Nirvana - In Utero

ロック史に於いて、シーンの流れを劇的に変えてしまうというインパクトを放つバンドやアルバムの登場ってのはいくつも挙げられるが、ほとんどの場合がそのバンドは短命に終わるというものだ。その人の命も、と言う方が正しいのかもしれないけど。そういうロックの悲劇的スターってのも神格化されて伝説になっていくことも多かったが、今の時代はそこまでは無いと思う。ただ、そういうアイコンの果たす役割は大きくあって、当然ロック好きな連中の会話のネタにもなるワケだし、その解釈の違いなんてのも出てきて面白い。
Nirvanaの3枚目のアルバム「In Utero」は1993年にリリースされているが、面白いことに前作の「Nevermind」ほどのインパクトは全く無かったようだ。それでも成功者として追いかけ回られ、精神に破綻をきたしていった天才肌が故、の悲劇は起きるのだが、このアルバムを聴いている限り、その後数年したらずいぶん落ち着いただろうなぁとも思う。ってのも、改めての話にはなるけど、時代が過ぎ去ってから聴くこのアルバムの出来栄えと存在意義ってのがどうも中途半端と言うか、当然ながら前作ほどのインパクトは放っていないし、それでいてグランジの雄と言われる中でのグランジって音の方向性を示唆しているものでもなくずいぶんと普通にロックアルバムしている作品に聞こえてくるからだ。
安っぽいギターを思い切り歪ませて静と動の対比による破壊力、ギターソロなんぞはなくただただパワーと退廃的なスタンスでファンを魅了していくしかないのだからそりゃいくつもバリエーションを並べるのも難しかろうと。結果的にギターソロも入ってくるし、曲構成だってそれなりに展開していくし、楽器演奏のテクニックには頼れないから結果、普通のロックバンド的な方向性になるのも分かる。パンクと同じ衰退を一瞬で辿っていった、とも言えるのかもしれない。それでも市場に残したインパクトは絶大だったんだが。このアルバム、当時もちょこっと聴いたけど全然残らなかったんだよな…。
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