Patti Smith - Gung Ho

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Patti Smith - Gung Ho (2000)
ガン・ホー(紙ジャケット仕様)

 時を経て、2000年になり、70年代の熱気は何処へやら時代は変貌しながらアーティストを置いてきぼりにする。そして残酷なまでに人を亡き者にしていく。その波に呑まれた者もいれば、その周囲で苦痛を味わった者もいる。ミュージシャンやアーティストがその憂れき目に会い、しばらく時間が経つとその思いを込めた作品が登場する事もある。パティ・スミスの復活劇はそんな背景から実現しており、それは幸か不幸か素晴らしく重いアーティスト、ロックの世界に必要な楔を打ち込んでくれた。どうしてここまで作品の重さが違うのだ、と言うくらい重い。本人がそこまで意識しているかどうか分からないが、人生の重みがなければ出せない音だと思う。

 Patti Smithの2000年リリース8枚目のオリジナルアルバム「Gung Ho」。アルバムジャケットにはパティ・スミスの父親の写真が使われ、珍しく本人がジャケットに登場しないアルバムになっている。それで作品が何か変わったか、と云われるとそれは無い。それどころか70年代の作品から90年代の作品の重さを抜け、ひたすらに内省的な作風から外に発散していく方向が感じられるアルバムになっている。重さは相変わらず、どころかもっと重みを増しているかもしれないが、そこに力強さが加わっている事で前進する向きが感じられる。これほどに力強く訴えてくるアルバムやバンドはホント、他にはそうそう見当たらないし、音の出来映えがどうのって言う話でもなく、正にパティ・スミスの歌声、魂がそのまま伝わってくるからに過ぎない。素人にそこまで感じさせてしまう作品って、どこまで本物感あるのだろう。生で見て聞いたらとんでもなく響くだろうよ。

 って実際1997年頃の来日公演を2回位見に行ってて、その重さとパワーにぶっ飛んだ記憶が蘇ってきた。あまりにも重くて受け止められなくて以降の作品はさほど回数を聴けていない。辛いから。それでも聴くと力強さをもらう。このアルバムはそういうパティ・スミスの前向きな取り組みがそのまま伝わってくるから、自分に元気が無い時にでもじっくりと聴くとスピリッツ的に前に進もうと言う気になる。この安心感は凄い。母なるロッカーの強さか。旧友のトム・ヴァーラインも参加しているし、いつものレニー・ケイも参加している。更には息子のジェイソンも父母の共作曲でギターを弾いているという感動。まだ未発表作品があったようで、こうして家族3人の共演を実現させているのは素晴らしい。これぞ愛、だ。





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フレ
Posted byフレ

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