The Beatles - Abbey Road



1969年のアルバムヒットチャートが語られる時、必ず言われるのがビートルズの「Abbey Road」を蹴落としたのがクリムゾンのファーストで、その後タイトルを取ったのがツェッペリンのセカンドアルバム、と言うことだ。何かの記事でどこの何のチャートでクリムゾンがビートルズを蹴落としたのか資料検証していたのだが、見つからなかったというものだ。しかしその宣伝文句だけは一人歩きしていて、実際にはかなりローカルなチャートの話だったのではないだろうかというコトらしい。自分で調べてないから知らないけどね(笑)。
そうだな、自分にとってビートルズってのはそんなに強い思い入れはないし、特別なんだけど特別視しないようにここでは書き連ねてる…そう、作品のひとつとしてね。今回もそれは同じだし。1960年代末~1970年初期というロック混乱期を切り取ってみるとこの「Abbey Road」というアルバムはかなり傑出しているし、恐ろしいことでもあるんだけどクリムゾンのファーストアルバムに見られる構築美が「Abbey Road」でも見られるということで、今に始まったコトでもないけど、デビューしたての新人バンドとポップス界の重鎮が同じクォリティ以上のモノをシーンに出してくるっていうのはやっぱり凄いよな。英国って深い。
で、「Abbey Road」だ。正直に書いていいかな(笑)?ま、辛口書くの楽しみな人もいるだろうし、不快になる人もいるだろうから、ビートルズ信者で彼等の全てが神だと思っている人はちょっと読まない方が良いかもしれないなぁ。いいや、好きに書こうっと♪あ、一言書いておかないと大きな誤解を招くので…、この「Abbey Road」は彼等の作品の中でも上位三枚にあげられるくらい大好きな作品です。
まずねぇ、リンゴの曲なんかどうでもいいから最初から飛ばす。A面に於けるポールの曲も嘘臭くてちと拒否反応。あ~、もっと具体的に書いていこうか(笑)。「Come Together」からね♪これはさ、やっぱりジョンの独自解釈ロックナンバーで何がカッコイイかって云うと、気怠そうなリフの中に含まれる「シュッ」っていう声の使い方がいいんだよな。ヴォーカルが奥に引っ込んでるのがちょっと勿体ないし、もっとハードロック的な音で録音されても面白かったでしょう~って思うけど、やっぱ曲の持つ雰囲気が凄く独特でね、特に中盤、後半のギターソロ部分と曲中との雰囲気の違いが面白くてね。大したことしてないけど何か感じるモノがある。うん。「Something」…ジョージでしかあり得ないバラードの名曲…この人の場合は弱々しさが売りになっていて、それがモロに出ているんだよね。だからどうしても感情移入しちゃうし、ああいいなぁ、と思わせちゃう。Bメロあたりの「I don't know, I don't Know…」あたりはやっぱ良い曲だなぁって。そこに続くソロも何かコピーしたくなるような繊細さがあって、自分的には弾けないなぁって思うトーン。「Maxwell's...」冒頭の理由で論外(笑)。いやぁ、キャラとしてはいいと思うけどさぁ、俺、だめ、こういうの(笑)。「Oh Darling」、これがね嘘臭いんだよな。これなら曲作ってジョンに歌ってもらえばいいのに。その方がかっこよくなるのわかってるのにさ。ま、この頃みんな仲悪かったからしょうがないけど。努力は認めるけど、いいかどうかは別だよ。う~ん、天下のポールにそんな文句云ってどうすんだって?ま、独り言さ(笑)。「Octopus's...」これも上記理由で論外。冗談にもならないよな、これ。「I Want You」はさ、まずイントロの雰囲気たっぷりのアルペジオと短いギターソロ音と曲が始まってからのギャップがヘンだよね。しかしこういう曲の雰囲気ってのはジョンだからかね?トリップしたような気怠さっつうか、そう言う意味では時代を進みすぎてる部分ある感じ。でさぁ、このベースラインって凄いんだよなぁ、ポールのベースってやっぱ凄いかっこいいし歌ってるし音と上手く絡み合ってて気持ち良い。そこにジョンの「Heavy~~~」っていう叫びとか、マイルドなトーンのギターソロ…、これ、ジョンなんだよね?あ~、いいギター弾くねぇ…。なんとなくバンド感が感じられる曲で好きだな。実際は知らないけど、そう感じる曲。「Here Comes The Sun」、これもジョージのいい曲だよね、うん、ビートルズらしいとも云える。コーラスワークもらしいし、曲のポップさとか可愛らしさがね、ようやくジョージがこのレベルに追い付いたっていうのかさ(笑)、ま、あとはやっぱ12弦ギターの音色が綺麗に鳴っているのでなんとなく英国の湿った庭から見える朝の明かりっていう雰囲気が出てて、ストリングスも隠し味でうま~く聞こえてきて、英国的ってところで凄くいい。でもって実にプログレッシヴと云うかどうやったらこういうコードの鳴らしかたを思い付くのか…「Because」ね。ちょっと歌メロ違ってたら完全にプログレバンドの小曲に加えられるようなセンス…これが日本人のセンスかね?…ん?ああ、ピアノ弾いてるのヨーコさんでしょ?曲作りはジョンか。もう完全にプログレッシヴ。
そうだなぁ、やっぱ嫌いなものもあるが好きなものも多くて、このバンドのメンバーに対する好き嫌いってジョン、ジョージ、ポール、リンゴだもん。2位3位の差は凄くあるんだけど(笑)。あぁ、一般常識化されているアルバム論評は全く触れてないのであちこち探してみて。いっぱいあるし、総論で書かれていたり各論で書かれていたりするから。うん、ウチは好き嫌い論(笑)。
さ、このアルバムの真骨頂でもあるB面、これこそが「Abbey Road」の醍醐味。A面の細かい好き嫌いなんぞはどうでもよろしい(笑)。そういう聴き方するヤツもいるっていう程度にしといてください。ここからのB面メドレーが最強なんです。今でもまだバンドでやったことなくって、その要因は単に自分がマジメにコピーしないからというだけの理由そうなのだが…、いや、もちろんバンドでも無理だろうけどやってみる、っていうレベルにまでしてないのはそのせいだろうなぁ、まあ、いつか、ね。話が逸れた(笑)。うん、アナログの時はどこで曲が変わるのかっていうのもあったけどCDになってからはっきりしちゃったのでそこは良しとして、「You Never Give Me Your Money」から始まるメドレー、うん、複数の曲が絡み合って繋ぎ合わさっているもので、後のクィーンの「Bohemien Rhapsody」あたりでこういう手法は更に拡大されるんだな、効果覿面。パーツパーツの良さが引き立ってるからそれだけでドラマティックに仕上がってるもん。で、ベースから始まる「Sun King」…、やっぱりこの頃のジョンは何か違うモノが取り憑いてる…。アルバム「Hey Jude」のジャケットって知ってる?4人とも髭面なんだけど、ジョンだけはキリストみたいに引き立って浮いてるんだよね、そんな感じにやっぱちょっと違うわ。しかしこの曲も完璧なプログレ(笑)。続く「Mean Mr.Mustard」も同じ趣向はあるよな。しかしどちらもポールのベーシストとしての才能はさすがに素晴らしい。後者のベースの音はブーストがインパクトあるし、ハットも強調されているのでメロディの単調さをバックの音で補ってる感じ。良い曲かどうかは疑問だけどさ(笑)。必要なんだよ、きっと。「Polythene Pam」もやっぱりかなりヘンなアコギロック。デヴィッド・ボウイなんかがこの時期にこういうのやってたから、音的な共通項はそのヘンにあるな。しかしエグイギターだなと思ったらジョンか…。う~む…。で、いつの間にか「She Came In ...」も同じようにアコギロックナンバーにジョンのエグいギターがフューチャーされてて、やっぱロックやらせりゃジョンが一番じゃねぇか、と思えるような曲。うん。ここまでて何となく一段落つく。実際は繋がってるけどさ、ここからの美しさは何物にも代え難い永遠の名作に相応しい…、と云うか、ここからの曲があるがためにこのアルバムの存在価値が高まってるとまで思ってるからさ。ポールの独壇場ではあるがやはり凄いものは凄い。
「Golden Slumber - Carry That Weight - The End - Her Majesty」、ピアノから始まってストリングスが絡んでくるという常套手段に美しいメロディ…、ポールお得意の展開から始まるカバー曲らしいけど、わかんないよな、そんなの。そこから間髪入れず「Carry That Weight」…、これも楽器的には同じようなモノだけど、やっぱギターが入ってくると安心するんだよな。このまま聞いてると単なる作品になっちゃうからさ、いや、それでも十分に凄いんでいいんだけどさ、ホントこの音の洪水に飲まれていくよね。一気にリズムが変わる「The End」。なんつうか、そういう意味なんだろう。エンディングロールってことで実にバンドらしい演奏の展開が繰り広げられて、静かに終わりを迎える、プログレッシヴと呼ぶには美しすぎる…。そしてオマケのように付けられたアコギ一本による「Her Majesty」で唐突に終わりを迎える…。
やっぱり圧巻のB面に尽きる。いわゆるプログレ系でこの後出てくるのもひっくるめて、ストリングスや鍵盤の使用、アコギによる小曲、コーラスワーク、複雑な曲構成にメドレー形式、クラッシックの融合、アバンギャルドな楽曲…全部あるんだよな、この作品には。でもって総合的にポップスとして一般に知れ渡っているという面白い現象。う~む。
そういえば、何年か前にトッド・ラングレンやアン・ウィルソン、ジョン・エントウィッスル、アラン・パーソンズなんかが一緒に集まってビートルズカバーバンドってのでツアーやってて日本にも来たんだよね。その時のクライマックスがこの「Abbey Road」のメドレーで、さすがプロ中のプロによるカバーは圧巻だった。面白かったな、このライブ。
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