The Struts - Strange Days

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The Struts - Strange Days(2020)
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 コロナ禍に於けるエンターティンメント及び音楽業界への影響は一般人の想像よりも大きなもので、表面上でライブが見れない、やりにくい、やれない、PVもMVもセッションすらもままならない、もともとが繊細な人が多いからか、コロナ禍の世界的影響の大きさでメンタル面でトーンダウンしまくる人も多く、何もする気にならない、ギターを弾く必要性がなくなった弾かなくなった、など事の大小はあれど様々な影響を及ぼしている。アーティスティックな時間に当てれば良いものを、どうしても余計な事を考えてしまったり、時間が無かったから色々な事を片付けていたのが、時間が有り余ると持て余してしまう不思議。一般生活の中でも同じような事が起きているが、その中で楽曲やアルバム、PVやMVを出してくるバンドもあり、コロナ禍での制作という制限がプラスに働く場合もあり、当面はそういう時代をどう生きて進んで行くかもテーマのひとつ。

 まだまだ新人バンドと思ってたThe Strutsも既にアルバムデヴューから6年経過し、世界ツアーでバンドの勢いを加速させ、プロの仕事に染まっていた頃にコロナ禍が起きて一旦停止、それでもその時間の有意義さからこれまでのメモレベルの断片を集めて何かスタジオ入ろうぜ、的にセッションを開始したようだ。普通はレコーディングしてリリースしないといけないから、とスケジュールと場所がセッティングされて開始するものが、今回は仕事、ではなくてバンドのセッション、が先に進んだらしい。そこからジャムってアイディアを膨らましてレコーディングを始めてから様子を見て進めていったと。なかなかそういう進め方でアルバム創りをする事もキャリアが長くなれば減っていくだろうが、この時点でそれが出来たのは良かったと思う。バンドって元来そういうモノだし、それこそロックバンドの初期衝動だし、相変わらずのエネルギーやパワーも持てるし、それに加えてキャリアで培ったテクニックや経験そのものも使えるのだから怖いものなし。今回は更に人脈からかなり多種に渡るゲスト陣が参加してアルバムのバリエーションを大きく広げているが、これもコロナ禍ならでは時間が皆有り余っている中の参加とも言える。

 The Strutsの2020年リリース作品「Strange Days」は見事に今の時代を言い表しているが、アルバム冒頭も同タイトルからスタートして、ゲストにTake Thatのロビー・ウィリアムスがフューチャリングされているシングルカット曲。これほど静かめでメロウなセッション曲からアルバムが始まるのもロックバンド的にはあまり見当たらず、その印象でアルバム全体に勢いが無いように聴こえてしまい、自分的には過去2作に比べて地味な印象すら持っているアルバムとして最初は位置付けていた。アルバム全編を聴いていると、そこまで地味でもなく、きちんとストラッツらしい派手で喰い付くようなスタイルの曲も多いので過去作と比べてみれば、当然ながらレベルアップしているし、初期の勢いも先のような録音から始まっているからさほど損なわないでストラッツらしさが聴ける。曲の幅の広さはただでさえ多いのに、ゲスト陣に参加してもらう事も念頭にあったからかそこに寄った作風も入っているのでかなり豊かだ。それに加えてキッスの、彼ら的にはガールの「Do You Love Me」をカバーしている奇妙さもあり、基本路線は相変わらずの軽快でキャッチーなR&Rからハードロックの間くらいで普通にロック的作品が並ぶ。アレンジも凝ってるのは凝ってるが、聴きやすさが優先されているので古き良きキャッチーさが前に出てくるのでナイスな曲ばかりで、特に「Cool」のストーンズらしさを全面に出したR&Rなサウンドが一番自分的にマッチしたカッコ良い曲。

 それにしてもデフ・レパードのフィル・コリンとジョー・エリオットの参加が少々意外な組み合わせだが、ツアーで一緒だったらしいから人脈的にはおかしくはない。ただ、デフ・レパードのサウンドとストラッツが繋がらないだけで、出来上がった「I Hate How Much I Want You」を聴いてみれば、なるほどこの手のちょいとヘヴィなブギ風への参加ならおかしくもないし、これだけメロディがキャッチーでしっかりしていたら、デフレパでプレイされてもら違和感のない曲かもしれない。イメージと実際ではまるで異なるものだ。続いてのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのギタリストのトム・モレロ参加の「WIld Child」は曲調はそんな風味が漂っているが、ギターソロの宇宙観はさすがの一言に尽きる。この音はストラッツでは出てこないし、明らかに異なる個性豊かなプレイスタイルが見事で、新たな境地に進んだと感じたのも当然か。そして自分的にはまるでピンと来てないがTHe Strokesのアルバート・ハモンド・Jrの参加らしい。彼自身がどういうプレイヤかはまるで知らないながら、その父親のアルバート・ハモンドと言えば60年代頃には有名だったミュージシャンで、アメリカで知られていた人なのに英国人だったのかとここで知った次第。

 書けばそんな感じになるが、普通にアルバムを最初から流してて感じたのは冒頭曲の地味さが手伝ってか地味な印象。それでもストラッツだからそれもないだろうし、と数回きちんと立て続けに聴いてて、基本的に変わらないしレベルアップしたアルバムだと気づき、それぞれの曲の深さ広さも分かって来て、なるほどこれはもしかしたら自信の一枚に仕上がっているのかもしれないと再認識。今でもこうしたスルメ盤的に聴かないと分かってこないアルバムがあるのは面白いし、まだまだ楽しめるバンドがたくさんあるし、また魅力的なアルバムに出会いたい。





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フレ
Posted byフレ

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