Small Faces - The Decca Years

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Small Faces - The Decca Years (2015)
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 「ブルーアイドソウル」と書くと日本語カタカナの印象から「青臭いアイドルの歌」みたいに見えるので、そのカタカナ書きは好きじゃない。英語書きだろ「Blue-Eyed Soul」となるので、「青い瞳のソウルシンガー」と読めるだろう。その小洒落た言い方も面白いと思うが、要するに「青い瞳を持つ白人のくせに出てくる歌声が黒人のソウルシンガーのようだ」との意味。60年代以前にもそれくらい歌の上手い白人歌手はいたし、ポップシンガーとして知られていたが、この言い方が出てきたのは多分スティーブ・ウィンウッドかヴァン・モリソンあたりが最初じゃないだろうか。60年代になってモッズ=黒人のソウルを好んだ若者達が出て来た事から真似して歌ってみようぜ、演奏してみたいとバンドを組む事がポピュラーになってきたあたりで歌のモチーフにジェームズ・ブラウンやその頃にヒットしてたモータウン系のシンガーが出てきたからだろうと思われる。スティーブ・マリオットもロジャー・ダルトリーもその類だが、ポール・ロジャースはブルースの影響が強いのでそうは呼ばれないのもルーツの違いか。今の時代にどれだけその呼び方が通じるか分からないが、歌の上手い歌手の場合に黒人ソウルボーカルの影響をたっぷりと感じる場合はそう呼ばれるのだろう。

 スティーブ・マリオットが在籍したSmall Facesは1965年にデッカからデビューして1967年まで活動、その後はイミディエイトにレーベルを移して活動していたので、俗に初期作品を指す場合はデッカ時代、その後の成熟期を指す場合はイミディエイト時代と分かれるが、今回は自分的にも好きなデッカ時代の楽曲を纏め上げた「The Decca Years」を聴いていた。2005年の同じ日には2CDのデッカ時代の集約編集盤「Decca Anthology」を聴いて書いているが、この編集盤も好きだったと懐かしんでいた。その後2012年にはアルバム単位でデラックス・エディションがリリースされたり、BBCセッションもリリースされたりして数の限られたマテリアルはこれでもかとばかりにリリースされまくったので既にマニア的には物珍しげな音源も残されてはいないだろう。ただ、それでもレコード会社は何かを売る手段を講じてくるから見事で、今回はデッカ時代の全てを網羅したと思われる5CDセットの「The Decca Years」を書いておこう。謳い文句そのままに、デッカ時代のオリジナルアルバム2枚は全て、シングルAB面も制覇し、更にBBCセッションも残されている音源はほぼ網羅しているようで、以前リリースされていた「The BBC Sessions」よりも曲数多く収録されているし、レア&デモソースもある限りは収録しているので決定版としての意義は十二分に果たしている。ただ、これまでずっとSmall Facesを聴いて集めていたようなキャリアあるリスナーには目新しい曲はさほど多くないので、どうにも評価が難しくなっているが、それは自分にも当てはまり、ほとんど意味無さそうな編集盤だとの印象だった。先の2CD「Decca Anthology」と「The BBC Sessions」で概ね事足りるからしょうがない。果たしていつまでこの商法が続くのか、著作権切れを防ぐ狙いもあるから出している部分もあるだろうからリスナー的にはきちんと選んで購入するしかなさそうだ。

 随分久々にSmall Faces、スティーブ・ウィンウッドの歌声を聴いていたが、やはり強烈にソウルフルな歌で、正にBlue-Eyed Soulなシャウトが似合う。モッズサウンドと言われればそのままだが、これだけの歌声なら人気も出たのも分かるし、今聴いても無茶苦茶カッコ良いのは当然で、正にソウルばりにシャウトから甘いバラードまで歌うし、それでいてバンドはモッズバンドらしくハードに激しいプレイが若さと勢いに任せて炸裂してくる。CD1のシングル集は当然リリース順に収録されているので、最初の「What'Cha Gonna Do About It 」の激しさから順にバンドの成長ぶりと圧倒的な迫力と過熱ぶりも分かってくる充実さ。1967年で終わりじゃなく、またここから名盤をリリースしていくバンドの初期作品集なのでどれもこれもここまでアグレッシブかと呆れるほどにパワフルなサウンドが聴ける。時には「Sha La La La Lee 」や「All Or Nothing 」のような可愛らしい曲もあるが、それも含めてのスモール・フェイセスの一面。本ディスク最後には有名な「You Need Loving 」が収録されているのも外せない。ホント、このとんでもない歌声とシャウトとロバート・プラントのパクり具合は許されるのかと思うくらいの凄さ。聴いた事の無い方はあまりいないと思うが、Led Zeppelinの「Whole Lotta Love」そのままです。それもまるで負けてない、どころかやはり原曲だから勝ってる。凄い。Disc2,3はオリジナルアルバム通りの収録で、Disc4はレアテイクが纏められてて、細かく書いてるとキリが無いがエンディングが長い短い、マリオットの歌が別トラックになってる、効果音がないもの、まるで来なるプレイとして知られているのが先の「What'Cha Gonna Do About It 」だろうが、どうも70年代に入ってからのフランス盤「SMALL FACES」で始めてお披露目されたテイクばかりが目玉的に収められている。また、モノステの違いによるバージョンや歌がシングルトラックになってるものやミックスバランスが異なるなど正にマニアックな楽しみ方の出来る一枚で、一曲づつきちんと聴き比べていくと恐ろしく深い沼に入っていける。Disc5はBBC音源で、多分初登場となったのは5-8曲目の1966年1月16日放送のJoe Ross Pop Showでの4曲だろうが、正に絶頂期で「Comin' Home Baby」の白熱のオルガンインストは素晴らしい。

 マニアックに聴かなくても単純にSmall Facesの、スティーブ・マリオットの歌とバンドの若くも荒々しく白熱したプレイでついつい気持ちが持っていかれるのは間違いなく、スタジオ盤ですら同じ迫力が味わえるのが凄い。録音できるチャンネル数が少ないからほぼ一発ライブ録音のようになっているのも大きな理由だろうが、それよりも何よりもロックの持つアグレッシブさがそのまま出てきている。これこそロック、若者の叫びだ。5枚もCDが入っていながら全てが全てそんな感じで聴けるので、息をつく間もなくただただひたすらにハマり込んでほしいクレイジーなバンドの初期作品集。こんな熱気に触れていたらますますロックを味わいたくなってきた。





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フレ
Posted byフレ

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