かれた狂気のコーラスに誘われての突入。明らかに音と歌詞を聴いて映像と物語と情景が目に浮かぶ、頭の中でその中を彷徨っている光景が映る素晴らしき表現性を味わえる。これだけ攻撃的でいながら品格溢れる情景を魅せられるのもフレディ・マーキュリーの他には居ないだろう。このオープニングでブラックサイドに確実に惹き込まれてしまう素晴らしき曲と言うよりも完全に芸術作品。最後の最後のコーラスの叫び声までテンション高く聴き、そのまま「The Fairy Feller's Master-Stroke」の可愛らしくも美しくドラマティックな小曲へと突入し、先程までの胸騒ぎを抑えて今度はワクワクおどおどするかのような印象を出した表情豊かな楽曲。ここまでコーラスワークが作り込めるものかと感嘆するほどの重ねぶりで、ギターのオーケストレーションもコーラスも繊細な絹を重ねるかのように積み上げられている。そのままの流れで美しき「Nevermore」へと繋がり、今度もまた恐るべしコーラスワークとフレディ・マーキュリーの圧倒的な表現力を活かし切ったボーカルスタイルが明らかに別世界へと誘導してくれる。この2つの小曲で物語が展開され次なるシーンへ導かれると「The March of The Black Queen」が始まり、今度は壮大なるギターとコーラスの躍動から一人何役とばかりに歌い上げるフレディの本領発揮の名曲に仕上がっている。負けじとブライアン・メイもギターで美しきメロディを奏でて曲を昇華させていくし、非の打ち所がまるで見当たらない完璧な一曲。聴く度に思うのが「黒き女王の行進」の歌詞の思い付きぶりで、どういうセンスだとこういう歌詞に行き当たるのか、見事すぎるセンス。そして楽曲はどんどんと展開していき、単なる黒き女王の行進で終わらず、ピアノとコーラスだけが残された展開へと進み、またひとつの組曲がこの中で展開されているようにエンディングに向けて更に躍動していく。その仰々しい展開から一気にテンションの高さを別次元に持ち上げて続くのが「Funny How Love Is」のある意味単調ながらもいよいよ物語の終焉を迎える手前のような壮大な交響曲。バックの音を普通に聴けばさほど大した事はしていないが、そこをフレディの歌声とクイーンのコーラスワークが重厚感を持たせ、どこか宙を舞うような印象を持たせる楽曲になっている。ユニークなのはここまでどの曲も暗さがまるで見当たらない辺りで、壮大さや美しさ、凄さはあるがどれも気品があり暖かさすら感じられるスタイルに仕上がっている。そのセンスが素晴らしいし、勢い余ってのファーストアルバムでは未完だった「The Seven Seas of Rhye」の超完成形フルバージョンが聴かれるが、今更何を言うかとばかりの躍動感とメロディアスさに加えての重厚なコーラスワークと完璧な楽曲とギターオーケストレーションが美しくも迫力を感じさせる。この曲もどうしたらこういうコーラスワークと構成が思い付くのか、常人では考え付かない展開がひたすら繰り返されて、最終章に向けて余韻を残しながら唐突に終わりを迎える意外性。素晴らしい。

 1991年にハリウッドレーベルからリマスター盤CDがリリースされ、その音の良さに驚いたが、その時点ではシングルB面だった「See What A Fool I've Been」が加えられ、このQueenですらこういうシンプルなブルース曲をやっていたのかと知る事も出来たが、単なるブルース展開の割には妙に凝りまくっているのはさすが。元々ブライアン・メイがやってたスマイルというバンド時代からの曲らしく、フレディのブルースもこれまたエロチックでなかなか味わい深く仕上がっている。このCDには他に「Ogre Battle」、「The Seven Seas of Rhye」のリミックスバージョンが収録されていたが、どちらもロックリスナー的にはあまり好まないだろうダンサンブルな様相でホントにお遊びボーナストラック的にしか聴こえないが、1991年だとフレディ・マーキュリーもまだ生きてた時代だし、クイーンの意向もOKだったのだろうか。そして2011年にデラックス・エディションがリリースされ、「See What A Fool I've Been」はBBCバージョンのライブ演奏が収録、これはギターが2本聴けるのでBBCにありがちなオーバーダビングありのテイクだろうが、スタジオバージョンよりも艶かしく生々しくプレイされているのが聞き所。続いては「White Queen (As It Began)」の1975年のハマースミスオデオンライブからで今では既にフルライブがオフィシャルリリースされている楽曲。この時に一番驚いたのが「The Seven Seas of Rhye」のインストバージョン。ホントにボーカル、コーラス系が一切ミックスされていないが、音はスタジオ盤で聴けるあのままだ。更に驚いたのがこのままのテイクで30秒弱長く収録されている点で、もしかしたらの通りに最後でリズムが突然途切れて別の歌、コーラスが一瞬入るあたり以降のエンディングのインストが記録されて、最後にフレディの声が被さってくるレアな代物。このバージョンのためだけに2011年盤は聴いておく必要あり。「Nevermore」は1974年のBBCセッションからなので、今では既にオフィシャルでリリース済み、最後は1991年盤と同じくスタジオバージョンの「See What A Fool I've Been」が収録。

 とことん作り込まれたアルバムなので、アウトテイクや未発表曲など出てくる間もなくひたすら楽曲を作り上げていった感が強かったようだが、これだけの完成品が作られて聴けるのなら大満足。どこの何にも非の打ち所がなく、完璧に美しく神々しく気品高く厳粛に作り上げられた最高傑作の一枚。









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Posted byフレ

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