Pink Floyd - Meddle



1971年の英国ロックは正に多種多様なサウンドの黎明期でもあると云える時代で、今だからこそ改めてあちこちのバンドの音を聴いてみると実に個性的且つユニークなサウンドに挑戦している姿が見えてくる。これは大物バンドだけに限らず今では消え去ってしまったB級バンドにも当てはまるもので、中には一作しかリリースされなかったバンドなんぞは山のようにあり、それが現代の日本では脚光を浴びているのも事実だ。そして今回はまたもや本来ならばアングラの帝王として君臨するはずだったのが、何故か国民的バンドにまでなってしまった超大物バンドの1971年リリースの作品を挙げていこう。
「おせっかい」=「Meddle」 by Pink Floyd
フロイドのアルバムで最初に聴くには何が良い?って聴かれるとかなり返答に困るものがあって、自分的には多分「炎?あなたがここにいてほしい?」とか「アニマルズ」を薦めると思うけど、それはあくまでも完成したフロイドの姿であって、生々しい模索していた時期のフロイドではないんだよね。先のデヴィッド・ボウイの「Hunky Dory」もそうなんだけど、未完成の頃の完成形でもあったアルバムは珠玉の輝きを放っているワケで、フロイドで言うならば多分このアルバムがその類に入るんじゃないかな。もちろん完全に出来上がったフロイドの世界の姿でもあるんだけど、実験を実験としてプレッシャーもなく行っていた最後の時期だし、自分たちがやることを回りが面白がっていたっていう時期。ここから先は回りが面白がるものを作ろうという形に変わっていったしね。もちろんロジャーが主導権を握る前の民主的なフロイドだった、ってのもあるが。
そうだなぁ、自分とこのアルバムの出会いってのは何だろ?もちろんブッチャーのテーマソングだった「吹けよ風、呼べよ嵐」ってのは別として…、っつうかそれがあったからこのアルバムは割と早い時期に取っ付いたってのはあるか。高校生くらいの頃かな。でも実際に音の面白さがわかったのはもうちょっと後、ハタチ前後の頃だと思う。その時は「エコーズ」の神秘さに惹かれてたから、まだまだだったよなぁ~、自分(笑)。いや、良いんだけどね、「エコーズ」ってさ、凄くハマりやすい曲だと思わない?決してポップじゃないんだけど、こういう長い20分にも渡る、大半が効果音にも等しいサウンドを聴いているだけなんだけど入りやすいんだよね。うわぁ~凄いな~このフワフワ感、心地良いなぁ~ってなれるんだよ。なりやすいんだよ。だから万人受けしたんだと思うし、そういう作り方を知っていたんだろうね。だからツボを得てヒーリングサウンドを作っていたってワケだ。故にあまり苦労しないですんなり入っていけたのが「エコーズ」。で、最初の「吹けよ風、呼べよ嵐」はさ、これも最初のベースのエコー音が強烈で何かが起きそうなイントロだから入りやすい。ギルモアのスライドもさすがにセンス良くって宙を舞っているしさ、ロジャーのベースもこういう時には本領発揮するし。最初期から効果音に近いベースの使い方が巧いんだよ。…とまぁ、このヘンは取っ付きやすいのでもちろん好きだけど、それ以外が結構時間掛かった(笑)。
「A Pillow of Winds」は、正にデヴィッド・ボウイの「Hunky Dory」と同じようなイメージの曲で、フォーキーなサウンドにシタールみたいな響きが入っているだけで、ボウイでもエアーズでもおかしくない。もちろんフロイドなんだけど、これがフロイドらしいかと言われても難しいな。アングラ英国ミュージシャンの奏でる音っていう絶対感はあるけどね。その代わりこの曲も凄く繊細で胸に響く曲で、薄氷の上を歩いているような繊細さがたまらないね。それに続く「Fearles」も基本的にフォーキーな音で、上昇志向のリフが曲のラインを保っていたり歌メロがきっちりと出来ているので聴きやすくはなっているけど、やっぱり凄く繊細。英国トラッドフォークミュージシャンがさらりと歌っていてもおかしくない曲で、別にフロイドっぽい所は特にないっつかそれこそがフロイドの真骨頂の部分かな。それがこのアルバムの「エコーズ」以外の曲が弱いとされてしまう所だけれど、実はこういう曲のセンスこそがフロイドの英国的なところで良いんだよな。「San Tropez」はね、今度は逆にフロイドっぽくなくって(笑)、ロバート・ワイアットあたりかな、こういうのは(笑)、っても、まぁ、どーでもいいんだけどさ。ほのぼのソングだね。んで、次に大好きな「Seamus」なのだ。ニック・メイソンの飼ってた犬だったような記憶があるけど、その犬が「シーマス」って名前で、その犬にこのアコースティックブルースのボーカルを任せているのだ(笑)。で、それがまた味のある曲に仕上がっているってのが面白いし、やっぱり実験的でさすがだなぁ、と。マジメに語られることはまずないんだけど、このバックで流れているブルースってのがやっぱり繊細な英国的なブルースでね、人間の歌じゃない方が良かったんだと思う。だから結構コレ、よく聴く(笑)。
ってなことで、ジャケは意味不明で中身ではどうしても「エコーズ」に話題が行きがちだけど、実は間に挟まれた楽曲群に価値があるアルバムなのだ、うん。
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