AC/DC - Blow Up Your Video
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AC/DC - Blow Up Your Video (1988)

15年前のQueen+Paul Rodgers来日公演時の記憶を呼び戻すと本ブログでも書いているがライブ始まる前の会場内でのBGMでジミヘンが流れたりエミネムが流れたりしている中、開演直前で音が大きくなって流されたのがAC/DCの「Hells Bell」だったのは今でも鮮明に覚えている。それまでの音量から一気にライブの音量になっての鐘の音だったからどこか凛とした感じがしてあの荘厳なイントロが流れて来て、と戦慄までは言わないがなかなかの雰囲気を感じた。その頃AC/DCは知ってたし聴いてもいたが、そこから15年経過した今から見ればまだまだ聴けてなかったと思うし、浅はかな聴き方だったかなと思う部分も大きい。そこから散々聴いたとは言わないがそれなりに結構聴いてきたからアルバムやバンドの捉え方もまた異なっている。ここまで10年一日どころか30年一日レベルでのバンドスタイルは既にラモーンズを超えての一辺倒ぶり。メンバー、兄弟が逝去しようが変わらない、それこそがブギ、ロックンロールとばかりに我とわが道を突き進みもうじき「パワーアップ」なる新作をまたリリースするのだから恐れ入る。
1988年にリリースされたAC/DCの「Blow Up Your Video」は前2作の不発ぶりを吹き飛ばすかのようなインパクトの「Heatseeker」から始まり、「That's The Way I Wanna Rock'N' Roll」へと怒涛のフック曲で一気にリスナーの心を掴むスタイルを実践。LAメタル=ヘアメタル全盛期のMTV時代に殴り込みを掛けるかのようにおちょくったPVがAC/DCらしいし、それでも音の本質とバンドのスタイルは変えていないからスジの通ったR&Rを繰り広げての踏ん張り方。同時代の若手連中のハネっぷりとは異なるひたむきなスタイルは別の意味でリスナーにその熱さを訴えて心に響かせた事だろう。自分はその頃リアルタイムで見ていたが、やはり半ズボンと汗臭さのカッコ悪さが入り切れなかった。かと言ってLAメタルが良かったかと言うものでもなかったのでそもそもそのヘンに入れ込めなかった、もっとストレートなR&Rの方が好みだったと言うべきか。そこからロックを深掘りしてハードロック、ヘヴィメタルと時代は進化して流れのままに聴くことも多くなり、好き嫌いじゃなくて聴くようになってからは普通に馴染んでいる、そんな経緯だ。改めて今本作「Blow Up Your Video」を聴いているとAC/DCの歴史的な聴き方と1988年という時代での聴き方でイメージが異なるのだろう。単純にAC/DCの歴史としての位置付けで聴くならばフィル・ラッドではないNWOBHM出身のサイモン・ライトがドラムに座っての作品ながらその個性がガッツリとは活かされていないあたりが物足りないが、冒頭2曲の勢いはサイモン・ライトならではのスタイルか。アルバム全体を通して聴いてみればAC/DC印はきちんと付けられているが、やはり前2作の流れと同じく弾けぶりが物足りなくも感じる。ミドルテンポの楽曲があまりにもべったりと張り付いているとでも言うべきだろうか、ブライアン・ジョンソンの歌声がその手の楽曲にマッチしているのでバンド的にそっちに向くのは分かるが、初期AC/DCにあったスタイルがもっと多くても、と。ただ、これまでに比べれば随分と戻ってきている感触はあるのでまだまだ聴き込みの足りないアルバムなのか。
終盤に「Ruff Stuff」が入ってて、これが結構往年のAC/DC節を出しているので救われる。こういうスタイルのブギ曲でもっと攻め立てて派手派手な冒頭曲みたいなのが散りばめられて、意表を突く作品が数曲くらいだとさすがAC/DCとなるのだろう。その意味でこのアルバムはあと一歩感はあるが、突出した曲が突出してくれているので助かる作品。それが売れたからセールス的にも救われたようだし、良いじゃないか、アルバム全体がどうのなどと細かい話は、と言ったら身も蓋もなくなるが。AC/DCの立ち位置はシーンから見たら実に不思議な存在で、メタルじゃないしそこまでR&Rでもないし普通にハードロックとも言えるが、軽やかさや軽快さはないからちょいと異質だし、この時代の中ではジジイに近かったしどういう区分なのだろう、と意味もないところで捉えていた事も思い出した。ジューダスやメイデン、MSGやホワイトスネイク、スコーピオンズはちょっと違うがメタル初期の音してたし、メタリカやアンスラックス、アクセプトなどはモロにその汗臭さがメタルだったし、ラットやモトリーは派手派手なLA系で、やはりAC/DCのオーストラリア感が浮いてた。幼心にもその異質感は分かったのだから面白い。フレディ・マーキュリーやジョージ・マイケルを見て何か違う、と思った本能に似ているかも。
そのAC/DCも本作からシーンに浮上して、それは次世代のGuns'n Rosesのアクセル・ローズあたりがAC/DCへの賛美を繰り返していた事も大きかっただろうし、その影響は何年か前に彼がツアー丸ごとボーカルで参加した事からも本当に好きだった事で分かるだろう。歴史の流れは面白いものだ。あの違和感の無さもさすがアクセル・ローズと思ったが、1988年、ガンズが出てきた時期にそういう発言がなければAC/DCはもっと水面下にいたかもしれない。またガンズが売れてなければここまでシーンに浮上していなかったかもしれないし、全く関係なかったのかもしれないが、ロックシーンの中で絡み合う歴史はそういう面白さを持っている。日本史を漁って誰それがあの時どこそこにいたら、いなかったら歴史はこうなってた、と同じような捉え方でロックを紐解くのも妄想が膨らんで楽しいものだ。AC/DCに至っては以降完全復帰して超大御所へとステップアップしていくのだからこの時代は一つのターニングポイントだったと思う。そんなことを思いながらの「This Means War」のアグレッシブなシーンに合わせたかのようなスタイルのメタリックな楽曲を味わっているところ。何だ全然地味でも悪くもないアルバムじゃないか。幾つか面白味の感じられない曲が入ってはいるが、何度か聴けば馴染むだろうし、垢抜けた新しい方向性を見据えたホント、ターニングポイントの作品。

15年前のQueen+Paul Rodgers来日公演時の記憶を呼び戻すと本ブログでも書いているがライブ始まる前の会場内でのBGMでジミヘンが流れたりエミネムが流れたりしている中、開演直前で音が大きくなって流されたのがAC/DCの「Hells Bell」だったのは今でも鮮明に覚えている。それまでの音量から一気にライブの音量になっての鐘の音だったからどこか凛とした感じがしてあの荘厳なイントロが流れて来て、と戦慄までは言わないがなかなかの雰囲気を感じた。その頃AC/DCは知ってたし聴いてもいたが、そこから15年経過した今から見ればまだまだ聴けてなかったと思うし、浅はかな聴き方だったかなと思う部分も大きい。そこから散々聴いたとは言わないがそれなりに結構聴いてきたからアルバムやバンドの捉え方もまた異なっている。ここまで10年一日どころか30年一日レベルでのバンドスタイルは既にラモーンズを超えての一辺倒ぶり。メンバー、兄弟が逝去しようが変わらない、それこそがブギ、ロックンロールとばかりに我とわが道を突き進みもうじき「パワーアップ」なる新作をまたリリースするのだから恐れ入る。
1988年にリリースされたAC/DCの「Blow Up Your Video」は前2作の不発ぶりを吹き飛ばすかのようなインパクトの「Heatseeker」から始まり、「That's The Way I Wanna Rock'N' Roll」へと怒涛のフック曲で一気にリスナーの心を掴むスタイルを実践。LAメタル=ヘアメタル全盛期のMTV時代に殴り込みを掛けるかのようにおちょくったPVがAC/DCらしいし、それでも音の本質とバンドのスタイルは変えていないからスジの通ったR&Rを繰り広げての踏ん張り方。同時代の若手連中のハネっぷりとは異なるひたむきなスタイルは別の意味でリスナーにその熱さを訴えて心に響かせた事だろう。自分はその頃リアルタイムで見ていたが、やはり半ズボンと汗臭さのカッコ悪さが入り切れなかった。かと言ってLAメタルが良かったかと言うものでもなかったのでそもそもそのヘンに入れ込めなかった、もっとストレートなR&Rの方が好みだったと言うべきか。そこからロックを深掘りしてハードロック、ヘヴィメタルと時代は進化して流れのままに聴くことも多くなり、好き嫌いじゃなくて聴くようになってからは普通に馴染んでいる、そんな経緯だ。改めて今本作「Blow Up Your Video」を聴いているとAC/DCの歴史的な聴き方と1988年という時代での聴き方でイメージが異なるのだろう。単純にAC/DCの歴史としての位置付けで聴くならばフィル・ラッドではないNWOBHM出身のサイモン・ライトがドラムに座っての作品ながらその個性がガッツリとは活かされていないあたりが物足りないが、冒頭2曲の勢いはサイモン・ライトならではのスタイルか。アルバム全体を通して聴いてみればAC/DC印はきちんと付けられているが、やはり前2作の流れと同じく弾けぶりが物足りなくも感じる。ミドルテンポの楽曲があまりにもべったりと張り付いているとでも言うべきだろうか、ブライアン・ジョンソンの歌声がその手の楽曲にマッチしているのでバンド的にそっちに向くのは分かるが、初期AC/DCにあったスタイルがもっと多くても、と。ただ、これまでに比べれば随分と戻ってきている感触はあるのでまだまだ聴き込みの足りないアルバムなのか。
終盤に「Ruff Stuff」が入ってて、これが結構往年のAC/DC節を出しているので救われる。こういうスタイルのブギ曲でもっと攻め立てて派手派手な冒頭曲みたいなのが散りばめられて、意表を突く作品が数曲くらいだとさすがAC/DCとなるのだろう。その意味でこのアルバムはあと一歩感はあるが、突出した曲が突出してくれているので助かる作品。それが売れたからセールス的にも救われたようだし、良いじゃないか、アルバム全体がどうのなどと細かい話は、と言ったら身も蓋もなくなるが。AC/DCの立ち位置はシーンから見たら実に不思議な存在で、メタルじゃないしそこまでR&Rでもないし普通にハードロックとも言えるが、軽やかさや軽快さはないからちょいと異質だし、この時代の中ではジジイに近かったしどういう区分なのだろう、と意味もないところで捉えていた事も思い出した。ジューダスやメイデン、MSGやホワイトスネイク、スコーピオンズはちょっと違うがメタル初期の音してたし、メタリカやアンスラックス、アクセプトなどはモロにその汗臭さがメタルだったし、ラットやモトリーは派手派手なLA系で、やはりAC/DCのオーストラリア感が浮いてた。幼心にもその異質感は分かったのだから面白い。フレディ・マーキュリーやジョージ・マイケルを見て何か違う、と思った本能に似ているかも。
そのAC/DCも本作からシーンに浮上して、それは次世代のGuns'n Rosesのアクセル・ローズあたりがAC/DCへの賛美を繰り返していた事も大きかっただろうし、その影響は何年か前に彼がツアー丸ごとボーカルで参加した事からも本当に好きだった事で分かるだろう。歴史の流れは面白いものだ。あの違和感の無さもさすがアクセル・ローズと思ったが、1988年、ガンズが出てきた時期にそういう発言がなければAC/DCはもっと水面下にいたかもしれない。またガンズが売れてなければここまでシーンに浮上していなかったかもしれないし、全く関係なかったのかもしれないが、ロックシーンの中で絡み合う歴史はそういう面白さを持っている。日本史を漁って誰それがあの時どこそこにいたら、いなかったら歴史はこうなってた、と同じような捉え方でロックを紐解くのも妄想が膨らんで楽しいものだ。AC/DCに至っては以降完全復帰して超大御所へとステップアップしていくのだからこの時代は一つのターニングポイントだったと思う。そんなことを思いながらの「This Means War」のアグレッシブなシーンに合わせたかのようなスタイルのメタリックな楽曲を味わっているところ。何だ全然地味でも悪くもないアルバムじゃないか。幾つか面白味の感じられない曲が入ってはいるが、何度か聴けば馴染むだろうし、垢抜けた新しい方向性を見据えたホント、ターニングポイントの作品。
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