Roger Chapman - Mail Order Magic

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Roger Chapman - Mail Order Magic (1980)
Mail Order Magic

 個性的なボーカリストになりたいと思っても、元々の歌声の才能も必要だし、テクニックでどうにかなる次元はさほど大きくもないだろうから、まさに生まれ持った才能があるか否かだろうと思う。ロバート・プラントみたいにああいう歌い方を編み出す、勝手にああなるならともかく、大半は才能の話だろう。ロッドにしてもジャニスにしても、ポール・ロジャースにしてもだ。その中に入っては来ないが天才的な歌声の持ち主は他にも多数いるし、音源で聴くことも数多く出来るが、売れる売れないとは別の話。ロジャー・チャップマンもそれに近い線にいるが、まだ知られている方だろうか。

 Roger Chapmanの1980年リリースソロ名義3枚目の作品「Mail Order Magic」。ファミリーでのあのヴィブラート歌唱は既に自身に定着した超個性的な唱法だからどこで歌われても一発で分かる。マイク・オールドフィールドのアルバム「Crises」に「Shadows on the Wall」で参加した時も一発で惹き込まれたし。その歌声が欲しかったのだろうからまさにぴったりで、ロジャー・チャップマンの代表曲にすらなっているレベル。そしてこの「Mail Order Magic」はこれまでのチャーリー・ホイットニーとの共作から離れ、同じファミリー仲間のジョン・パーマーと組んでの作品で、80年代に入ってまでも相変わらず志向性の定まらないロジャー・チャップマン流のロックを展開している。バックの演奏だけ聴いていれば、軽快なポップスに近いロック調の作風、ともすればポップスだろうと思えるレベルだが、そこをロジャー・チャップマンが歌うから突然ハードロックかと思ってしまう感覚に襲われるほどのパワフルさが加わる。凄い説得力のあるボーカルスタイル。

 その歌唱力のおかげでか、どの曲も原曲レベルより数段アップしたレベルに聴こえてくるから名作じゃないか、と思えるくらい。曲が良いのではないが、ロジャー・チャップマンの歌が曲を引き上げてしまっている。曲が良いという概念すら崩されてしまうボーカルスタイルのアクの強さは、これまで他のボーカリストではあまり聴くこともなかったが、これだけのインパクトを放ってくれるのはホント凄い。もうちょっとバンドとメンバーが違っていたら世界レベルの成功者、歴史的ボーカリストになっていただろうが、これも運命。こうして多数のアルバムで歌声が味わえるのは渋味のある楽しみ。参加メンバーも強烈で、何はともあれ聴けば分かるミッチ・ミッチェルのドラミング。更にジョン・ウェットンのベース。地味なところでのジェフ・ホワイトホーンとレス・ビンクス。キャリア長いと人脈多くてこういう時に面白くなる。





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フレ
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