Mott The Hoople - Greatest Hits (Reissue Edition)
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Mott The Hoople - Greatest Hits (Reissue Edition) (1976)

70年代の英国のロック小僧たちは皆が皆モット・ザ・フープルに夢中だった。パンクスでもグラマラスでも単なるロック小僧でも、だ。と何かで読んでからMott The Hoople、と単語の間に「the」が入る珍しいパターンのバンド名を覚えてレコード屋漁りに行く度に探していたが、80年代に入っていたからかなかなか普通のレコード屋では見かける事もなく、当然ながらロック小僧の自分は中古レコード屋漁りを始めていくが、同時に輸入レコード屋もかなり円高が進んでいった関係でレコードが安くなっていたので、そちらのチェックも怠らずに足繁く通いまくり、と言えども中高生の通いまくりなど動ける範囲はたかが知れているので数件もなかっただろうが、その狭い範囲の中でようやく最初に見つけたMott The Hoopleのレコードが「Greatest Hits」で、いわゆるベスト盤だから、良くも悪くも一側面しか聴けないのはあったがまずはどんな音のバンドか知りたかったので1,680円で入手してワクワクしながら家に帰ってレコードに針を落とした記憶が今でも鮮明に思い浮かぶ。元来レコードを聴く楽しみ、アルバムを聞く楽しみはこういうもので、アルバムジャケットを眺めてその意味合いやメッセージやイメージを膨らませながら聴き始めたものだ。日本盤だとさらにライナーノーツを貪るように読みながら何度も聴いていくが、輸入盤だったので裏ジャケットのクレジットや書いてある英語を辞書片手に何となく読み漁り、人名を確認しながら聴いていた。その意味でこのベスト盤はジャケットで何か意味を伝えるものではなく、単にアメリカでも受けるような作りを目指したような節があり、秀逸なジャケットとは言えないが、それでもキラキラして見えたものだ。
1976年にリリースされたベスト盤だからMott The Hoopleが崩壊して既に2年経ってからの発表だったようだ。レコード会社都合のリリースだったのかと思われるが、この頃こういうリリースをする際にはそれこそ何か目玉と言うかリスナーが買わないといけないような理由を付ける必要もあったため、このベスト盤ではシングルでしかリリースされていなかった「Foxy Foxy」と更に貴重なMott The Hoopleにミック・ロンソンが参加した唯一の楽曲「Saturday Gigs」を入れてその価値を上げている。そのほかの楽曲はアルバムに収録されてあるままなので、アルバムを所有しているリスナーにはまるで無意味なアルバムだ。しかも収録されている楽曲はほぼ「Mott」と「The Hoople」に集中しており、「All the Young Dudes」も加えれば全く不要とも思える選曲。それでもこの頃アメリカでブレイクし始めたMott The Hoopleを手軽に知るには丁度良い作りになっているから自分的にはこのベストアルバムは割と好きだ。もっとも内容よりも自分なりの想いや出会いの印象が強いからだが。冒頭から「All The Way From Memphis」のご機嫌でメロウなR&Rが快適で軽快。これぞMott The Hoopleの代表曲と言わんばかりの作風。続いての「Honaloochie Boogie」も正に大英帝国ロック的で冒頭のギターメロディから歌が始まっての旋律もどうにもキュンと来る代物で素晴らしい作品。これぞイアン・ハンターと言わんばかりの独特のセンスが炸裂した代表曲で、無茶苦茶カッコ良いサックスのソロが印象的だが、このサックスは何とロキシーのアンディ・マッケイ。続いての「Hymn for the Dudes」は野郎どもへの讃歌とばかりにほぼアカペラに近い歌メロがひたすらに続き、終盤になりドラマティックにバンドの音が、そして泣きのメロディがミック・ラルフスによって奏でられて昇華される美しき名曲。イアン・ハンターの歌唱力と魂がそのまま聴き手に伝わってきてバックコーラスも含めて聖歌のように余韻を残して幕を閉じる一大讃歌。ここまではアルバム「Mott」からの収録で、「Born Late 58」はアルバム「The Hoople」からのご機嫌なR&Rそのままの作品でスライド・ギターが印象的。A面最後はここで登場とばかりにMott The Hoopleと言えば「All the Young Dudes」。ボウイが救った名曲は何度聴いても何度語っても語り尽くせない程の、そしてひとつのバンドを、偉大なる英国ロック・バンドを世間に知らしめた一曲。歴史にはそういう出来事もあり得るのかと思うほどに狙った通りになっているのも素晴らしい。文句なしの讃歌。
B面に移ればアルバム「The Hoople」からのこれもまた悲しきギターメロディから始まる美しくも切ない楽曲「Roll Away the Stone」が鳴り響き、この何とも言えないメロディに惹き込まれる事だろう。続いてはMott The Hoopleにとって確実にターニングポイントとなった運命の一日、1972年3月26日チューリッヒ公演をサブタイトルに持つ「Ballad of Mott」。このライブをもってMott The Hoopleは解散を決めており、その意思でライブに臨んでいたハズだが、本公演終了後に次の仕事を、と思ってボウイに電話した事からバンドは引き止められ、解散の前にボウイから「All The Young Dudes」をもらい、復活したと言う経緯がある。更に裏話ではMott The Hoopleは当時まだ未発表だったボウイの「Drive in Saturday」を欲しがったようだが、それは断られて「All The Young Dudes」をもらったらしい。Mott The Hoopleなら「Drive in Saturday」でもかなりハマっただろうとは思うが、結果的には「All The Young Dudes」で良かった事は歴史が証明している。それでバンドは復活し、それどころか歴史に残るバンドにまで飛躍しているのだから恐れ入る。その成功の証とでも言わんばかりの「The Golden Age of Rock 'n' Roll」が続けて収録されているのもなかなか良いセンス。こんなご機嫌で勢い溢れるナンバーが出来上がるのに一度は解散状態にまで追い込まれていたのだから歴史は面白い。そしてシングル発表曲の「Foxy Foxy」は全く勢いもなく、これがシングルだったのかと疑うばかりの出来映えでしかなく、バンドの終焉を物語っているようにも思えるが、実はこの時期を乗り越えてイアン・ハンターとミック・ロンソンが密かに邂逅し、次なるプロジェクト、もしかしたらMott The Hoople解体再編成を目論んでいたようなシングル「Saturday Gigs」も入っている。このシングルだけではそこまで二人の勢いが結合して突き進むような印象をあまり持てないが、楽曲の美しさはこれまでよりも鋭く仕上がり、ミック・ロンソンのギターもハードに鳴り響いた一皮剥けそうな印象を残し、終盤の聖歌的な盛り上がりは両者ともお得意のパターンで本作でも見事な出来映えとなっている。
2003年の再発時にはボーナストラックとして「Sweet Jane」と「One of The Boys」がアルバム「All the Young Dudes」から収録され少々アルバムの印象を変えてしまっているが、そもそも1972年から74年までのMott The Hoopleの楽曲からしか集められていない奇妙な、そしてアメリカ狙いが伺えるベスト盤として君臨しており、今の時代ともなればさほど有用なアルバムとは思えないし、恐らくお役目御免的なベスト盤だろう。それでも上手い具合に良い曲が良い順番で並べられているアルバムだ、と言いたい。

70年代の英国のロック小僧たちは皆が皆モット・ザ・フープルに夢中だった。パンクスでもグラマラスでも単なるロック小僧でも、だ。と何かで読んでからMott The Hoople、と単語の間に「the」が入る珍しいパターンのバンド名を覚えてレコード屋漁りに行く度に探していたが、80年代に入っていたからかなかなか普通のレコード屋では見かける事もなく、当然ながらロック小僧の自分は中古レコード屋漁りを始めていくが、同時に輸入レコード屋もかなり円高が進んでいった関係でレコードが安くなっていたので、そちらのチェックも怠らずに足繁く通いまくり、と言えども中高生の通いまくりなど動ける範囲はたかが知れているので数件もなかっただろうが、その狭い範囲の中でようやく最初に見つけたMott The Hoopleのレコードが「Greatest Hits」で、いわゆるベスト盤だから、良くも悪くも一側面しか聴けないのはあったがまずはどんな音のバンドか知りたかったので1,680円で入手してワクワクしながら家に帰ってレコードに針を落とした記憶が今でも鮮明に思い浮かぶ。元来レコードを聴く楽しみ、アルバムを聞く楽しみはこういうもので、アルバムジャケットを眺めてその意味合いやメッセージやイメージを膨らませながら聴き始めたものだ。日本盤だとさらにライナーノーツを貪るように読みながら何度も聴いていくが、輸入盤だったので裏ジャケットのクレジットや書いてある英語を辞書片手に何となく読み漁り、人名を確認しながら聴いていた。その意味でこのベスト盤はジャケットで何か意味を伝えるものではなく、単にアメリカでも受けるような作りを目指したような節があり、秀逸なジャケットとは言えないが、それでもキラキラして見えたものだ。
1976年にリリースされたベスト盤だからMott The Hoopleが崩壊して既に2年経ってからの発表だったようだ。レコード会社都合のリリースだったのかと思われるが、この頃こういうリリースをする際にはそれこそ何か目玉と言うかリスナーが買わないといけないような理由を付ける必要もあったため、このベスト盤ではシングルでしかリリースされていなかった「Foxy Foxy」と更に貴重なMott The Hoopleにミック・ロンソンが参加した唯一の楽曲「Saturday Gigs」を入れてその価値を上げている。そのほかの楽曲はアルバムに収録されてあるままなので、アルバムを所有しているリスナーにはまるで無意味なアルバムだ。しかも収録されている楽曲はほぼ「Mott」と「The Hoople」に集中しており、「All the Young Dudes」も加えれば全く不要とも思える選曲。それでもこの頃アメリカでブレイクし始めたMott The Hoopleを手軽に知るには丁度良い作りになっているから自分的にはこのベストアルバムは割と好きだ。もっとも内容よりも自分なりの想いや出会いの印象が強いからだが。冒頭から「All The Way From Memphis」のご機嫌でメロウなR&Rが快適で軽快。これぞMott The Hoopleの代表曲と言わんばかりの作風。続いての「Honaloochie Boogie」も正に大英帝国ロック的で冒頭のギターメロディから歌が始まっての旋律もどうにもキュンと来る代物で素晴らしい作品。これぞイアン・ハンターと言わんばかりの独特のセンスが炸裂した代表曲で、無茶苦茶カッコ良いサックスのソロが印象的だが、このサックスは何とロキシーのアンディ・マッケイ。続いての「Hymn for the Dudes」は野郎どもへの讃歌とばかりにほぼアカペラに近い歌メロがひたすらに続き、終盤になりドラマティックにバンドの音が、そして泣きのメロディがミック・ラルフスによって奏でられて昇華される美しき名曲。イアン・ハンターの歌唱力と魂がそのまま聴き手に伝わってきてバックコーラスも含めて聖歌のように余韻を残して幕を閉じる一大讃歌。ここまではアルバム「Mott」からの収録で、「Born Late 58」はアルバム「The Hoople」からのご機嫌なR&Rそのままの作品でスライド・ギターが印象的。A面最後はここで登場とばかりにMott The Hoopleと言えば「All the Young Dudes」。ボウイが救った名曲は何度聴いても何度語っても語り尽くせない程の、そしてひとつのバンドを、偉大なる英国ロック・バンドを世間に知らしめた一曲。歴史にはそういう出来事もあり得るのかと思うほどに狙った通りになっているのも素晴らしい。文句なしの讃歌。
B面に移ればアルバム「The Hoople」からのこれもまた悲しきギターメロディから始まる美しくも切ない楽曲「Roll Away the Stone」が鳴り響き、この何とも言えないメロディに惹き込まれる事だろう。続いてはMott The Hoopleにとって確実にターニングポイントとなった運命の一日、1972年3月26日チューリッヒ公演をサブタイトルに持つ「Ballad of Mott」。このライブをもってMott The Hoopleは解散を決めており、その意思でライブに臨んでいたハズだが、本公演終了後に次の仕事を、と思ってボウイに電話した事からバンドは引き止められ、解散の前にボウイから「All The Young Dudes」をもらい、復活したと言う経緯がある。更に裏話ではMott The Hoopleは当時まだ未発表だったボウイの「Drive in Saturday」を欲しがったようだが、それは断られて「All The Young Dudes」をもらったらしい。Mott The Hoopleなら「Drive in Saturday」でもかなりハマっただろうとは思うが、結果的には「All The Young Dudes」で良かった事は歴史が証明している。それでバンドは復活し、それどころか歴史に残るバンドにまで飛躍しているのだから恐れ入る。その成功の証とでも言わんばかりの「The Golden Age of Rock 'n' Roll」が続けて収録されているのもなかなか良いセンス。こんなご機嫌で勢い溢れるナンバーが出来上がるのに一度は解散状態にまで追い込まれていたのだから歴史は面白い。そしてシングル発表曲の「Foxy Foxy」は全く勢いもなく、これがシングルだったのかと疑うばかりの出来映えでしかなく、バンドの終焉を物語っているようにも思えるが、実はこの時期を乗り越えてイアン・ハンターとミック・ロンソンが密かに邂逅し、次なるプロジェクト、もしかしたらMott The Hoople解体再編成を目論んでいたようなシングル「Saturday Gigs」も入っている。このシングルだけではそこまで二人の勢いが結合して突き進むような印象をあまり持てないが、楽曲の美しさはこれまでよりも鋭く仕上がり、ミック・ロンソンのギターもハードに鳴り響いた一皮剥けそうな印象を残し、終盤の聖歌的な盛り上がりは両者ともお得意のパターンで本作でも見事な出来映えとなっている。
2003年の再発時にはボーナストラックとして「Sweet Jane」と「One of The Boys」がアルバム「All the Young Dudes」から収録され少々アルバムの印象を変えてしまっているが、そもそも1972年から74年までのMott The Hoopleの楽曲からしか集められていない奇妙な、そしてアメリカ狙いが伺えるベスト盤として君臨しており、今の時代ともなればさほど有用なアルバムとは思えないし、恐らくお役目御免的なベスト盤だろう。それでも上手い具合に良い曲が良い順番で並べられているアルバムだ、と言いたい。
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