Claire Hamill - Abracadabra

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Claire Hamill - Abracadabra (1975)
アブラカダブラ

 あまりにも若くしてシーンに登場してくるミュージシャンは、天才的な才能を持っているのだろうけど、自身の中にあるオリジナリティを外に放出することで独自の世界、音楽を創り上げている人もいれば、その才能ではなく、センスやプレイヤー的に天才的だと、音楽性が定まる前に周囲の持ち上げ方によってアレンジが変わってって、本来論でもないサウンドに仕上がっていったりする。本人にとっては新たに広がる世界だから楽しくてしょうがないのかもしれない。聴いている側はこの人、どういう音楽がやりたいんだろ?って話になる事多数。

 Clair Hamillという英国の女性シンガーは何と16歳の時にアイランドレーベルと契約してアルバムをリリース。この逸材を売るぞ、とばかりにロック的見地での豪華ゲスト陣営を集めまくり、一大プロジェクトでプッシュしまくったようだ。結果的にはそこまで売れたというお話は聞かないままアルバム2枚でアイランドはさようなら、その後どういう理由なのかキンクスの保有するコンクレーベルへ移籍して、キャリアを続けていく。今回の「Abracadabra」という作品は1975年リリース作品だからクレア・ハミルが21歳頃の作品だ。それでもまだ自分のやりたい音楽の方向性などは明確じゃなかっただろう。だから聴いていて、自分が不思議になる。何聴いてるんだっけ?って。

 1971年デビュー・アルバム時はフォーク中心のシンガー的で、アルバムジャケットだって暗めのそういう雰囲気だったので、どことなくトラッドフォークシンガーのようなイメージを持っていた。ところがその4年後の1975年にリリースされた本作では単なるポップスシンガーになってる。歌声に変化があるというのでなく、当然ながらアレンジが大幅に変わってきてて、時代を追うかのようなソウル調、ポップ調、フォーク的みたいなのが入り混じってて、端的に聴けばこの時代のポップシンガーを聴いているだけという感覚。これは歌声が云々、って次元ではなく自分的には全く受け付けられない類の音楽になってる。唯一キンクスの「Celluloid Heroes」の美しさが光っているが、こうして聴いちゃうと実に良く出来たメロディーの歌だって事が強調されている。素晴らしい。その他はなぁ…、メル・コリンズがブラスセクションのアレンジ担当らしいが、もうそういう次元で聴けないくらいにプロのポップスアルバム。その意味では極上。

 ちょこちょことシーンから見えなくなる期間はあったものの、継続的に活動しているようで、驚いたのは今でもきちんと歌手活動しているあたり。やはり歌が上手くて好きなのだろうな。





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フレ
Posted byフレ

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