The Paul Butterfield Blues Band - The Paul Butterfield Blues Band

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The Paul Butterfield Blues Band - The Paul Butterfield Blues Band (1965)
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 自分が10代の頃から大人のふりしてブルースを聴いてて、もちろんその雰囲気は好きだったしロックのルーツだから知らなきゃいけないと思ってたし、自分でも何となく弾けるレベルのギターのテクニック感だったから一生懸命集めて聴いてた。それでも黒人モノホンのブルースメンの音やギターはさすがにまだまだ理解するには至らず、それ以前に音も古くて聴きにくいサウンドに慣れなかったからちょいと腰が引け気味だった。そこに白人ブルース、ブルース・ロックがあったから繋がった。英国のブルース・ロック、ストーンズやヤードバーズはどちらかと言えばロック系統属する聴き方だったのであまり直接的にブルースに繋がらなかった面もあったが、アメリカのブルース・ロックバンドはどういうワケかそのまま黒人ブルースに直結する音のように聞こえた。やはり英国人のフィルターを通してくるのと偉大なる黒人ブルースメン達の直系白人ブルースとでは大きく異なる部分が明らかにあるようだ。だからポール・バターフィールド・ブルースバンドを聴いた時はこれぞ本物のブルースながらロックに近くて聴きやすいブルース、自分もこれなら飛びつきやすい、みたいに思ったようだ。当然その頃そういう風に理解していないからただただ何でも身になりそうなレコードを集めて聴いていただけで、冷静に考えてみればそういう事かと。ただ、好きだったな、ポール・バターフィールド・ブルースバンドは。真に迫ったブルース感が一番響いたのととにかくマイク・ブルームフィールドのギターが最高で、聴いた瞬間からこれ誰だ、マイク・ブルームフィールドという名の人か、アメリカのシカゴのブルースやる白人は名字がやたらと長い人が多いのかと妙な覚え方しながら名前をまず叩き込んでどこかの何かのアンテナには引っ掛かるようにしていたが、それがあのスーパーセッションアルバムのマイケル・ブルームフィールドに繋がっていくのもそんなアンテナから。

 1965年にリリースされたPaul Butterfield Blues Bandのエレクトラからの最初のメジャーデビューファーストアルバム「The Paul Butterfield Blues Band」だが、この録音以前にプロデューサーのポール・ロスチャイルドは一度彼らのレコーディングを行っていて、お蔵入りにしている。その後にライブアルバムの方が本来の白熱ぶりが発揮されると考えてCafe Au Go Goでのライブを録音したらしいが、その音源も今では陽の目を浴びているので何でも録音しておくものだ。ただ、この時のライブ録音アルバムはまだまだ本領発揮とならず、再度スタジオに戻ってライブ感覚のままスタジを録音を開始して出来上がったアルバムが本作で、毎回思うが見事にポール・ロスチャイルドマジックが働いているからかドアーズのファーストアルバム「ハートに火をつけて」と同じような音色に仕上がっているのはユニーク。バンド的にはまるで方向が異なるように思えるが、どちらもブルースに根ざしたバンドだから音色が同じでも良かったのかもしれない。そして本作で圧倒的な迫力と耳を奪ったのが当然ながらの右チャンネルから聴こえるマイク・ブルームフィールドのアグレッシブな、そしてとにかく熱さが前に前に出てくる素晴らしいギタープレイ。これはまだマイク・ブルームフィールドがテレキャスを使っている時期の音色なのでそういう音だろうが、とにかくそれも信じられないほどの太い音色。ただ、この頑固でパワフルな質感は確かにテレキャスのサウンド。この辺りがアメリカ人の力強さとも言えるのか、どれもこれもがパワフルに満ち溢れているし、それはポール・バターフィールドのハープにも現れていてワイルド感が漂っている。プレイされている曲は往年のブルース曲ばかりだから目新しくもないハズだが、まるで異なる若者の熱気溢れるエネルギーの塊のような魂がそのままぶつかってくる作品で、ポール・ロスチャイルドが狙ったライブ感に加えてきちんとした音色での録音が更にパワーアップしてリスナーに今の時代でも届けられている。

 マイク・ブルームフィールドのギタープレイは冒頭の「Born In Chcago」から炸裂してて聴いてみれば確かに黒人ブルースメンが使うようなフレーズじゃないし、このように弾くとも思えないが、どう聴いてもブルースギターなので正にオリジナルな演奏スタイルとフレーズ。有名な「Mystery Train」ではあまり聴かれる事のないスライド・ギターも披露しているので聞き所も多いが、バッキングでのトーンやオブリフレーズにしてもとにかくブルースプレイではあるがオリジナルなフレーズが散りばめられている所がマイク・ブルームフィールドの超個性部分。更にメロディアスに弾くフレーズまでも編み出しているから後のブルースフレーズの基礎がここで築き上げられているとも言える。ここに至るまでの数年の間に白人小僧が黒人しか居ないシカゴのブルースライブハウスに入り浸っていたのだからそりゃ当然かもしれないが、今持ってしてホワイトブルースの、そしてアメリカンブルース・ロックの金字塔アルバムと言われるのはある種当たり前で、このアルバムのギターをとことん研究して引き倒せばブルース・ロックは簡単に弾きこなせるようになるだろう。ただ、それが難しいのでなかなか前に進めないのが現実。その勢いのままニューポートフォークフェスティバルに出演したからボブ・ディランに衝撃を与える事になりディランのバックバンドを要望されてエレクトリック事件に発展したが、それは実はポール・バターフィールド・ブルースバンドのおかげとも言える。マディ・ウォーターズにハウリン・ウルフ、エルモア・ジェイムズ、ウィリー・ディクソンと英国のロック小僧がコピーしていた曲やプレイヤーと同じ対象をここで演奏しているがその本物さ加減の違いも聴いていると分かるだろう。やはり本場の本物さは凄い。

 スティーヴィー・レイ・ヴォーンやジョー・ボナマッサあたりを今聴き狂っている方々でもこのアルバムをまずは聴いてみる事をオススメするし、ブルース・ロックのどこかに琴線が触れたならまずは本作を聴く事をオススメする。その後当然セカンド・アルバム「イースト・ウエスト」の凄さも体験できるし、本作以前の幻の録音ソースも3種類ほどオフィシャルリリースで入手出来るし、そのどれもこれもが熱くインパクトあるプレイを楽しめるので味わってもらいたい。





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フレ
Posted byフレ

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