KISS - Alive! (Remastered)

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KISS - Alive! (Remastered) (1975)
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 キッス・フェアウェルツアーと称されてから既に20年以上が経過し、今でもそのままフェアウェルツアーをやっているような気がするが、これほどの稼ぎ頭、言い換えると経済効果の高い商品を廃盤にする必要性はなく、メンバーが年齢と共に動きが鈍るだの声が出てないなどと言った表面上の事は全て目を瞑り、売れる商品をひたすらとことんまで売り続ける思惑、それはレーベルもメンバーも会社も同じ思惑に向かっているからこそ成り立つビジネス。大人になるに連れ、キッスを単なるバンドとして見る事はなくなり、ほとんどビジネスモデル的に、商品的に見てしまう。そうでなければ説明出来ない存在の手法、コラボレーション、イメージ戦略からフィギュア展開、キャラクター販売までアメリカの、全世界での全ての関われる商売に絡んではいけないだろう。それほどに知名度と商品の個性が際立った存在で、音楽ではない側面がクローズアップされる場合が多いからこそそう思う。何しろデビューは1974年だからもう相当に古い時代から存在して今でもあのままのキャラクターでまかり通っている奇跡的なバンドだ。

 そんなKISSは1974年に無名のレーベル、カサブランカ・レコードからアルバムデビューして2年足らずの間に3枚のアルバムをリリースしてシーンに飛び出してくる、と思いきや、実はまるで売れずにひたすらライブでプロモーション活動を行っていた。様々なギミックが施されていた事は今ではとてもよく知られているが、当時は振り向きもされなかったからこそパフォーマンス、エンターティンメントに精を出し、あの様々なステージギミックが生まれたようだ。それでもアルバムは期待ほどには売れず、レコード会社も含めてかなり瀬戸際まで追い詰められていたが、ライブの評判はとても良かったからこそ、起死回生のチャンスとばかりに「Rock and Roll All Nite」が売れたデトロイトでのライブをレコーディングし、以降のショウも幾つか録音して熱の冷めやらぬ内にスタジオ作業をこなして何と同年7月下旬のライブを含めて1975年の9月には本作「Alive!」をリリース。プロデューサーにはあのエディ・クレイマーを迎えての気合の一枚で勝負に出た。これが見事に吉と出て、アメリカは当然ながら欧米でもヒットを放ち、一躍スーパースターバンドの仲間入りを果たした立役者アルバム。

 元々がキャッチーでポップ、それでいて軽快なハードロックなのでレコードで音を聴いてみればそれは実に聴きやすくアメリカ人のハートどころか世界中のリスナーの、ロックやポップスに飢えていた連中にはど真ん中にヒットしただろう。悪魔メイクの話題も大きかっただろうし、ライブパフォーマンスの口コミもあっただろうが、根本的なこのロックンロールそのままの楽曲の良さがウケたハズ。スタジオ・アルバムでは落ち着いていた楽曲が、こうしてライブでプレイされていると生々しく躍動感溢れるノリで聴けるから単純に聴いてても楽しめるし、グルーブが味わえる。そもそもこういうライブ感溢れる録音をスタジオ盤でも出来ていたらもう少し早く売れたのかもしれないが、当時を考えてみればまだスタジオ盤とライブ盤では雲泥の差があっても不思議はない時代。ライブ・アルバムでその地位を不動にしたバンドもそれなりの数ある事を思えばキッスもその仲間だ。初期3枚のアルバムからのベストチョイスそのままの選曲で、これでもかとばかりに叩きつけられるキッスワールド、メンバー全員の曲と歌声もそれぞれ個性を発揮しながらそれでもキッスらしさを出している。後年に聴ける代表曲がまだ存在していなかったこの時代のライブでこれほど熱く楽しめるのだから初期キッスの楽曲の質の高さを実感できる。冒頭の「Deuce」から「Strutter」の流れなど、今でもそのまま通じるレベルでのノリで、何と言ってもエース・フレイリーのギターソロが艶かしくてバンドに色気を与えていると感じるのはギター好きな自分だけだろうか。全編に渡ってのレスポールのトーンも歪みすぎず見事なハムバッカーの音色で正にロック、生々しい音そのまま。それを80分弱に纏め上げており、後半の名曲群の怒涛の畳み掛けはこれでノらないハズもない素晴らしきドライブ感。正にロックンロールはこういうモノだ、とばかりに若々しいポールとジーンが叫んでくれる。ピーター・クリスの歌声もまたシャガレ声で個性を放ち、聴き慣れた楽曲ながらもやはり気合が入る。

 Webを見ていると数多くの人がこのアルバムの想い入れを語っているサイトを見られるが、リアルタイムで「ヤング・ミュージック・ショウ」を見ていた方々の発信が多く、それもそのハズと思いながらそこからは微妙にズレている後追いの自分以降の世代の連中でも本作はやはり永遠の名作として語り継がれており、決してあの映像がありきではなく、ライブアルバムとしての出来の良さが飛び抜けているからだ。相当にスタジオでオーバダビングを重ねて創り上げているだろう事は聴いてて分かるが、良いじゃないか、それでも。各地のライブが抜粋されて編集されているにもかかわらず、統一した音質とバランスで見事に組み立てられ、一気に聴けてしまうサイズ、曲の良さ、テンポの良さ、C面ラストの「Black Diamond」でアンコールが叫ばれ、D面からそのアンコールが開始される展開も素晴らしい。ちなみに本作は1996年に早々にリマスタリングされてリリースされたが、それも既に随分時が経っているからか、2006年に「Alive! 1975-2000」のボックスセットがリリースされた際にまたリマスターされて、曲間の継ぎ目やフェイドインアウトが一切なくなり、全く一本のライブとして聴けるようになっている。音質、音圧アップも施されているから今の所本作のベスト音質はこのボックスに収録のバージョンのようだ。今回自分もそれを聴いているが、確かにあの昔のレコードからすると雲泥の差があるほどにクリアー且つパワフルなサウンド。これもまた久々にライブ丸ごとを聴いたが良く聴いたのもあって燃えた。キッスらしいギミックを何ら味わう事なく、純粋にレコードで、ライブの音を聴いてカッコ良いと惚れた時代を思い出して聴いていた。どんなステージだったのかと想像を巡らしながら聴いていたあの頃、その期待を裏切らない超ド迫力のライブ。凄い。





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フレ
Posted byフレ

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おーぐろ  

確かにいろいろいじって音も足しているとは言え
これはライブの格好良さを存分に顕していますよねぇ
たまにただダラダラ録っただけみたいなライブアルバムもありますが
銭出してるんだからコレくらいのクォリティにはして欲しい

2020/12/05 (Sat) 00:55 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おーぐろさん

そうそう、作り込んだライブアルバムも今となっては作品的で悪くないですもんね。
リスナーはわがままだw

2020/12/05 (Sat) 20:50 | EDIT | REPLY |   

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