The Stalin - trash

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The Stalin - trash (1980)
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 2020年になって初めて公式CD化されてその筋のファンを涙させていたThe Stalinの幻のファーストアルバム「trash」。それまでに市場に出回っていたのはアナログレコード3000枚のみで、それ以外はブートレッグかカセットテープ落としなどしかなかったようだ。自分が物心ついた頃に本作は既に幻のアイテムになっており、その話題だけがあちこちで散見されただけで探しても探しても見つからなかったし、聴く事すらままならなかったのでアルバムとして聴いた事がなかった。海賊盤を必死に探すなどはさすがに思い付くはずもない若かりし頃の話なので、その後海賊盤の存在を知ってもそこまでの熱意は既になかった。15年前にはThe Stalinの「Last Live」の話を書いている本ブログだったが、確かにあのライブはぶっ飛んだしインパクト絶大だったし、衝撃的だったのは今でもはっきりと覚えている。その映像もまるで見る事出来なかったが今はそれがYouTubeで見られる時代なので、それはそれで書きたい部分もあったが、やはりこの時期にようやく耳にする事の出来た「trash」をクローズアップしておきたい。

 正直言って今の年齢でこれだけ年月が経過してこの超最初期の日本のパンクロック、ハードコアパンクのアルバムをじっくり聴くなど考えもしなかったが、そこは青春時代の名残惜しい思い出を今改めてと、聴けなかったアルバムへのようやく感を満喫しながら聴いていた。もっと無茶苦茶でボロボロかと思っていたら、ここまでまとまりのあるバンドの音だとは意外ですらあった。スターリンって演奏は割とまとまっててバンドらしさがあったバンドだったのか。やたらとぶっ飛んでたのは、と言うかぶっ飛んだパフォーマンスをやってたのは遠藤ミチロウだけの話で、それもスターリンを知られるために奇異ライブを繰り広げていたようで、そのしたたかさはさすがのパンキスト。80年代初頭はもうそれはそれは無茶苦茶な話題ばかりを耳にして活字で読んでいたから凄い妄想が膨らんでたし。そんな懐かしき思い出に浸りながらコレかよ、と呆れて苦笑いしながらの初めての「trash」。やはり凄い。とんでもなく凄い。

 アナログ時代のA面はスタジオ録音作品、それでも10曲入ってるからかなりのお腹いっぱい感あるし、今思えばそうでもないのだろうが、スラッシュメタル郡の速さとは異なるやたらと速いビートのパンクソングの羅列、怒涛の攻撃、最後は「溺愛」のニューウェイブ感すら漂うもうひとつのパンクの嗜好性をも出している深みもあり、何か凄いモノ聴いてる感満載。そしてB面はライブ音源が収録されているが、それはそれはもう何ともラフな音源で爆発しまくっててレコードにして良いのか、とすら思えるレベルだがクリムゾンの「Earthbound」で証明されているように迫力はやたらと伝わってくる無茶苦茶熱い熱いライブだ。凄いのはこちらのライブ面も10曲入っていて、ライブ音源でもA面と曲がダブる事なく収められているあたり。1980年にバンド組んで81年に本作をリリースした時点で20曲、そりゃ1曲が短いから可能だし、歌詞もぶっ飛んでるからいくらでも出来たのかもしれないが、アグレッシブなスタンスで勢いありまくりの時期のライブ。観客でこのライブにその場にいたらどうしようもないくらいにどうしようもなかったのだろうとは容易に想像が付く。もしかしたら今でもそうかもしれない。タテノリや横ノリなどと言える話ではないし、アタマ振るノリじゃないし、確かに暴れるしかないかもしれない、そういうパワーとノリしかない。これぞパンク。多分世界に誇るパンクだと思う。この辺り以降の日本のアンダーグラウンドパンクシーンは今や世界中にマニアがいる独特のシーンを形成していたし、個性的なバンドが山のように埋もれているシーンとしても知られている。その象徴がスターリンの作品かもしれない。作品と言うにはあまりにも生々しすぎるので単に記録、か。

 今の時代にはこんなバンド、絶対に存在しないし存在出来ないし、音楽面でも今更通じる事もないし、時代の産物かもしれない。更に歴史的背景も手伝っているし、そういう部分を並べてみるとやはりロックは確実に終焉に向かっていると思わざるを得ない。ただ、こういう記録がロックの証だし、パンクそのものだ。だから伝説になる。凄い。聴けて良かった。



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フレ
Posted byフレ

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