Cheap Trick - At Budokan



アメリカンハードロックの灯火は70年代初頭より着実に育ちつつあり、キッス、エアロという次世代を担う代表的なバンドも着実に実力を付けつつ、往年のグランド・ファンクも頑張りつつと云った状況で75年を超える頃になると多種多数のアメリカンハードロックバンドがシーンに存在するようになってきた。当然ながら英国ではその波に陰りが見え始め、プログレッシヴロックの衰退=ハードロックの衰退とも連動し、「ロックは死んだ」と叫んだパンクが奇しくもロックを救ったという状況だったが、アメリカではハードロック復興、そしてサザンロックも定着し、70年代中盤からはブラコンからディスコ全盛時代へと進む。そして、パンクの遠吠えどこ吹く風と云った煌びやかな世界が蔓延する。
そんな中、第二世代…とまでは云わないけどシーンにちょっと遅れて登場してきたのがチープ・トリック。四人バンドで二人が超美形のルックスで、残り二人はコメディアンみたいなアンバランスなバンドで、あのジャック・ダグラスに見い出されて1976年にアルバムデビューしたが、これがまたアメリカ国内ではさっきのようなシーンの状況だったため全く相手にもされず、思い切りハズしたバンドだった…、が、そこが運と実力なんだろうなぁ、我が国日本の女性ってのは本当に世界のかっこ良いミュージシャンに対して素晴らしい審美眼を持っているらしく、チープ・トリックはデビューした直後くらいには日本で凄い人気を誇っていたようだ。そこで彼等は本国ではやったことのないような大きな会場=日本武道館でライブを行うこととなり、それは、ってことでレコーディングを行って日本のファンにはライブアルバムとしてお返ししようってな段取りになったワケだ。で、リリース後にそのライブアルバムから「甘い罠」がラジオで流されて、全米で一気に火が点いたっつうオチがついて今の彼等があるみたい。
う~ん、「at 武道館」って凄い有名だもんな。彼等の作品があったからこそ有名になった武道館ってのもあって、アルバムもやっぱりコンパクトに纏められている。今では二枚組のデラックスエディション的なのもリリースされているけど、やっぱオリジナルのジャケットのヤツでしょ。滅茶苦茶ポップなロックバンドっていう位置付けで、全然ハードじゃないのがウケたのかもしれない。オリジナルアルバムではセカンドの「蒼ざめたハイウェイ」が一番好きかな。キャッチーでポップな中に適度にハードな路線が入っているし、次の「天国の罠」になるともっと甘ったるくなっちゃうからね。
ま、そんなことで、エアロスミスと似たようにメンバーの脱退から再生失敗、そして解散、更にオリジナルメンバーでの再結成により今に至る、みたいなことをしているバンドでそれでもヒット作をまた出して今のファンにもしっかりと根付かせているって云うのは凄い技。70年代の王道バンドは皆そうやって生き延びている事を考えると、このバンドも十分にその機能を果たしている。
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