Linda Hoyle - The Fetch

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Linda Hoyle - The Fetch (2015)
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 70年代の英国ロックシーンを彩った雑多な世界観を持ったバンドのメンツやバンドそのものは当然の如くその場で消え去り、残されたバンドは数少ないし、関わったミュージシャンも大半は業界を離れていったようだが、それでも業界できちんと仕事を続けているメンツに多く、才能があったからこそだろうが、色々なバンドやアルバムのそこかしこでクレジットされていたり、あんなところにこんな人が的に名前を見かける場合もあるから楽しめる。それでもすっかりとシーンから消え去ってしまって、生存確認すら出来ない人も多く、特に女性陣は出産育児が重なるからか、20年くらいは音信不通になるのが当たり前で、ケイト・ブッシュですらそれに近かったのだから、他の女性陣営はそれ以上ともなり、また活躍の場と時代が90年代では難しかっただろうからか、たまたまひと時代巡って落ち着きを取り戻せたのが00年代以降だったのか、その辺りから往年のバンドの復活劇や幻のバンドの再結成などあり得ない再編成が幾つも見られたし、来日公演すら行っていた事もあって不思議な感覚に襲われた時代だった。

 元Affinityのボーカリストと言えばLinda Hoyleで、アルバム一枚リリースした後、今度はリンダ・ホイル名義でニュークリアスをバックに従えてのブルースとジャズを目一杯ロックにして渋く太い歌声でヴァーティゴの紋章を見せつけながら「ピーセズ・オヴ・ミー」なる傑作アルバムをシーンに一枚だけ残して消え去っていた。21世紀の情報過多の時代になってようやくどうもまだ歌っていたりするらしい、との話がまことしやかに出てきてYouTubeでもその姿を確認出来ていたが、そこから更に時間が経過しての2015年になり突如として驚くことにリンダ・ホイル、44年ぶりのソロアルバムリリース、アルバムジャケットはロジャー・ディーンとあの時代の英国が再び、との勢いで情報が舞い込んできて、分かってはいるもののやはり期待してしまうのは過去を知っているからこそ。冷静に見ればロジャー・ディーンのジャケットって時点でリンダ・ホイルのあのアルバムのムードとは異なるだろう、とは想像すべきだし、44年ぶりって70歳近くの歌声だろうから何を期待して良いのか分からない。それでもアルバムジャケットに包まれて名前が出ていれば期待してしまう哀しい性。

 2015年リリースのリンダ・ホイルの44年ぶりセカンドソロアルバム「The Fetch」はモ・フォスターとの共作に近く、ほぼ二人で仕上げていたようだが、それは楽曲群を聴いていても分かるようにシンセサイザーや鍵盤の静かなバッキングとリンダ・ホイルの歌声ばかりで仕上げられている。そこに昔の仲間と発売元のAngel Air絡みのミュージシャンが手伝っているが、それも往年の英国ロックの裏方を支えていた面々で、スタックリッジやそれこそレイ・ラッセルも参加しているし地味にキャラバン絡みのダグ・ボイルもいたりと錚々たる制作陣営が揃っているからこそアルバムの出来映えは美しく素晴らしい。ただしロックではなく、当然ながらのジャズボーカル紛いの作風、それでもどこか突出した歌があるかというものでもないから厄介。ジャズボーカル作品がロジャー・ディーンのジャケットでリリースされる、なんてのが唯一オリジナリティ高い点かもしれない。

 ただ、そういう文句をいくら書いてみても聴くと、良い作品で歌声もきちんと身に沁みてくるし、それがリンダ・ホイルである必要はないが、リンダ・ホイルがこういう作品をリリースしなければこの手の作品を今聴く事もなかったかもしれないからやはりその意味ではアルバムに感謝なのだろう。良く言えば味わい深い年相応のジャズボーカルをそのまま楽しめる作品でもあるし、悪く言うならばリンダ・ホイルである必要性はない。それでも記念碑的にリリースされ、おそらくどこかのクラブなりで今でもたまに歌っているのかもしれない。そういう形で自然に音楽と親しみ歌っていく事こそがあるべき姿かもしれない。







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フレ
Posted byフレ

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