The Rolling Stones - Let It Bleed

1969年、今や大御所となったストーンズも動乱の時期を迎えていた。バンドのリーダーでもあったブライアン・ジョーンズはヤク漬けになっていて全くその才能が使い物にならなくなっていた時期、そして次なるギタリストを求めていたのもあり、またそんな雰囲気の中バンドはどうやって前進していくかが課題だった。そのためか前の作品「Beggars Banquet」で見い出していた泥臭いブルース路線からもう少しカントリーナイズされたサウンドを狙ったと思われる超傑作となって出来上がった「Let It Bleed」をリリース。今でもストーンズの全カタログ中で最高のロックアルバムとして語られることが多い。
もの凄いゲスト陣を迎えているから、ってのもあるけどそれよりも何よりも曲が良いんだよ。ちなみにゲスト陣ってのはご存じのようにライ・クーダー、レオン・ラッセルといったカントリー畑のミュージシャンからこの時にはアル・クーパーまでが参加。この時期のアル・クーパーと言えば名盤「スーパー・セッション」でもわかるように滅茶苦茶脂の乗っていた時期で、それこそ引っ張りダコだったんだろうけど、ちゃっかりとストーンズの要請には応えているところが職人。でもって、肝心のブライアンはほとんど参加できていないっていう…、まぁ、あんまり追求したことがないけど。それよりもこのアルバムの持つストーンズ的サウンドの確立がとってもかっこよかったから良いのさ♪
初っ端からやってくれるよね、ストーンズのアルバムは大体どれも一曲目にそのアルバムで一番かっちょいいロックンロールを持ってくるのが王道パターンだけど、このアルバムでの最初は「Gimmie Shelter」だ。イントロの不思議なギターサウンドから始まるこの曲、もの凄く悪魔に魅入られたような緊張感というのか雰囲気というのか空気が漂っていて、鬼気迫るものがある。単に名曲と片付けられる代物ではなくて、そういうマジックが見える。もちろんミックの歌い方も凄いし、中盤のキースのソロだって妙なトーンでそれを手伝っているけど、それよりも何よりもこの曲のハイライトはその後に出てくる叫ぶような女性コーラスパートで、これが更に曲を狂気じみたモノにしている。全然関係ないけど聴いてると映画「地獄の黙示録」を思い出すんだよ。あの雰囲気。ホントは「悪魔を哀れむ歌」でそう思うべきかもしれないけど、なぜか「Gimmie Shelter」で思い出す。今でもライブのハイライトでリサ・フィッシャーが歌いまくっているのかな、これがまた凄い歌声だったな。だから自分的にこの曲はストーンズの中でも多分1、2を争うくらい好き。そんな緊張感のあるサウンドの後に出てくるのが、「Love In Vain」。ただ、それも実に英国的サウンドになってるトコがストーンズらしい。元はロバジョンだけど、全然違うし、もうこれはストーンズの曲。更に、これはまたえらく懐古的と言うか、情緒のあるサウンドで、スライドギターのとろけ具合とバックのライ・クーダーのマンドリンが好き。アメリカ的サウンドを狙ってるけど、やはり湿っぽい音になるのが良い。次の「Country Honk」は効果音のクラクションや、これ何の音だろ?バイオリン?と言うかフィドルの音色と旋律がかっこ良い。ホントにカントリーチックなアレンジの「Honky Tonk Women」になってて驚いたし、ああ、こうしたかったのかな、と。このアルバムの最後にでも「Honky Tonk Women」を収録すべきだったよ、といつも思う。しかし、このサウンドはホントに新鮮でかっこ良いし、よく出来てる。結構どういう作られ方になってるかっての気になったモン。そして渋いベース音のリフからスタートする「Live With Me」。曲そのものは大した事ないけどこのグルーブ感はこのバンドしか出せないし、ビル・ワイマンのベースが実はグルーブ感の源でもある、みたいな感じがするのも面白い。ボビー・キーズのサックスはいつものことながら気持ち良いし。そして、アルバムタイトル曲「Let It Bleed」。これはねぇ、ミックの歌メロがミックらしい。もちろんグルーブもキースらしいし実に面白い。こういうカントリータッチのロックンロールになるとアコギで弾いてるくせに、しっかりロック出来てる。どこからどう聞いてもクラブバンドのサウンドで、ピアノとアコギと歌、みたいな感じだ。これがストーンズの面白いところで実はあんまり歪んだ音で弾いてるのが多くなくて、アコギの方が多かったりするんじゃないかな。でも世界最高のロックバンドなんだよ。そんな代表的なサウンドで、だからこそのアルバムタイトルなのか。聴いてると凄く盛り上がってくるのは後半のスライドとホンキートンクなピアノだね。いいよなぁ、このアルバム。
A面終わったトコロでいつものようにアルバムジャケット論だけど、このアルバムのジャケはそんなに面白くは見えないよね、一見。アイディアは良いけど、ストーンズって結構無頓着なんだよな、ジャケットって。とは云え一番過度期でもあった頃か。
さて、B面へ行こう。もう定番中の定番になってしまた感のあるストーンズアドリブブルースの決定版、「Midnight Rambler」がここで登場。これはギターのリフから始まるけど、音使いはともかくこのノリが独特でコピーするのが難しい。でも、凄くカッコイイノリで、聴いてると徐々に気分が高揚してくるんだよ、まるでホンモノのブルースのように。いや、ホンモノなんだよ、実際。それがやはり凄くて、何度も聴き入っちゃうしハープが引っ張っていくってのも面白くて。そして音はどう聴いてもロックンロールなんだよ。やっぱすげぇよ、ストーンズ。まぁ、この辺のはライブ盤で聴くに限るけど、このスタジオテイクもまったくライブ感があって、素晴らしい。次に出たアルバム「Get Yer Ya-Ya's Out!」でミック・テイラー入れた後の絶頂期のストーンズのライブ盤があるし、そこでもコレやってるので聴いてみるべし。う~む、ストーンズのライブ感の醍醐味がしっかり味わえる傑作。続く「You Got The Silver」、これだけはかなり無名の曲だが、一言で言えば滅茶苦茶渋い曲。カントリー的な雰囲気での静かな曲だけど、やはりギターの絡みと歌が面白い。ここでももちろんスライドが大活躍だが、ある種他人に委ねてる面が大きいのかも。ま、いいや、次行こう。こんな歌誰が本気で歌うんだ?って思うくらい単刀直入な「Monkey Man」。「I'm A Monkey~!」なんてミックが歌ったらシャレにならんだろ、と思うんだが、マジにやってたんだから凄い。キースもこんなにかっこ良い曲なのにこんな歌詞付けさせるなよ、と勝手に思うが、あまり気にしてないのかな。歌詞はともかく、サウンドは滅茶苦茶かっこいい。ギターのリフで引っ張ってって、ピアノで色つけて、でもやっぱミックの歌が美味しいところを持っていく、みたいなさ。B面後半だからダレるハズなんだけど、全然そんなことなくて、より一層気合い入っちゃうくらいの曲だ。そして最後を飾るこれも超名曲「You Can't Always…」邦題「無情の世界」だっけ?アル・クーパーさんのフレンチホルンが心地良いけど、やはりこれもアコギロック、と言うか、ある意味プログレッシヴだ。一介のロックバンドが奏でる単なるロックなんてのはもちろん超えていて、アルバムの最初にイメージを持った悪魔的緊張感や空気からすると全てから解き放たれたような広がりのある曲で、それぞれの楽器が複雑に絡み合っている中で、単なるフラワームーブメントで時代が何となく閉塞的な面を見せていたのとは全く異なる、正反対の前を向いた、そして未来を見せてくれるようなアレンジが素晴らしい。ゴスペルのようなコーラスもどこかそういう開放感を手伝っている。凄いなぁ、これはホントに。
どの曲もきっちりと出来上がっていて楽曲レベルがとんでもなく高いので際立っている作品。この時期のストーンズは怖いモノなしで、例えクリムゾンが出てこようがビートルズが「Abbey Road」出そうがZepがハードロックやろうが全く関係ないところで勝負してる凄いサウンド。このアルバムはその代表格。そしてブライアンがクビになり、直後に死んでしまうワケだが、色々な意味で素晴らしいライブとなったハイドパークコンサートはDVDでもリリースされているので必見。最近リマスターされて出たのか、曲が増えてるのでこの方がよりお得かもしれん。それとライブアルバム「Get Yer Ya-Ya's Out!」も絶対に聴くべしアルバム。熱いライブです、ホント。
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