Nine Inch Nails - The Fragile

0 Comments
Nine Inch Nails - The Fragile (1999)
The Fragile

 90年代のアメリカの音楽シーンは退廃的なサウンドやイメージがウケていたし、実際病んでいた部分が表面化して出て来たのかもしれない。当時はそれすらもファッションだったしひとつの新しい着眼点でもあって受け手側はそこまでシリアスに物事を考えずにその奇妙な世界観を味わっていたが、リアリティを伴って来たのはカート・コバーンの自殺と日本だと地下鉄サリン事件だろう。シャレにならなくなったし、これまでエンターティンメントだったものがいきなりリアルになってきたから、一気に萎んでいった感あった。妙な時代だった。

 Nine Inch Nailsの1999年作「The Fragile」は彼等の3枚目のアルバムで、何とこの初期時代で5年ぶりのアルバムと言うからその大物ぶりは大したものだ。実際アルバム一枚で超大物の仲間入りしたからその余裕もあったようだし、2枚目も売れまくったから焦らされる事もなく作品に取り組めたらしい。自分がNine Inch Nailsの名を知ったのはボウイとコラボライブした頃だから1995年だ。さほど早いタイミングでもなかったが、そのライブを見て妙な世界観を持ったシリアスなバンドだ、と感じてはいた。それがインダストリアルとメタルとロックと時代の融合性を図った一人の天才の目論見とまでは思わなかった。本作はそのツアーや映画のサントラ制作、仲間とのイザコザ含めて、そりゃ5年も間空いてれば人生いろいろあるだろ、って変化もあり、以前のようなインダストリアル中心の作風でもなく、アルバム二枚組としてリリースされただけあって、多岐に渡ったサウンドが収録されている。

 それこそメランコリックな歌ものからノイズ的なものまで、普通にポップスじゃないかと思われるサウンドもあればインダストリアルもある。2枚組アルバムは通常そういうものだからおかしくもないが、この手の作品を幅が広がったと捉えるか方向性を見失ったと捉えるかはリスナー次第、そしてアーティストの次の動き次第でもある。結果的に本作はトレント・レズナーの才能を知らしめた意味で大成功したアルバムになっている。聴いていてもよく出来ていると思うし、さすがアメリカの世界観の広さにも感心する。単なる陰鬱さから離脱してそれをひとつの手法と作品として出し切っているし、主張も忘れていないからバランスが良い。更にロック的で聴き心地も良いからナイスなアルバムになってる。凄いな、そんなアルバムだったのか。





関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply