Cheap Trick - One On One

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Cheap Trick - One On One (1983)
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 70年代を生き急いだバンドの全盛期は短命なものだ。長くても10年だから短ければホントとことん短い。あれだけのパワーを放ったバンド、と思われていてもその歴史は5年もあれば大したもので、バンド自体はそこまで短命ではなかったが、売れなくなって来るとどうしても士気が下がりバンドメンバーが離脱したりレコード会社から離れたりして思うように物事が進まなくなるケースが多くなる。チープ・トリックの80年代はそういう時期に突入したかのようにも見えたが、一瞬だけ起死回生したので頑張るかと思ったらやはり難しかった。シーンの変貌を予測するのは難しいし、バンドの音をそこまで変えていくのも妙だから悩ましい。

 Cheap Trickの1983年リリース作品「One On One」はこれまでのあの変態的ベーシストのトム・ピーターソンが離脱してのアルバムで、それだけでネガティブな要素だったが、どうにも中途半端なサウンドの立ち位置でもあったチープ・トリックを取り巻く環境はちょっと進めばヘヴィメタルの波、戻ればエイティースポップスシーン、周り見ればマイケル・ジャクソンやプリンス。さて、このパワーポップバンドはどこに向かえば良いのだ、となったのも当然。クイーンはそのヘンうまく渡っていったがエアロスミスは地獄を通り抜けてシーンに戻ってくる頃で、キッスも路頭に迷っていたくらいだからチープ・トリック的には困った事だろう。出てきたひとつの答えが本作となるが、パワーポップならぬパワーロックとでも言うサウンド。ギターの歪み具合が派手でもあり、深くもあるが、メタル系の歪みではないからポップの世界に留まっている。その中途半端さが立ち位置を余計に危うくしたのだろうが、もともとのリスナーからしてみればこの変化も面白かったような気がする。

 楽曲のセンスは相変わらずのポップさとキャッチーを持っているから悪くないし、きちんとチープ・トリックらしさも味わえる作風ばかり。後にファンからも、そして本人も実は良い作品と認められているのはそのソングライティング力。プロデュースはクイーンで有名なロイ・トーマス・ベイカーだが、どうもチープ・トリックとは相性が合わなかったのか、チグハグ感は否めない。ただ、リック・ニールセンのセンスは健在。そういう楽しみ方をしてみれば悪くないアルバムだが、キラキラの80年代にイケメンが一人消えてしまったこのアルバムジャケットは頂けない。



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フレ
Posted byフレ

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