バブリー全盛期の1980年代、何もかもが派手に、そしてハチャメチャなことも許された時代だったと今思い返してみるとそんな何でもありの時代だったのかな、と。こと音楽産業に於いても全く同じコトで、MTVが音楽業界を変えた、LAメタルがシーンに乗り出てきた、
マドンナ
のようなセックスシンボルがアイコンとなり
マイケル・ジャクソン
が優美な踊りを披露する、後半にはラップらしきサウンドが台頭してきたとこで
エアロスミス
が再復帰、本当に何もかもが派手で、地味なことなどひとつもなかったんじゃないだろうか。デヴィッド・ボウイですらスーパースター時代という今では思い返したくもない時期を過ごし、この時期、アングラなものはもちろんあったのだろうが、何もかもが派手だった…。


Solitude Standing
そんな中、1987年に静かに盛り上がったひとつの象徴があった。
スザンナ・ヴェガ
という女性の歌う質素なフォークソングだ。デジタル音楽とハードロックがチャートを占めている中、彼女は非常にシリアスな「

Luka」という児童虐待をテーマとした曲を送り込んでいた。こうした人間の本質についてシンプルに語り上げたサウンドを聴いた人々は徐々に浮かれすぎていた世の中の音楽シーンから急速に身を引くかのように彼女の音楽を真剣に聴くようになっていった。そんな、時代を切り裂いたとも言うべきアルバムが「
Solitude Standing」という彼女のセカンドアルバム。時代を考えてみると決して売れるべきモノでもないし、アルバムの中味だって特に売れ線の曲があるわけじゃない。しかし売れた。世の中上手くできてるなぁ、って思うひとつの契機でもあるな。
で、その「
Solitude Standing」、まずジャケットが何とも可愛らしいじゃないですか(笑)。一発で覚えるよね、こういうのってさ。それで最初に針を落とすとだな、いきなりアカペラが始まるんだよ。「え?」って思ったもんね、それは。しかも音のバランスが綺麗に取れたアカペラじゃなくってさ、バンドと一緒にやって、ボーカルだけ残したって感じのアカペラで、最初からアカペラを狙ったのではないってのは一発でわかるし、実際アルバムの最後にバンドバージョンが入ってるんだけど、とにかく最初のこの「

Tom's Dinner」っつうアカペラが衝撃的だった。何度も何度もこれ聴いたなぁ。その次にちょっと聞きかじったことのあった「Luka」が来てさ、おかげでよく聴いたよ。そうすると当時レコードだったからやっぱりまとめて一気に聴くわけで、どれもこれもがエレクトリック楽器色なんて全然なくって質素な音と共に彼女の歌声が淡々と聞こえてくるっていう作品。あくまでも淡々と、なんだよ。それが浮かれた時代と相反していて余計に魅力的に聞こえた。だから名曲ばっかり入ってるって思える作品で、歌詞の意味も重要な人だったんだけどそれよりもそのシンプルさが新鮮だった。
これも中古で見つけると多分500円くらいのハズだからリラックス用に聴いてみるのも一興かなと思うよ。アマゾンでも650円だしね(笑)。個人的にはアナログで聴くのに相応しいアルバムだと思ってるけどさ♪
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