The Doors - Waiting For The Sun

時代的にはサイケデリックが流行していた頃だが、そんな流れとは全く無縁に孤高の道を歩んで別のファン層を確実に増やしていったカリスマ、ジム・モリソン率いるザ・ドアーズ。どうしてもドラッグと密接に関連してしまうバンドのイメージだが、それは音楽というよりも後に作られたオリバー・ストーン監督による脚色たっぷりの映画と、その前の超カルトムーヴィーに位置付けられる運命にある「地獄の黙示録」による連鎖反応…、あ、これは自分の場合のお話。
話逸れるけど映画「ドアーズ」は結構真に迫ってて面白かった。部分部分の描写が随分と脚色されてたけど、本質的にはこういうバンド、人、だったのかなぁと思い描きやすいものだった。それよりも「地獄の黙示録」の冒頭で「The End」が流れる中、ホンモノの死体を使った映像が静かに流れて来る。そして、この長い長いおどろおどろしい話が終わった後にまた流れてきて、壮絶な映像と狂気じみたサウンドがぴったりと合っているので凄く印象深かった。一時期結構そういうザ・ドアーズにハマったね。
一夜にしてカリスマスターダムにのし上がったファーストアルバムが印象深いけど、今回は三枚目の「Waiting For The Sun」で行ってみよう。コレもヒット作「Hello I Love You」と言うポップでキャッチーなヒット曲が初っ端から入っているので割とメジャーなアルバムと思いたいけど、実際はどうだろう?一般的にはベスト盤でお得に聴いておしまいってのが多いのかな。余談だけどベスト盤ってやっぱ自分的にはあまり好ましく聴かない。全部集めた後にベスト盤聴くなら分かるけど、最初にベスト盤を聴くのはどうもよろしくないと思ってる。でも、普通は最初にベスト盤かな。それは可哀相と言うか勿体無いと言うかね。余談はさておきこのアルバムはドアーズの面白さが熟成してきた頃の作品で、質的に面白い。好きなのは大作「Not To Touch The Earth」で、以前も書いたかな。「Celebration Lizard」の一節だけど、実に印象的で躍動感あって他の曲のポップさとはちょっと異なってるジム・モリソンのカリスマ性が炸裂って感じで説得力ある。そういう意味では「The Unknown Soldier」も同じかもしれないが、多分「The End」と「When The Music Is Over」みたいな重い暗さだけではなく、キャッチーな部分も入っている点が迫力を増しているあたり。このバンドは皆ジャズ畑の人で構成されているので演奏が単調なロックに成り切れないのもユニーク。
ちなみにセカンドアルバム以降はしっかりベースが入っているのでベースレスのバンドではなくなってるのも必然からだろう。しかし、実に多様な楽曲が詰め込まれていてジャンルを跨ったサウンドを持っていたバンドだなとつくづく感じる。「Wintertime Love」のワルツ形式でのジャグバンドみたいなところもあれば「Love Street」みたいな可愛らしいポップもあって且つ素晴らしく透明感のある「Spanish Caravan」もサラリとこなしてる。このフレーズ好きだな…、スパニッシュの旋律ね。そういうのがしっかりと3分間ポップスとして確立されているのもドアーズの凄さ。もうちょっと時代が遅かったらどれもこれも5分から10分くらいの曲になっちゃう要素は持ってるから。でもアメリカのバンドだからそうはならなかったかも。更には随分と宗教じみたと言うか何となくインディアンの部落の集まりから聞こえてきそうな呪術的メロディとサウンドの「My Wild Love」もある。「We Could Be...」でまた超ポップに戻ってきて「Yes, The River Knows」では伝統的なピアノによるバラードに舞い戻って来る。この曲が単独でラジオで流れてきたら万人が良いいね、と言う感じの歌モノ作品。良いな、これ。最後は「Five To One」だが、このアルバムで一番ザ・ドアーズらしいかもしれない。実にイメージ通りの曲。しかし実際は逆に、このアルバムではこの曲が異質な曲とも映る。
基本的にザ・ドアーズはブルースバンドだ。そこにレイ・マンザレクの鍵盤が入って来ると滅茶苦茶ポップで煌びやかな音に仕上がり、ジム・モリソンの歌も可愛く歌う場合と思い切り地を這う歌になる場合とがある。アルバムだと前者が多いだけみたい。最後まで書かなかったけど、ロビー・クリーガーのギターはロックギタリストからは理解出来ないギターフレーズが多くて、やはり育ちが違うフレーズが満載。それで不思議な雰囲気がたくさん出ているのだろう。ドラムもジャズ畑だからちょっと違うし、まだロックが完成されていなかった時代にここまで洗練されたアルバムをいくつも作っていたこのバンドは単なるカリスマのバンドではなく、その実力が評価されるハズだが、それでもジム・モリソンのいなくなったドアーズはつまらなかった。
ちなみにこの「Waiting For The Sun」は自分的にはドアーズのスタジオ盤の中では二番目に好きな作品です。
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