Pink Floyd - Meddle

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おせっかい ピンク・フロイド - ライブ・アット・ポンペイ - ディレクターズ・カット ピンク・フロイド ロンドン 1966-1967
 1971年の英国ロックは正に多種多様なサウンドの黎明期でもあると云える時代で、今だからこそ改めてあちこちのバンドの音を聴いてみると実に個性的且つユニークなサウンドに挑戦している姿が見えてくる。これは大物バンドだけに限らず今では消え去ってしまったB級バンドにも当てはまるもので、中には一作しかリリースされなかったバンドなんぞは山のようにあり、それが現代の日本では脚光を浴びているのも事実だ。そして今回はまたもや本来ならばアングラの帝王として君臨するはずだったのが、何故か国民的バンドにまでなってしまった超大物バンドの1971年リリースの作品を挙げていこう。

 「おせっかい」=「Meddle」 by Pink Floyd

 フロイドのアルバムで最初に聴くには何が良い?って聴かれるとかなり返答に困るものがあって、自分的には多分「炎?あなたがここにいてほしい?」とか「アニマルズ」を薦めると思うけど、それはあくまでも完成したフロイドの姿であって、生々しい模索していた時期のフロイドではないんだよね。先のデヴィッド・ボウイの「Hunky Dory」もそうなんだけど、未完成の頃の完成形でもあったアルバムは珠玉の輝きを放っているワケで、フロイドで言うならば多分このアルバムがその類に入るんじゃないかな。もちろん完全に出来上がったフロイドの世界の姿でもあるんだけど、実験を実験としてプレッシャーもなく行っていた最後の時期だし、自分たちがやることを回りが面白がっていたっていう時期。ここから先は回りが面白がるものを作ろうという形に変わっていったしね。もちろんロジャーが主導権を握る前の民主的なフロイドだった、ってのもあるが。

 そうだなぁ、自分とこのアルバムの出会いってのは何だろ?もちろんブッチャーのテーマソングだった「吹けよ風、呼べよ嵐」ってのは別として…、っつうかそれがあったからこのアルバムは割と早い時期に取っ付いたってのはあるか。高校生くらいの頃かな。でも実際に音の面白さがわかったのはもうちょっと後、ハタチ前後の頃だと思う。その時は「エコーズ」の神秘さに惹かれてたから、まだまだだったよなぁ~、自分(笑)。いや、良いんだけどね、「エコーズ」ってさ、凄くハマりやすい曲だと思わない?決してポップじゃないんだけど、こういう長い20分にも渡る、大半が効果音にも等しいサウンドを聴いているだけなんだけど入りやすいんだよね。うわぁ~凄いな~このフワフワ感、心地良いなぁ~ってなれるんだよ。なりやすいんだよ。だから万人受けしたんだと思うし、そういう作り方を知っていたんだろうね。だからツボを得てヒーリングサウンドを作っていたってワケだ。故にあまり苦労しないですんなり入っていけたのが「エコーズ」。で、最初の「吹けよ風、呼べよ嵐」はさ、これも最初のベースのエコー音が強烈で何かが起きそうなイントロだから入りやすい。ギルモアのスライドもさすがにセンス良くって宙を舞っているしさ、ロジャーのベースもこういう時には本領発揮するし。最初期から効果音に近いベースの使い方が巧いんだよ。…とまぁ、このヘンは取っ付きやすいのでもちろん好きだけど、それ以外が結構時間掛かった(笑)。

 「A Pillow of Winds」は、正にデヴィッド・ボウイの「Hunky Dory」と同じようなイメージの曲で、フォーキーなサウンドにシタールみたいな響きが入っているだけで、ボウイでもエアーズでもおかしくない。もちろんフロイドなんだけど、これがフロイドらしいかと言われても難しいな。アングラ英国ミュージシャンの奏でる音っていう絶対感はあるけどね。その代わりこの曲も凄く繊細で胸に響く曲で、薄氷の上を歩いているような繊細さがたまらないね。それに続く「Fearles」も基本的にフォーキーな音で、上昇志向のリフが曲のラインを保っていたり歌メロがきっちりと出来ているので聴きやすくはなっているけど、やっぱり凄く繊細。英国トラッドフォークミュージシャンがさらりと歌っていてもおかしくない曲で、別にフロイドっぽい所は特にないっつかそれこそがフロイドの真骨頂の部分かな。それがこのアルバムの「エコーズ」以外の曲が弱いとされてしまう所だけれど、実はこういう曲のセンスこそがフロイドの英国的なところで良いんだよな。「San Tropez」はね、今度は逆にフロイドっぽくなくって(笑)、ロバート・ワイアットあたりかな、こういうのは(笑)、っても、まぁ、どーでもいいんだけどさ。ほのぼのソングだね。んで、次に大好きな「Seamus」なのだ。ニック・メイソンの飼ってた犬だったような記憶があるけど、その犬が「シーマス」って名前で、その犬にこのアコースティックブルースのボーカルを任せているのだ(笑)。で、それがまた味のある曲に仕上がっているってのが面白いし、やっぱり実験的でさすがだなぁ、と。マジメに語られることはまずないんだけど、このバックで流れているブルースってのがやっぱり繊細な英国的なブルースでね、人間の歌じゃない方が良かったんだと思う。だから結構コレ、よく聴く(笑)。

 ってなことで、ジャケは意味不明で中身ではどうしても「エコーズ」に話題が行きがちだけど、実は間に挟まれた楽曲群に価値があるアルバムなのだ、うん。
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フレ
Posted byフレ

Comments 10

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けんじい  
ブルースを感じるプログレッシヴ

この頃の英国のギタリストはブルースに影響されてるのか、ギルモアのギターも「エコーズ」「狂気」などでブルースを感じるのはワタシだけでしょうか?

2007/01/08 (Mon) 23:14 | EDIT | REPLY |   
波野井露楠  

昨日、BSで94年のライヴの再放送してましたね!
フロイドは、なぜはシドのソロは聴き込んでいたのですが、フロイドそのものはあまり聴かずにいたんです(汗)。
なぜだか自分でも分からないのですが。
だから、今頃になって、ファーストとか狂気とかを聴いています(汗)。

2007/01/09 (Tue) 00:07 | EDIT | REPLY |   
evergreen  
'71年ものですね!

これはですね。私の場合はフロイドラストアルバムと名づけていますが、フレさんが結局同じ事書いてるんだよね。うまいね!
>実験を実験としてプレッシャーもなく行っていた最後の時期だし、自分たちがやることを回りが面白がっていたっていう時期。ここから先は回りが面白がるものを作ろうという形に変わっていったしね。
ここの部分だよね。初期派はここで一区切りかな?
何かこのアルバムはどれをとっても手作りという感じがして・・・私はフロイドの中では一番好きなんですよ。
エコーズの一番最後のスパイラルなテープの逆回し音・・・あれだけでもう感涙です、はい(てれくさい)

2007/01/09 (Tue) 00:39 | EDIT | REPLY |   
いたち野郎  

過去の記事を2つTBさせていただきました…よろしくお願いします。
あいや、これまた名盤が続きますね!吹けよ…でロジャーのベースがすんごくゴリゴリいってますが、ポンペイのライヴ見ると、コインみたいのでベース弾いてるような気がするんですよね。効果音的な音はこれに秘密があるのかも…。

ジャケ、自分も最近まで気づかなかったんですが、拡げて縦にすると人の耳に見えるみたいです(笑)

2007/01/09 (Tue) 02:29 | EDIT | REPLY |   
白熊店長  

e-291 フレさん、皆さん、こんにちは。
Pink Floydの良さを認識し始めたのが”Wish You Were Here”で、リアルタイムではピンとこなかったですね。
いまは初期の作品も好きなので、この”Meddle”も好きです。(笑)
けんじいさんが仰ってるBluesを感じる、に同感です。
>拡げて縦にすると人の耳に見えるみたいです(笑)
 本当だ。耳みたいに見えますね。
僕には原題の意味どおりに見えていたので、これは面白く感じました。
色々な角度から発見できるものですね。

2007/01/09 (Tue) 08:47 | EDIT | REPLY |   
papini  

アタシの中のフロイドって
すっごい微妙な位置でさ(笑
わりと最近のもいけたり、だからといって、初期も聴くし
んで、すっごい好きなのか?と聞かれると
「まあ、好きよ」程度の答えだし(笑
この音盤が、まさに「まあ、好きよ」的な音盤なんだよね。
いや、怒られそうだけど(笑
すごいバンドなのは百も承知なんだけど
シドはアタシにとって大きな存在だけど
まあ、複雑な乙女心、ってやつよね(笑

>ジャケは意味不明で中身ではどうしても「エコーズ」に話題が行きがちだけど、実は間に挟まれた楽曲群に価値があるアルバムなのだ、うん。

うんうん、そうなのよね。
アタシだけじゃなかったわ♪そういう風に思ってるの♪

2007/01/10 (Wed) 10:48 | EDIT | REPLY |   
オダ  

「吹けよ風、呼べよ嵐」のベースがすごくかっこ良くて好きです。
でも自分でコピーしてプレーしようとすると、ちょっと退屈してしまうかな。
自分としては、ベースを弾く楽しみというより、エフェクトをかけて音を創り込むのが楽しいんだろうなって思えるプレーなんですよ。

レコードの片面をごったまぜになった小品を集めて、もうひとつ面を組曲の形式にするってこの作品のアイデアはレコードという媒体ならではですね。
CDという媒体からは出てこない作品。
70年代ってレコードって媒体の特性を活かした作品が多くて面白いです。

2007/01/10 (Wed) 17:42 | EDIT | REPLY |   
jerry   
ブッチャー・・・

懐かしい~、タイガーマスク(佐山悟)戦の時、2試合続けて「四の字固め」でギブしたのメチャ印象に残っています。 あと、入場曲・・・プロレスのテーマ曲って誰が決めるんでしょうかね? 本人じゃないんでしょうけど凄いセンスを感じますよ。

エコーズは最近でたベスト盤では、5分くらい編集してあるんですよね~収録時間の関係でしょうか? あのベスト盤、ZEPのリマスター同様に曲順にかなりのこだわりが見えますね(もちろんジャケも!) まぁ、デイヴ主導の意図も見えますが。シドへの敬意もはっきり垣間見れるし。

辻仁成はフロイドの曲からバンド名を決めたそうですね。

2007/01/10 (Wed) 19:16 | EDIT | REPLY |   
Bono  
Meddle

をぉ!
フレさん、遂に「おせっかい」に来ましたね(笑)。

私、このアルバムなら一晩中語れますよ(爆)。
フロイドの中でも「原子心母」と同等に好きなアルバムです。

2007/01/11 (Thu) 00:12 | EDIT | REPLY |   
フレ  
ども♪

>けんじいさん
面白いのはフロイドってバンド名はピンクなんとかとなんとかフロイドっつうブルースメンの名前から拝借したもので、それを決めた時はギルモアさんいないんですよね。でもフロイド文化はそもそもブルースからって話で、具現化しちゃったのはギルモアがブルース好きなギタリストだったってとこでしょうか。でもギルモアさんってブルースは弾けないんですよね。それっぽく弾くのが巧いんですよ、だからフロイドサウンド。で、フロイドはブルースバンドなんです。プログレの中では多分唯一のブルースバンド。うん、面白いですよね…。

>波野井露楠さん
今から初期聴き始めると面白いと思うなぁ、羨ましい、あの面白さがこれから体験できるなんて…。

>エヴァ姉さん
初期派はここで一区切りでしょ♪ 手作り、そうだよね、なんかテープ切って作業してる姿目に浮かぶし、そういう意味ではマジメにヘンなものを探して叩いてるとかさ、ポンペイでも見れるけど真面目なアホやってるから面白いよね。

>いたち野郎さん
耳か…、そういえばそう見える…。そうなのか??う~む、納得した…。そっか…。

>白熊店長さん
これリアルで通った人はどういう風に受け止めたんでしょ?かっちょいい~聴きやすい~って思ったんだろうか?そうじゃないにしても一般ロックファンからは人気があったワケで…う~ん、そういうの知らないからなぁ。

>papini嬢
そうなんだ…、「まぁ、好きよ」なんだ…。分かる気がするが(笑)。多分ね、この音盤が未完成すぎるんだと思う。物足りないってのあるもん。いや、「エコーズ」聴いててそんな風には思わないんだけどさ、どこか未完成っぽいんだよね。まぁ、男心ってヤツだよ(笑)。

>オダさん
あ、そうそう、フレーズは大したことないのでエフェクトで迫力と効果を楽しむ…まぁ、はったりですな(笑)。そういえば、この曲構成はレコードらしいですよね。今はこういう作り方出来ないから可哀相ですよね。うん、だから最近のは面白くないのかな。

>jerryさん
ブッチャーがタイガーマスクとやってた試合?新日で?う~ん、それよりもフォークでテリー・ファンクを突きまくってた方が印象的だった…。テーマ曲は誰が決めるんでしょうね。本人が知ってればそうなるでしょうけど、オリジナルの音楽使ってるのもあるし…パワーホールとは凄いかっこいいもん。高田の最終期はイングヴェイのオリジナル曲だったしね。えっと…、何だっけ(笑)?辻さんか、作家のね♪ エコーズ、バンド名の割に熱い歌ばっかでしたなぁ…。

>Bonoさん
あ、その辺の方が好きなんですね♪ 「原子心母」、これもいいねぇ…。

2007/01/11 (Thu) 23:13 | EDIT | REPLY |   

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