Limp Bizkit - Three Dollar Bill, Yall $

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Limp Bizkit - Three Dollar Bill, Yall $ (1997)
Three Dollar Bill, Y'All

 アメリカの音楽シーンは基本的に保守的な傾向が強いように感じていたがそれも80年代頃までだろうか。90年代になるとそれまで英国の支配下にあった音楽の影響から脱出してヨーロッパからの輸入品をアメリカナイズされた風味にして出し直してきたり英国産でも同じく洗練させたりしてきた。更にグランジラップ系を筆頭にアメリカならではのサウンドをミックスしてポップシーンやロックシーンに投入してきた。先進の英国はそこには入らず別方向からアプローチしていたシーンがいわゆるギターバンド系。そこで大きく英米のシーンが求めるサウンドが分かれた。かと言ってどちらかしか売れなかったのでもなく、しっかりと実力あるバンドはどちらも売りまくっていたのは面白い。

 Limp Bizkitの1997年リリースファーストアルバム「Three Dollar Bill, Yall $」は90年代のシーンが熟成しまくった頃、別の方向からシーンで主流になってきたラップサウンドとも融合を果たしての明らかに新しいミクスチュアーサウンドを繰り出してきたアルバム。初めて聴いた時は白人?黒人?ラップ?メタル?パンク?なんだこれ?的な印象で、それまでの自分の概念からはどう解釈して良いか分からなかった。ただ、それでも凄まじい程の怒り?テンションの高さ?アジテーション?が詰め込まれていて、それは過去に聴ける事のないレベルでのブチ切れ方だった。人様に聴かせる音楽でここまで怒りをダイレクトに詰め込んで良いのか?ってくらいに圧倒してくるパワフルなスタイル。その前にはラップだメタルだの概念はほぼ無意味で、この怒涛のパワーにただひれ伏すだけ。うるさいサウンドを出しているアルバムや怒りを表しているアルバムは他にもあるが、ここまで説得力ある怒りを世間に納得させてしまったアルバムやバンドは多くない。それほどに凄まじい。

 更にユニークなのはRage Against The Machineが真剣に怒りを社会に向けてメッセージを発していた事に対して、Limp Bizkitの場合はもっと洗練されていて、単なる若者の社会に対する怒りを表現しているだけでそこにはメッセージ色は無い。だからポップとして聴ける範疇に留まるし論争を巻き起こすレベルにもならないから一般受けした。結果レイジからは嫌われたようだが、世間に向けて同調を求めるか自分が好きにやるかのスタンスの違いだけで、後者でカネ稼げたから良かったと思う。それくらい割り切っていながらこのパワーだ。パンクが世に生まれ出てきた時、またはロックが世に生まれ出た時は正にこういうやり場のない怒りがパワーを生んでいた。その再来ともなった瞬間が90年末に味わえていた事を当時は気づかなかったが、シーンの移り変わりなどその程度のものか。後になって初めて気づくその瞬間。





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フレ
Posted byフレ

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