U2 - The Joshua Tree

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U2 魂の叫び
 イーノがプロデュースした作品の中で最も世界的に評価されたアルバムと云えばU2を於いて他にないだろう。ボウイのはトニー・ヴィスコンティがプロデュースしていてイーノはプロデューサーではないらしいので(笑)。ま、そんな戯言はヨシとして、ある意味もっともイーノらしくないプロデュース作品とも云えるかもしれないな。

U2 - The Joshua Tree

 だがしかし、確実に以前までのU2+スティーヴ・リリーホワイト達だけでは出せないサウンドの重さと価値がにじみ出ているのはイーノの見事な触媒技の成せる仕事ぶりとしか思えない。U2の限界を遙かに超えた最初の作品で、その導きは絶対にイーノなしではあり得なかった。それが故に本アルバムと前作「The Unforgettable Fire」でのイーノとのコラボレーションはロック史上に於いてもこれほど成功した例はあまりないんじゃないかと思うくらいに独自の、そしてU2の世界を築き上げている。

 オープニングからイーノの世界が創られていて、ここだけを聴いていたら果たしてどうなるのか、何が始まり何が終わりなのかわからくても不思議はないサウンド…期待されるサウンドから始まる。そして静かにエッジの独特のギターサウンドが刻まれてからバンドの音が奏でられ、期待感たっぷりのところでエコーたっぷりのボノの十分に説得力のある歌声が聞こえてくる…、これほど地に着いたサウンドを奏でていたアルバムはここまでのU2にはなかった。そしてこの名曲「U2 - The Joshua Tree - Where the Streets Have No Name 約束の地」も素晴らしい…。腹の底からエネルギーをもらうような、絶対的に自分を信じるようなこの曲の持つパワーは他にはまず見当たらない。そして「U2 - The Joshua Tree - I Still Haven't Found What I'm Looking For I Still Haven't Found...」も同様に寒いU2サウンドを奏でてくれる。こちらはボノの叫びが中心になり愛を感じさせてくれる名曲。う~む、全くこのあたりだけを聴いていればイーノの影など感じることはほとんどなく、これこそがU2だ、とリスナーに思わせてしまうあたりがイーノの才能の凄い所なんだろうなぁ、とひねくれ者的解釈(笑)。が、やっぱり素晴らしい曲なのだ。でもね、途中途中でジャカジャンッとアコギが入ったり、やっぱエコー類の入れ方が全然気合い入ってて他にはない残響感だもん。ただでさえエッジのギターってのはそういう音なのにそれが実に美しくバンド全体に用いられている、だからU2サウンドの核が出来上がった作品なんだね。

 んでさ、「U2 - The Joshua Tree - With or Without You With Or Without You」…、コレ、初っ端のベースの音から最高にかっこいいよ。隙が見当たらないくらいにかっこ良い曲でボノの歌い方も全てを振り絞ってるし、全体の雰囲気やエッジのサウンドドラムのひとつひとつが重さを感じられる素晴らしい楽曲。U2の中でもロックの中でもかなり好き度が高い曲だなぁ。言葉で語れません、これは。終盤のボノの叫び声なんてもう最高。ポリシーと意思をはっきりと力強く感じるね。次の「U2 - The Joshua Tree - Bullet the Blue Sky Bullet The Blue Sky」はがらりと変わって昔のU2的なラフなドラムサウンドから始まるんだけど、これも凄いポリシーを感じるよ…、そういう姿勢を思い切り音で示すことになった必聴のA面だね。うん。

 B面もね、その重さとかは変わらないんだけど初っ端の作りとはちょっと違う。多分楽曲の練り具合だと思う。バンドのテンションやボノの叫びはそのままだからさ。でも全部が全部名曲にはできなかったんだな、この頃は。そもそもがこのアルバムはU2がアメリカで感じたことを元に作っている面もあるのでブルースやゴスペルに忠実なものもあったりするんだけど、それがアイルランドのパンクス風にアレンジされちゃうんだから面白い。だからやっぱ独自のものに仕上がっているって意味ではU2らしいね。ただその分悲愴感みたいなのが消えちゃってるのが勿体ない。ま、いいさ。そういうものも含めて2000年に再帰アルバム「All That You Can't Leave Behind」っつうのが出てくれたからね。

 そうそうこの「The Joshua Tree」ってアルバムは本人達もターニングポイントとしてしっかりと捉えていたためか、「魂の叫び」という映画にその想いを込めてあったり、制作秘話暴露番組のDVD「ヨシュア・トゥリー」なんてのもあったりするので多方面から分析できるのも今の楽しみになるだろうね。いや、それくらいやる価値十分にあるくらいの名作。もうちょっと寒くなった季節には丁度良いね♪ あ、来日するんだよね? 見に行きたいけどなぁ…検討中♪

U2 - The Joshua Tree The Joshua Tree
U2 - The Unforgettable Fire The Unforgettable Fire
U2 - All That You Can't Leave Behind All That You Can't Leave Behind
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フレ
Posted byフレ

Comments 9

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いたち野郎  

ヨシュアトゥリーってイーノのプロデュースだったんですか…それを知ったら知ったで、やはりイーノの音という感じがしないです…。
とにかくフレさんのおっしゃってる重量感みたいのは凄すぎますね。ベースイントロなんかも、同じ単音を8ビートで弾いてるだけなのになんでこんなにカッコいいのか、と。
実はあまりB面の終わりまで聴かないんですよね。今度はオシマイまで聴いてみようかな…。

2006/10/01 (Sun) 01:03 | EDIT | REPLY |   
リュウ  

明らかに抜け出た、そういう意味で重要な作品でしょう♪魂の叫びは何度見たことか、わかりません。
1番のお気に入りは、この映画のヴァージョンのBullet The Blue Sky♪
U2流Blues Rockという感じで、実際最近の映像見ると、エッジ、ソロ弾きまくりです。これが70年代していて、
いいんですよ♪

2006/10/01 (Sun) 06:39 | EDIT | REPLY |   
einnonti-H  
もう片方

U2のどっぷりエコーはイーノよりもう片方のエンジニアがかけております。イーノは音色指示派でU2の後期音作りに決定的な個性を植え付けました。リリーホワイトの荒いパンチのある音を消し空間を生かす音に変身させました。

U2のレコはとてもユニークです。
ライン直接録りの他にあのドップリエコー(正確にはゲートリバーブ)はなんとモニタースピーカーを数本立てその音も広いミキシングしているものです。そのモニタースピーカーは意外と安価なものですがイーノの音質決めがマジックとなります。他、実はバリバリ最新鋭のマシン類を使用しています、彼ら。イーノと組んだ事により妥協許さずという制作精神を得たと某USA誌に答えておりました。

尚、近時のU2ツアーのあの演出はフロイドチームが関わっています。

昔も今もU2はパワフルで芯のある素晴らしいバンドと思っています。

2006/10/01 (Sun) 08:00 | EDIT | REPLY |   
gack  

METALLICAは前作のプロデュースにイーノ(かDr. DRE)を抜擢させるんじゃないかという話があったけど、結局どっちもなく、ボブ・ロックのままだった。
U2と言えばライヴエイドでボモが学生服で出てきたこと、これが強く印象に残っている。

2006/10/01 (Sun) 10:58 | EDIT | REPLY |   
Shinyan  
名作中の名作

もう。語ること無し・・・

でも・・・ちょっと・・・
バランス良くまとまったのはヤハリ
プロデューサーの手腕なんだろうね・・
相性はあるけど・・・

今度は上手く行かなかったプロデューサー特集はどう???

2006/10/01 (Sun) 19:50 | EDIT | REPLY |   
オダ  

確か前作の「The Unforgettable Fire」からイーノと組んだあたりから音が変わりましたね。
リリーホワイトの固いメタリックな音もいいですが、やはり売れるという点では「焔」「ヨシュア・トゥリー」の音なんでしょう。
個人的にはこの時のツアーを収録した映画が大好き。
ライブの魅力にやられたってバンドです。

2006/10/02 (Mon) 22:17 | EDIT | REPLY |   
フレ  
多数コメント感謝♪

>いたち野郎さん
うん、でもどこか納得する重さがあるでしょ?ホントにあの単音ベースが滅茶苦茶かっこいいってどういうこと??ってくらい印象的でさ。確かにB面最後まで体力持たないってのもあるけど、結構面白い、と思える時もある(笑)。

>リュウさん
うん、抜け出た。あの映画は生身でかっこいい、あれでU2っていうバンドの姿が見えたってのあるかなぁ。最後にさ、殉死者の名前をつらつらと語りかけるボノの姿勢ってのがねぇ…、いいんだけどさぁ、やりすぎ?みたいな。それよりもあの映画ではゴスペル版の「I Still...」が印象的♪

>einnonti-Hさん
おぉ~、そうでしたか!エコーの指示もイーノかと思ってました。確かにリリーホワイトのは荒々しい音でよかったけど、バンドの真髄を引き出したのはイーノのこの作品からですね。モニターの音も混ぜるってことは凄く立体的な音になりますよね、多分。ジミー・ペイジさんがファーストの録音の時空間音をもマイクで捉えてミックスしてたってのは読んだことありますが、それを凌駕する音の料理方法ですなぁ…、さすが。そして今ではフロイドチームの演出ですか…。日本公演行きたいな、やっぱ(笑)。

>gackさん
メタリカとイーノだったらどんなんだっただろう?結構聴いてみたいかも(笑)。ライブエイドの学ラン姿は面白かったですねぇ。なんか説得力あったのも不思議ですが(笑)。

>Shinyan
ハズしたプロデューサーか…、誰がいるかな…。それかなり難しいぞ(笑)。

>オダさん
うん、音がガラリと変わって世界的なバンドの音になってるように感じますね。生で見てたらかなり影響を受けるバンドなことは間違いないでしょう…。まだ見たことないんですよね…。だからかなり見たい(笑)。

2006/10/02 (Mon) 23:12 | EDIT | REPLY |   
森山ネム太郎  
名盤ですね・・・

グラミーを二回受賞しても、このアルバムを超えているのかな~。
そんな気がしますよ。
CDから録ったテープがのびるくらい聴き倒した時期がありました。
ギターの音にとらわれ過ぎていましたけれど、ドラムとベースの音があんなにカッコいいとは・・・歴史的名盤ですね。

2006/10/09 (Mon) 11:27 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>森山さん

グラミーなんてアテにもならないでしょ(笑)。歴代グラミーのアルバムを誰でも云えるくらいのブランドがあれば別だけどね。うん、しかし単音でかっこよさが出せるバンド、そうそうないですよね。

2006/10/09 (Mon) 18:01 | EDIT | REPLY |   

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