Arthur Brown's Kingdom Come - Kingdom Come

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Arthur Brown's Kingdom Come - Kingdom Come (1972)
キングダム・カム

 60年代のミュージシャンが70年代を生き抜くのもなかなか難しかっただろう。そもそもミュージシャンが長々とシーンに君臨する事自体が多くなかった頃なので、音楽シーンの変化など想像もしなかっただろうし、実際そうなった時に追随できるほどのミュージシャンが残っていたかどうか。いくつかのバンドはその変化を楽しんで進化したが、大半は一過性の波から逃れられずにシーンから消え去った。所詮はポップミュージックなど流行り物だから、と。ところがしつこくもその変化を楽しんで自身の個性を活かしきった一人にアーサー・ブラウンがいる。これもまた超絶個性的な人だったので70年代も普通に渡っていった。

 Arthur Brown's Kingdom Come名義での1972年リリースの2作目「Kingdom Come」。元々がサイケデリック時代から出てきているからその手のものはお得意だがメンツが替わりに替わり、その間ではアンディ・マッカロックやカール・パーマーも参加し、音楽性の幅の広さを物語っているが、本作は超絶アヴァンギャルドとも言えるし、喜劇そのままを音楽で表した作品とも言える。簡単に言えばザッパの世界をもっと拡大解釈した狂気すらを孕むアルバム。ただこれが聞き辛いかと言うと、案外そうでもない。楽しみがあるから割と聴けてしまう作品で、単純に面白い。意味分からないが楽しめる。プログレみたいに暗さや重さを持った作品ではなく、軽やかに音楽が進行と共に変化して物語を紡いでいるような作品だ。

 劇場向けの音楽とでも言うべきだろう。ジェスロ・タルの世界でもこういった作品があるが、アーサー・ブラウンはもっと演劇度合いが強い。当人の「Fire」の映像を知る人ならば彼のエンターティナー性は十二分に理解できるだろう。あの性格はこの作品でも出ていて、アルバムそのものがハチャメチャなサイケデリックアヴァンギャルド演劇音楽集になっている。そんな書き方しつつも、正直、天才でしか作り上げられない作品じゃないか、と思える。しかもこの時代にこれだけのパワーを込めたアルバムが作れるのは凄い。



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フレ
Posted byフレ

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