Armageddon - Armageddon

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Armageddon - Armageddon (1975)
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 ヤードバーズの主だったキース・レルフもジミー・ペイジの活躍が顕著になってきた後期のバンドではこれまでよりも更に目立つ事なく、バンド活動を行っていたように見えるが、それでも1968年の幻のライブアルバム「Yardbirds 68」を聴いていると、キース・レルフが無理しながらでもがなり立てて、また「幻惑されて」でもZeppelinのそれと同じようなアプローチを試みているし、「My Baby」をジャニスばりに歌ったりと精力的なライブの姿も垣間見れる。ところがそれも長続きしないで、バンドから離脱し、フォークデュオのTogetherを組んでシングルをリリースして活動停滞。そういえば、とばかりに元々やってみたかったであろう方向性か自身のセンスを活かしてかのフォークとクラシックの融合を目指すバンドを妹のジェーンとルイス・セナモを誘ってルネッサンスとして活動し始めた。そのオリジナルアルバム2枚は今でもプログレロック界隈のクラシック・ロックの始祖的に扱われる事も多く、それがあのヤードバーズのキース・レルフの結成したバンドとのギャップも大きい。更に書けば、毎度の事ながらルネッサンスでも結局アニー・ハスラムとマイケル・ダンフォードに乗っ取られて、という言い方では正しくないが、歴史的に見れば結局その両名のルネッサンスの方がプログレ界のみならずロック界では知られているし、影響力も大きいバンドとして君臨している。どうにも不運な人生を歩みつつあるキース・レルフだったが、その後、フラフラと放浪している中で1972年頃にルイス・セナモとまた遭遇すれば、今度は彼はColloseumからSteamhammerなるバンドに参加しており、そこでのアルバム「Speech」にもゲスト参加して英国ハードロックの世界に戻ってきていた。そこから数年、Steamhammerの雲行きも怪しくなり、バンドが解散した頃に残党メンバーと何かやろうと意思統一を図りつつ、結局ドラマーがなかなか見つからなかった事からアメリカに渡ったらしいが、それは多分そもそもボビー・コールドウェルへのアテがあったからだろう。ボビー・コールドウェルが在籍していたCaptain Beyondも英米混合バンドで、Deep Purpleの第一期ボーカリスト、ロッド・エヴァンスだった事でも知られているが、ボビー・コールドウェルもその筋では手数足数の多さで知られたドラマーだった。

 そんな経緯で結成されたバンドがArmageddonで1975年に結果的に唯一のアルバムとなった「Armageddon」をリリースしている。このバンド、スーパーバンドの位置付けにあるからか、メンバーの知名度の高さもあるからか今でもWebで検索するとそれなりにレビューやアルバムの紹介が出てくるので、メジャーなバンドと言えるだろう。自分的にはどうしてもB級バンド的にしか思えないが、メンツを見ればそれもなるほどと思う。ただ、これから聴くニッチな人にはこのバンドのハードさ加減や枠にハマりきらない自由な感性に彩られたハードロックの栄光は存分に楽しめるアルバムとして紹介したい。冒頭の「Buzzard」のギターリフからしてゾクゾクするカッコ良さを秘めているし、言われるようにSteamhammer時代のリフの転用で、より一層磨き上げられたリフに練り直されて組み立てられている辺りが進化系を感じる。Steamhammer時代は3コードへの展開でどこかダサく聴こえたが、ここではその常識感も逸脱しててグイグイと来るフレーズの組み立てと疾走感溢れたひたすらスピーディに鳴らしまくるギター、のみならずバンドの勢いも正しく翔ぶ鳥落とす白熱ぶり。この曲のみならずアルバム全体を通して残念感があるのは、最も知名度の高かったであろうキース・レルフのボーカルの弱さで、ここにイアン・ギランばりに強烈なボーカリストが参加していたら正しくA級のハードロックバンドとして、少なくともUriah Heepと双璧を張るかのようなレベルに位置付けられたように思う。楽曲のアレンジや構成の複雑さ、展開の激しさはプログレッシブハード・ロックと呼ぶに相応しく、B面全てを組曲で構成している「Last Stand Before」以降も含めて唯一無二の世界を築き上げている。もしもキース・レルフが翌年に感電死していなくてこの路線でもう一枚アルバムが制作されていたら、そこに近い位置まで行けたかもしれないとすら思う。ところが歴史にたらればは無いので本作が唯一無二のアルバムになってしまい、今の時代に至るまでボーナストラックやデラックス・エディションがリリースされて来ない所を見ると、残存している音源は残っていないのだろうし、ライブソースすらも出てこないのは残念。そう言ったアイテムが何度も再発されない事も今の時代の知名度を上げられない理由か。それでも唯一の本作をひたすらに聴いているとアルマゲドンの美学、マーティン・ピューの描いた世界がじっくりと聴ける。

 2曲目の「Silver Tightrope」はキース・レルフの透明感溢れるフォーキーな着想から練られたような美しいアルペジオ感溢れるバラードと言うか雰囲気味わえる作品で、最初から最後まで8分半あるのにそのまま一辺倒で通し切っている点だろう。コーラス入れたりしてどこか聖歌的に聴かせるアレンジもおそらくはキース・レルフのアイディアだろうし、それを叙情的に盛り上げるマーティン・ピューのギターソロの舞い上がり方、抑えつつも曲に合わせたセンス溢れるドラミングのボビー・コールドウェル、ルイス・セナモのベースも実はかなりメロディアスにラインを描いている素晴らしさ、それでも最初から最後まで一辺倒。見事にこのテンションのまま描き切った素晴らしき作品。続いての「Paths And Planes And Future Gains」は冒頭の「Buzzard」に負けるとも劣らない大英帝国ハードロック路線をザックザクと切り刻みヘヴィメタルと称するに相応しい音色で楽曲を斬ってくる。ここでもやはりボーカルの弱さが際立ってしまい、楽曲の持つ迫力とヘヴィさが出し切れていないように感じるが、それをここで言ってもしょうがない。曲の妙な展開やエグさを味わいながらひたすらギターのワイルドさに聞き惚れよう。4分半ながらも勢いある破壊的な要素すら持ち合わせた見事なヘヴィメタル。

 改めてじっくりと数回聴き直したが、バックの面々の凄さは奇跡的でマーティン・ピューの唯一の出世作ともなっている。この才能がこの後に発揮されずにシーンから消え去ったのは実に残念で、その意味ではエイドリアン・ガーヴィッツのしつこさくらいはあってほしかった。ボビー・コールドウェルはこの後もロックシーンで活躍するし、ルイス・セナモはキース・レルフ亡き後は妹のジェーンと一緒にILLUSIONを組んでシーンに功績を残している。



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フレ
Posted byフレ

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