Curved Air - Live

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Curved Air - Live (1975)
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 音だけを純粋に聴いている時は流れてくる音楽、ロックがどれだけ楽しめるか、自分の好みがどこにあるか、何がカッコ良いのかと音楽そのもので味わえる。今の時代のように何でもググれば細かい情報が出てくる時代になると、どうしてもそれを探して調べてしまって見なければ楽しめたのに、と思う説明や背景があったりして興醒めしてしまう、もしくは新たな発見に心躍らせる、または更に深みにハマるなど色々なパターンがあるが、いずれにしても知った方が良い事と知らないままで良かった事があるのは間違いない。ただ、ロックファンとしてはミュージシャンやバンドの生み出したアルバムや歌詞の背景、その時に本人がどういう状況にあったのか、を知っている方がアルバムに肩入れしやすくなる場合も多いし、そんな環境下でよく出来たな、と思う場合もあればそれならしょうがないと思う時もある。他人に言わせれば「役に立たない知識」をどれだけ知ってるかで自分が満足できてしまう哀しい性もあり、ついついアルバムを聴きながら昔のライナーノーツだけでは知り得なかった余計な情報をせっせと集めてしまう。

 Curved Airの1975年リリースライブアルバム「Live」。時系列的に書けば、Curved Airのアルバムデビューは1970年で、そこから順番にアルバムが3枚リリースされ、そこでメンバーがほぼ全員離脱した状況となり、それでもメンバーを揃えての作品「Air Cut」をリリースしている。本来ならこのメンバーでのライブアルバムが本作の位置付けになるが、実際はそうならず、1973〜74年頃にバンドはほぼ解散状態に近かったらしい。それもこれも紅一点ボーカリストの破天荒なレディのソーニャ・クリスティーナが結婚して、その後すぐに離婚した事により、かなり荒れまくっていたのとおかげで財政難に陥っていたとも言われ、それを見かねた元のメンバー達がその鬱憤を晴らすべくなのか、一肌脱いで稼がせてやろうと思ったかは定かではないが、仲間がそういう状況と見れば助けたくなるのも人情。その結果、1974年11月頃にはベース以外はダリル・ウェイも含めてほぼオリジナルメンバーが勢揃いしてあのカーブド・エアーが再編成されてツアーに出る事となった。その一瞬の再編成ライブで現ナマを稼ぐだけが目的でもあっただろうが、そこには当然目を付けているマネージメントやレーベルもあり、しっかりと12月5日のカーディフ大学、6日のブリストル大学の演奏がレコーディングされて本ライブアルバムのリリースとなった。嘘か真かは分からないが、上記の理由により知られているように本ライブアルバムのソーニャ・クリスティーナの歌声はとんでもなくロック的でダミ声でもあり、迫力の歌声で気合を入れまくり歌っている姿が聴ける。なるほど、この歌声の理由は荒れまくってた彼女のエネルギーをライブで歌う事で発散していたからかと納得。ともすればデス声まで進めるのではないかと思うばかりのダミ声も聴かれるから恐れ入る。スタジオ盤の繊細でお淑やかな天上の歌声的なニュアンスとはまるで異なるヘヴィロックバンドのカーブド・エアーが聴ける唯一無二のライブアルバムとしてかなり貴重。

 冒頭からダリル・ウェイの凄まじいバイオリンが鳴り響く「It Happened Today」からして強烈で、そこにソーニャの迫力のロックボーカルが絡み、無茶苦茶カッコ良い70年代のハードロックが聴ける。こんな歌で良いのかと聴く度に思うが、バンドもそのままの勢いで雪崩込んでくるのだから面白い。音楽院を出ているメンバーですらロックに染まれる懐の深さ。続いての「Marie Antoinette」も淑女的な楽曲として知られていたハズが、この迫力でフランス革命なぞぶっ飛ばせ的な熱気が凄い。「Back Street Luv」のやんちゃぶりにしてもまるでスタジオ盤とは異なる歌い上げでほとんど別の曲を歌っているような感触すら漂う激しさ。ここまではとにかくソーニャの変貌ぶりとバンドの白熱ぶりに驚きを隠せない怒涛の楽曲の嵐。「Propositions」からは演奏が中心になる曲が展開されていくのでプログレッシブバンド、いややはりバンドの演奏がラフでロックしているのでハードプログレッシブ・ロックバンドの様相を示したヘンなスタイルが聴かれ、そこをダリル・ウェイが舞い上がるからさらに超絶プログレッシブへと盛り上げる。「Young Mother」「Vivaldi」などはダリル・ウェイの一人相撲的にライブで火花を散らせまくり、A面のソーニャの凄まじさに負けないロックパワーをぶつけまくって恐るべしバイオリンの速弾きと言っては妙だが、突き刺さるような音色がギターとも入り混じってこれぞプログレッシブ・ロックと言わんばかりの演奏が聴ける。最後の「Everdance」ではその両者がうまく融合したかのようにソーニャのソウルフルな歌声とバイオリンの突き刺さる音色にガチャガチャとしたギターに加えてのバンドのプレイがこれまで聴いた事のない未知の世界のバンドの音を出してくれる。オルガン、シンセ、ギターを起用に操るフランシス・モンクマンの真骨頂ですらある集大成なこの曲ではバンドの底力を存分に発揮してくれるので、カーブド・エアーの懐の深さを味わえる。

 二日間のライブから厳選されたライブ・アルバムで、ソースがもし残されているなら既にフルライブを収録したディスクなりボックスなりがリリースされているだろうから、恐らくは残されていないのだろうか。それともレーベルがBTMと地味な所のため、そこまで発掘が進んでいないだけでまだ期待出来るのだろうか。これだけのライブ・バンドの作品を倉庫に眠らせておいたままならばそれはもう実に勿体無い話なのでぜひ誰か発掘してほしいと願う。しかしここ何年かでカーブド・エアーも復活、再結成を繰り返しているので、あればその波に乗ってリリースしているだろうから、やはりないか、と堂々巡りな思考回路が働く。このツアーのライブソースは他には見たこともないので是非全長版を聴いてみたい、ライブの全貌を体験してみたいと思っていたら今の時代は恐ろしい事にそれすらも聴けてしまうYouTube。凄い。ツアー初頭だからか、まだ演奏されている曲が違うのも聴きどころだし、ソーニャの素のままのライブパフォーマンスやMCが楽しめるのも面白い。







Curved Air - 1974/11/20 - Live in Guildford, UK
Recorded live at the Surrey University, during the 1974 Tour.
Soundboard recording quality A-

00:00 - Marie Antoinette;
06:44 - Young Mother;
16:35 - Melinda More Or Less;
21:09 - Phantasmagoria;
26:08 - Back Street Luv;
30:20 - Woman On A One Night Stand;
35:48 - Propositions;
43:36 - Vivaldi;
58:23 - Stretch;
01:05:04 - Everdance.
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フレ
Posted byフレ

Comments 2

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おっさん  

Curved Airはこのライブではまりました、
廉価版レコードで再発したときに
ウルフのファーストと一緒に買いました。

2020/11/15 (Sun) 12:23 | EDIT | REPLY |   
フレ
フレ  
>おっさん

久々に聴きましたがこれ、強烈にロックでした…
ウルフもまた聴く時を楽しみにしてるんですよ。

2020/11/15 (Sun) 21:07 | EDIT | REPLY |   

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