David Gilmour - Remember That Night: Live at the Royal Albert Hall
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David Gilmour - Remember That Night: Live at the Royal Albert Hall (2006)

あまりにも壮大でスペクタルなロジャ・ウォーターズのライブに見入ってしまったので、ふと相方のデイヴ・ギルモアの方はどうだっけな、と気になって幾つかの映像作品を漁ってみると2006年にリリースされている「Remember That Night: Live at the Royal Albert Hall」があった。2000年代のライブ作品なのでつい最近、と思っていつつもそれでも結構な年月が過ぎ去っているのは自分の年齢と共に時間が早く過ぎ去ってしまっている傾向からだが、75歳も60歳も大して変わらないだろう、と思っていた年頃から、それはきっと大きく違うのだろうと実感する年齢になっただけだ。それでもまだロックは生き続けている、しかも当時革新的な事をやってきた連中が今でもそのままやっている姿、すなわちロックは老齢化して死ぬのだろう。若手に引き継がれて云々はあるが、どうにもスピリッツまではなかなか定着しないと言うか今の時代これからの時代必要ないと言うか、そんな事までも思ってしまったのはロジャ・ウォーターズのせいかもしれない。一方のデヴィッド・ギルモアはそういう主張とは無縁に純粋に音楽活動だけに専念しており、ここで二人の明らかな意思の相違が感じられるが、昔も今もそれは変わらない。
2006年にロイヤル・アルバート・ホールで数多くのゲスト陣を迎えて行われたライブを記録したDavid Gilmoreの「Remember That Night: Live at the Royal Albert Hall」はやはり大人気となり、確か当時もかなり話題になっていたし、その時も自分的にはピンク・フロイドがここまでポピュラー化するのは一体どういう事だ、と不思議に思っていたので、今と変わらない。恐らく自分の認識が間違っているのだろうが、デイブ・ギルモアならまだ理解できる。それはやはり純粋に音楽として雰囲気を楽しむ的な側面が強く、そこに美しい音楽、リラックスした音楽が美しいライブスペクタル感と共に楽しめる、ロジャ・ウォーターズの重さに比べてもっとイージーで単純に楽しめる面が強いからだろう。それを本人も自覚しているし、それこそが音楽の良いところだとのスタンスはアルバムやライブや活動を知っていれば分かるし、そう捉える事がギルモアフロイドを認められるかどうか、との経験も既に数多くのリスナーが知っている。そういう背景をどうしても考えてしまうし、歴史的にそういうのを意識してしまうのはオールドリスナーだけなので、単純にこのライブ映像を楽しんでみよう。
まず、やはりこのギターの音色こそがピンク・フロイドの楽曲群には欠かせない味わいだ。ストラトの枯れ具合が特徴だったのかとつくづく思い直したくらいにぴったりとこの音色がハマる、聴き心地が良い、それは単純に耳慣れたサウンドが出てくるという安心感だろうから、その意味ではピンク・フロイド的実験精神に反する安定感となるので、良いか悪いか、単純に馴染む音が普通に出てくるしっくり感。良し悪しではない。そしてロジャ・ウォーターズほどの凝りまくったSE空間サウンドではなく、もっと普通に効果音的、これは時代が違うからかもしれないが、そこまで映像美やSEに凝るわけでもなく、純粋にステージの演出、場の作り方雰囲気も持っていき方的に上手く使われているから、それはそれで素晴らしい。そこで顔見て分かるのか、とのレベルでのゲストが凄く、当然最初に驚くのがリック・ライトの姿。よく見るとフィル・マンザネラがサイドギターにいて、ベースもどこかで見たような、と調べればガイ・プラットだった。所々で出てくるサックス奏者はまんまピンク・フロイドの名盤郡でサックスを吹いていたディック・パリーを呼び込んでいる。
そしてゲスト陣が豪華で、そもそもこのツアーはアルバム「オン・アン・アイランド」のプロモーションなので、アルバム全曲を途中でプレイしているが、そこでのゲスト陣からメンバーが選出されている故、マンザネラやガイ・プラットが参加しているが、アルバムのゲストでも参加していたデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュがそこかしこでコーラスに加わっている。アメリカの土着的カントリーを歌っている二人がこんな雰囲気の楽曲群でコーラスワークとは少々違和感あるが、それはイメージだけの話で音を見て聴いているとさすがの歌手感。更にとっても驚いたのはロバート・ワイアットが車椅子に座り、トランペットで参加している姿を楽しめる点で、この人トランペット吹いても哀しげな音になるのかと妙にしっとりしてしまった。そしてクライマックスのゲストは当然のデヴィッド・ボウイ。この頃のボウイは長期活動休止中だったので、姿を見られる事自体も珍しかったが、それに加えてここで参加は話題にもなろう。更に楽曲が「アーノルド・レイン」と「Comfortably Numb」のさすがにBowieと唸らされるメロディ改バージョンで楽しませてくれる。デヴィッド・ギルモアはその怖いルックスとは裏腹に恐らくはかなり人当たりも良く、様々なミュージシャンとの交流も深くあるようで、こういう温かみのあるライブが出来上がったのだろう。
楽曲群は「狂気」から始まり「オン・アン・アイランド」全曲をプレイ、そしてピンク・フロイドの名曲群が演奏されていくが、「Fat Old Sun」がプレイされるのはなかなか味わい深いし、「パルス」からも数曲出てくるのはこの人ならでは。しかしロジャ・ウォーターズと被る曲も当然多く、オリジナルなボーカル部分とギターの音色、更にリック・ライト参加とピンク・フロイド色が強いのは当然ながらも聴いている安心感が高い。今となってはどちらがどうと言うものではないが、本作では温かみのあるピンク・フロイドという音楽を楽しめる、素晴らしい作品。

あまりにも壮大でスペクタルなロジャ・ウォーターズのライブに見入ってしまったので、ふと相方のデイヴ・ギルモアの方はどうだっけな、と気になって幾つかの映像作品を漁ってみると2006年にリリースされている「Remember That Night: Live at the Royal Albert Hall」があった。2000年代のライブ作品なのでつい最近、と思っていつつもそれでも結構な年月が過ぎ去っているのは自分の年齢と共に時間が早く過ぎ去ってしまっている傾向からだが、75歳も60歳も大して変わらないだろう、と思っていた年頃から、それはきっと大きく違うのだろうと実感する年齢になっただけだ。それでもまだロックは生き続けている、しかも当時革新的な事をやってきた連中が今でもそのままやっている姿、すなわちロックは老齢化して死ぬのだろう。若手に引き継がれて云々はあるが、どうにもスピリッツまではなかなか定着しないと言うか今の時代これからの時代必要ないと言うか、そんな事までも思ってしまったのはロジャ・ウォーターズのせいかもしれない。一方のデヴィッド・ギルモアはそういう主張とは無縁に純粋に音楽活動だけに専念しており、ここで二人の明らかな意思の相違が感じられるが、昔も今もそれは変わらない。
2006年にロイヤル・アルバート・ホールで数多くのゲスト陣を迎えて行われたライブを記録したDavid Gilmoreの「Remember That Night: Live at the Royal Albert Hall」はやはり大人気となり、確か当時もかなり話題になっていたし、その時も自分的にはピンク・フロイドがここまでポピュラー化するのは一体どういう事だ、と不思議に思っていたので、今と変わらない。恐らく自分の認識が間違っているのだろうが、デイブ・ギルモアならまだ理解できる。それはやはり純粋に音楽として雰囲気を楽しむ的な側面が強く、そこに美しい音楽、リラックスした音楽が美しいライブスペクタル感と共に楽しめる、ロジャ・ウォーターズの重さに比べてもっとイージーで単純に楽しめる面が強いからだろう。それを本人も自覚しているし、それこそが音楽の良いところだとのスタンスはアルバムやライブや活動を知っていれば分かるし、そう捉える事がギルモアフロイドを認められるかどうか、との経験も既に数多くのリスナーが知っている。そういう背景をどうしても考えてしまうし、歴史的にそういうのを意識してしまうのはオールドリスナーだけなので、単純にこのライブ映像を楽しんでみよう。
まず、やはりこのギターの音色こそがピンク・フロイドの楽曲群には欠かせない味わいだ。ストラトの枯れ具合が特徴だったのかとつくづく思い直したくらいにぴったりとこの音色がハマる、聴き心地が良い、それは単純に耳慣れたサウンドが出てくるという安心感だろうから、その意味ではピンク・フロイド的実験精神に反する安定感となるので、良いか悪いか、単純に馴染む音が普通に出てくるしっくり感。良し悪しではない。そしてロジャ・ウォーターズほどの凝りまくったSE空間サウンドではなく、もっと普通に効果音的、これは時代が違うからかもしれないが、そこまで映像美やSEに凝るわけでもなく、純粋にステージの演出、場の作り方雰囲気も持っていき方的に上手く使われているから、それはそれで素晴らしい。そこで顔見て分かるのか、とのレベルでのゲストが凄く、当然最初に驚くのがリック・ライトの姿。よく見るとフィル・マンザネラがサイドギターにいて、ベースもどこかで見たような、と調べればガイ・プラットだった。所々で出てくるサックス奏者はまんまピンク・フロイドの名盤郡でサックスを吹いていたディック・パリーを呼び込んでいる。
そしてゲスト陣が豪華で、そもそもこのツアーはアルバム「オン・アン・アイランド」のプロモーションなので、アルバム全曲を途中でプレイしているが、そこでのゲスト陣からメンバーが選出されている故、マンザネラやガイ・プラットが参加しているが、アルバムのゲストでも参加していたデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュがそこかしこでコーラスに加わっている。アメリカの土着的カントリーを歌っている二人がこんな雰囲気の楽曲群でコーラスワークとは少々違和感あるが、それはイメージだけの話で音を見て聴いているとさすがの歌手感。更にとっても驚いたのはロバート・ワイアットが車椅子に座り、トランペットで参加している姿を楽しめる点で、この人トランペット吹いても哀しげな音になるのかと妙にしっとりしてしまった。そしてクライマックスのゲストは当然のデヴィッド・ボウイ。この頃のボウイは長期活動休止中だったので、姿を見られる事自体も珍しかったが、それに加えてここで参加は話題にもなろう。更に楽曲が「アーノルド・レイン」と「Comfortably Numb」のさすがにBowieと唸らされるメロディ改バージョンで楽しませてくれる。デヴィッド・ギルモアはその怖いルックスとは裏腹に恐らくはかなり人当たりも良く、様々なミュージシャンとの交流も深くあるようで、こういう温かみのあるライブが出来上がったのだろう。
楽曲群は「狂気」から始まり「オン・アン・アイランド」全曲をプレイ、そしてピンク・フロイドの名曲群が演奏されていくが、「Fat Old Sun」がプレイされるのはなかなか味わい深いし、「パルス」からも数曲出てくるのはこの人ならでは。しかしロジャ・ウォーターズと被る曲も当然多く、オリジナルなボーカル部分とギターの音色、更にリック・ライト参加とピンク・フロイド色が強いのは当然ながらも聴いている安心感が高い。今となってはどちらがどうと言うものではないが、本作では温かみのあるピンク・フロイドという音楽を楽しめる、素晴らしい作品。
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