Yes - Close To The Edge (Deluxe Edition)

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Yes - Close To The Edge (Deluxe Edition) (1972)
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 70年代のプログレッシブバンドの名は今でも響き渡り、新世代への影響も当然大きくて元祖的に扱われているからこそ名盤群が名盤として君臨したままだ。一括りにプログレバンドと言いつつもクリムゾンとフロイド、イエスやEL&P、ジェネシスではやっている音楽性や方向性も異なるのでその実プログレ好きだと言っても好みが出るだろう。少なくとも自分はそれら5つのバンド全てが大好きだとは言えないし、寧ろ苦手なバンドもあるくらい。ただ、好みの問題なのでアルバムやバンドの質とは関係なく、自分がハマりまくる相性を持ち合わせていなかっただけの話なので、混同されると困る、今の時代から振り返ってみればイエスフォロワーと呼ばれるバンドで素晴らしいバンド、自分の好みのバンドもあるが、実は本家本元のイエスは苦手だ。それでもアルバムは全てレコードで買って聴いていて、本ブログでもほぼ登場しているが、しっかりと苦手だとは書いている場合が多い。事実苦手意識が若い頃からあって、何度となく、そして今でも取り組んで聴いているので曲も知っているし、そういうメロディや展開だったと記憶すらしている曲もあるが、それでも馴染まない本能、相性の悪さは25年くらいトライしたが変わらない。恐らくこれからも聴いていくだろうが、変わらないだろうと思う。ただ、それだけ聴いた事実は残るし、音楽を聴く事は即ち好みの音楽を聴く事、ではなく聴かなきゃいけない音楽を聴いている時もある、と普通は感じなくて良い荷物まで背負っているだけだ。マゾヒストではないが、もういい加減ダメだ、合わない、自分には高尚すぎると認めて離れても良いのかもしれない。そんな対象がイエス。

 Yesの1972年リリースのプログレッシブ・ロック史、そして英国ロック史の中でもほぼ必ず名盤として挙げられる「危機」は今ではデラックス・エディションとしてシングルと別バージョンを加えて増強盤としてリリースされており、より一層充実した中身の濃いサウンドを聴ける。どう言うのだろうか、音楽的にここまで凝って到底ロックの世界では出しえない、どちらかと言うとクラシック畑に近い作り込み具合でボーカルが入ってくる音楽。全く新しいジャンルと音楽性を解き放ったバンド、作品である事に疑いはなく、この時代までのアルバムを聴いていれば、過去には類を見なかった取組姿勢のアルバムと分かるだろう。作曲手法は明らかにクラシック、ただ、それをバンド形態で演奏するのでギターやベースやドラムがある、即ちロックの世界に近づく。しかし作られた音楽はビートに乗せて、という単純なものでなく、緩急自在展開がコロコロ変わっていく音楽、そして幾つもの楽曲がテーマごとに出てくる組曲形式のため時間が長いと言いつつも実は小曲で構成されている代物。それは即ち普通のアルバムの時間枠を継ぎ目なく演奏している事と同じだが、単純な構成では出来上がっていないあたりが特殊事情。同じリフレインが繰り返されるシーンよりは雰囲気に合わせた楽曲、アレンジが登場し、ハッとするようなメロディが突如挿入されてリスナーの耳を惹き付ける、そんな手法で出来上がっているアルバムだ。音楽家として作る方は苦労も多かっただろうが、充実感が味わえる制作過程だったように思えるし、出来上がったサウンドも見事の一言に尽きる完璧な楽曲、アルバムだ。ロックの持つダイナミズムや白熱ぶりはここでは違う角度で発散されており、決してロックではないとは言えないロックバンドのアルバムだが、到底ロックとは思えないアルバムでもある。才能あるメンバーが揃うとこういう高尚な音楽が目指されて、出来上がり、時代の寵児となりまた破滅へと進むのか。本作での狂気的なレコーディングに付き合い切れず脱退を決めたビル・ブラッフォードはもっとフリーに自由に好きなだけドラムの叩けるバンド、キング・クリムゾンへ移籍してその才能を発揮しまくっていった。一方完璧主義者の音楽家たちはとことんまで突き詰める音楽作りをキリがない程に進めていったようで、事実際限なく煮詰めていたらしい事は幾つかのメンバー含むインタビューでも語られていた。

 さて、自分的に何がハマり込めず、どこがダメなのか、と改めて問うてみれば幾つかの要因が思い浮かぶ。久々に聴きながら感じているのはやはりジョン・アンダーソンの歌声、それに加えてのあまりにも覚えにくく完璧な曲そのもの。リック・ウェイクマンやジョン・アンダーソンの衣装やハウのギター姿のイマイチ感を一旦忘れてみれば純粋に音楽しすぎている、自分には高尚すぎて分かりにくい、キレイな音楽がただただ流されてくる、そんな印象。当然そんなハズもなく、練りに練られている緻密な音楽集団の作品なのでじっくりとあと100回くらい聴けば何か分かるのかもしれないし、分からないかもしれない。イエス好きなリスナーはその構築美や繊細な音と演奏が心地良いのだろうと思う。それはその通りだし、クリス・スクワイアのベースは全くロック的でどちらかと言えば好きなタイプだ。キャッチーさ不足だろうか、やはりジョン・アンダーソンのハイトーンな歌声の苦手感がその自分的に良いと感じる部分を閉じ込めてしまうようだ。まだまだ若輩者なのだろう。





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フレ
Posted byフレ

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akakad  

実はオリジナル録音は音が固くてそんな好きではないんです
近年の再現ライブの音源が1番好きだったりします
ビリー・シャーウッドとジョン・デイヴィソンが入ってから歌も音もかなりソフトで聞きやすくなりました
Heaven & Earth以降の音作りが凄く気に入ってるので現在細々と作ってるらしい新作が楽しみです
今のYesは自分にとってのスーパーバンドです
ハウもどっかで調和の心と言ってましたし今のバンドはそれを体現する穏やかさに満ちた素晴らしい音を出してます
ファン層も文句言う人は去って新しい人が入ってるのを感じます

2020/12/28 (Mon) 00:40 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>akakadさん

あぁ、そういう感覚分かります。その方が馴染みやすいのもあるし、正にそうかもなぁ…、なるほど。

2020/12/30 (Wed) 23:24 | EDIT | REPLY |   

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