U2 - Achtung Baby Deluxe Edition

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U2 - Achtung Baby Deluxe Edition (1991)
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 U2の印象はどうしたって寒いロック、それでいて暑苦しい熱さを持ったバンド、生々しさが信条でソリッドでシャープなサウンドが広がるバンドの印象、即ち「Joshua Tree」や「The Unforgettable Fire」で聴かれる、イメージされるバンド像でしかなかった。1990年代に入る頃は自分的には70年代ロック漁りが激しくてリアルタイムのバンドやロックにはあまり見向きしなかった頃があったのでU2がこの「Achtung Baby」をリリースした時期はあまりまともに取り合って気にしていなかった。それでもこの頃のU2の話題は耳にしたのでそれだけインパクトが強かったのだろうと思うし、その後の日本公演の東京ドームで年末年始を飾ったような話もあったからやはり話題は大きかったらしい。自分的にはその頃は本作も聴いていないし見てもいなかったからリアルタイムな話題は何もないが、そんな印象。丁度1990年代の3枚は自分的に通らなかったU2時代だったのは幸か不幸か分からないが、結局後になって全て聴いてじっくりと味わったので良かろう。「Achtung Baby」はまだまだ古き良きU2のイメージを保った曲も多いので馴染みやすいが、それ以降の変化は凄いモノがあった。2005年の自分もこのアルバムを聴いていたようだが、まだ全貌は掴めていなかったような感じがする。もっとも今だからこそ全貌が掴めているモノでもないので大した事も書けないだろうが。

 U2の「Achtung Baby」は1991年リリース作品で、ボウイやイギーが邂逅したベルリンのスタジオでイーノまでも迎えてのヨーロッパ回帰を狙った作品だったようだ。バンドは商売でもあるからアルバムを作る毎に売らなければいけないが、バンド側やアーティスト側はやりたい音楽や実験したい音楽もあるし、過去作り上げてきたサウンドもあるから時代の境目、変わり目での作品作りは頭を悩ます事も多いし、その方向を間違えると割と取り返しが付かないまま消滅していく危険性すらあるので、本気の議論や熟考しての方向性、試行錯誤の産物など様々な要素が絡み合う。丁度この時期はU2にとってそういうタイミングだったようで、相当に試行錯誤したのだろうと想像が付くが、出てきた音だけを聴いているリスナー側は気楽なものだ。自分でも同じだが、出てきた本作を聴いて思ったのはあのU2独特の鋭さは何処へ行ったのか、熱く滾る思いをぶつけたロックバンドの姿は何処へ行ったのか、やはりロックは大人になると出来なくなるのか、どうしてこんな軽快でキャッチーでテクノっぽくロックらしくない音に向かうのかまるで理解出来なかった。アルバム全部をじっくり聴いて良し悪し、好みを選ぶなどの次元ではなくそのクールさが自分的にイマイチ合わなかった。それでしばらく距離を置いていたのがU2の90年代のアルバム郡。世間的にはU2の変化が一般的なリスナーには受け入れられて大御所の仲間入りをしたと言われていた時期に自分は真逆の聴き方だったひねくれモノ。結果的にその聴き方も分かるが、なるほどU2の向かった方向の面白さも分かるようになって良かったとは思う、そんな印象。

 冒頭から音作りのイメージの変化は著しく、随分斬新な音でアルバムを飾ってくれるが、アルバム全体の何処を斬ってもとにかくシュールで暗くてヨーロッパ的と言うかデカダンな雰囲気が漂い、アメリカでは全く似合わないかのようなスタイルばかりが続いた作品だが、現実的にはアメリカで受けていたのはアメリカ的な面がないからだろうか、不思議だ。それでスタジアムバンドにまでなってしまったのだから恐れ入る。このアルバムも今じっくりと久々に聴いているが、ヤバいくらいによく出来ててハマり込んだ。どうして上述したようなイメージを持ったのか、持ったのは分かるがこの面白さに気づかなかったのか、自分の未熟さが分かると同時に自分の成長度も分かった。この暗さの中の芸術感、それはボウイのベルリン時代を聴いているのと同じ意味合いだったのか、そういう並べ方で聴いてなかったから思い付きもしなかったが、なるほど、この質感こそはあのアルバム郡と同じだ。1曲1曲の質の高さも当然ながら、アルバムに纏め上げているテンションの高さも納得の一枚で、ロックバンドだぜと言っていたバンドのメイクや道化師ばりのライブスタイルの変化も驚かされた。全くU2は自分の想像以上のロックバンドだったと見せつけられた時代の作品で、以降ライブ映像もかなりの数見ているしアルバムはほとんど聴きまくっているし、凄いバンドだと語っているくらいだが、そこに至るまではなかなか難しい面もあった。この後もまだU2は楽しませてくれて今でもライブ活動してくれているのだから生ける伝説の域に入るのだろう、あの愛の溢れるライブ感はまた味わいたい所。







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フレ
Posted byフレ

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