King Crimson - In The Court of The Crimson King



1960年代末期、英国ではブルースロックが全盛となりその最たるモノがクリームであって、その後にレッド・ツェッペリンが世界を制したという図式で、ポップス界ではビートルズが「Abbey Road」をリリースして解散という時期、時代はロックへと流れていったのだが、英国の奥深いところはそれだけでは済まされなかった。サイケデリックムーヴメントからプログレッシヴロックへと変革していったグループが多く見受けられ、その意味ではピンク・フロイドは最たるモノと云えるし、ソフト・マシーンあたりも同様だろう。しかし、それらとは全く関わりのないフィールドから出てきて世間を唸らせた、そして現代に至るまで執拗に追いかけるファン層を創り出したバンドがいた。それがキング・クリムゾンである。
…う~ん、なかなかかっこよい出だしが書けた(笑)。うん、クリムゾンって突然変異の塊なんだよ。英国ロックを聴きまくって歴史的にも分析したりするんだけど、このバンドはやっぱり異質。ルーツがない状態でいきなり出てきてしかも当時から売れまくったっていう…、もちろんジャイルズ、ジャイルズ&フリップっていうのが布石としてあったりジュディー・ダイブルとの出会いなどあるんだけど、音楽的にアレ…いや、これから書く「21バカ」みたいな曲が出てくるってのは全く正体不明。そういう意味ではジミヘンよりも突然変異なんだよな。自分の探求不足かもしれないが、そうだったら教えてくれ~、どこからアレが出てきたのか。うん。
ま、そんなこと云っても存在するモノは存在するワケなので素直に認めよう(笑)。キング・クリムゾンの強烈なファーストアルバム「クリムゾンキングの宮殿:In The Court Of The Crimson King」。まずジャケットだよ、やっぱ。これ、誰が見ても一発で覚えられるしインパクトがある大顔面ジャケで、それだけでも印象的。書いたのはロバート・フリップ卿の友人らしいが、まさかこれほど売れるとは思わなかっただろうから結構儲け損なったんじゃないだろうか。ま、友人だからその辺は上手くやったのかもしれない。うん、アルバムリリース後数年で亡くなったらしいけど。で、この原画が確かフリップの事務所の受付の奥に飾ってあるんじゃなかったっけ?結構小さいんだよね。
初めてこのレコードを聴いた時の印象って…、最初はすげぇっ!って感じで、次にああ、綺麗な曲もあるんだなぁ、って。そんでプログレらしい曲だなぁ…ってB面に行くといい曲だなぁ…って思ったらもう大して音が聞こえない苦痛の8分間だっけ?があって、タムタムが入ってきて初めて、やっと来たよ~、長かった~っていう印象。うん、このアルバムはそういう風に曲が並んでるのです。
まぁ、それじゃ面白くないから一応マジメに書いておくとさ、一曲目の「21バカ」(「21世紀の精神異常者」というタイトルのため、仲間内ではコレで通じるのだ)のリフのインパクトも去ることながらグレッグ・レイクのぶち切れたようなボーカルも相当インパクトあって、何だコレ?って衝撃が走るし、途中のキメのトコロなんて、超絶ものでしょ?面白いのはこのキメのトコロってグレッグ・レイクのベース音が一音だけ抜けてるんだよね。一箇所だけ途切れるの。意識してるのかミスなのか知らないけど、どっちにしても面白い効果。ここで音抜けるってことないと思うので多分ミスじゃないかな、と思ってるけど。でもって、「風に語りて」の美しい英国的伝承音楽から来ている楽曲で、こういうのがあるからクリムゾンの価値が一辺倒に収まらないんだろうな。もちろんジュディ・ダイブルの歌うバージョンの方が単体で聴くなら綺麗。アルバムならコチラ。そして最早超有名な「混乱、それが私の墓碑銘」ってヤツよ。そうそう、クリムゾンって楽曲もジャケットもともかく歌詞も難解で知的ないわゆる芸術的な詞が書かれているのも特徴だよね。ピート・シンフィールドさん。そういうのが一気に集まってきていたってのがこれも凄いコトなんだよな。やっぱバンドは化学反応なのだ。で、「Moonchild」…もうさぁ、美しい曲とメロディで3分間ポップスとしてももの凄く良い曲なんだけどそれに8分間の効果音が紐付くのだ。クレジットから見るとやっぱりこの曲に付いてくるワケで、どっちかと云うと次の「クリムゾンキングの宮殿」の序章として付いている方が納得するんだけどな。ま、アルバム単位でしか聴かないからどっちでも一緒だけど、この長い長い効果音を大音量で一人で悦に入って聞いていると心地良いところで「タトットットトッ、ジャーン」って入ってきてさ、この感触を味わいたいがために「Moonchild」から長々と聴き入るんだよ(笑)。もうそれで完璧。
ちょっと久々にマニアックに書いておくと…っつうか当たり前かも知れないけど、英国オリジナルアイランドレーベルのピンクラベルでリリースされたものがオリジナルマスターからのダイレクトカッティングで音が一番良かったってことなのだ。一度聴いたことがあるが全く音像が違っていて驚いた記憶がある。以降は各国に配給されたファーストジェネレーションマスターからのカッティングプレスなので音が違い、繊細な部分がやっぱりオリジナルとは異なるようだ。CD時代になってからも何度もリマスタリングされていたにもかかわらず、正真正銘のオリジナルマスターテープからデジタルリマスタリングされたのはついこないだリリースされたファイナルバージョンだけということらしい。そこまでは聴いてないんだけど、どうやら見事に音の質が違うらしいのでコレはいずれ聴いておきたいなぁと思ってる。ま、それだけ何度も再発されるとうんざりするのもあるが(笑)。
- 関連記事
-
- David Sylvian & Robert Fripp - The First Day
- King Crimson - In The Court of The Crimson King
- King Crimson - The Great Deceiver 4CDBox