King Crimson - In The Court of The Crimson King

13 Comments

 1960年代末期、英国ではブルースロックが全盛となりその最たるモノがクリームであって、その後にレッド・ツェッペリンが世界を制したという図式で、ポップス界ではビートルズが「Abbey Road」をリリースして解散という時期、時代はロックへと流れていったのだが、英国の奥深いところはそれだけでは済まされなかった。サイケデリックムーヴメントからプログレッシヴロックへと変革していったグループが多く見受けられ、その意味ではピンク・フロイドは最たるモノと云えるし、ソフト・マシーンあたりも同様だろう。しかし、それらとは全く関わりのないフィールドから出てきて世間を唸らせた、そして現代に至るまで執拗に追いかけるファン層を創り出したバンドがいた。それがキング・クリムゾンである。

 …う~ん、なかなかかっこよい出だしが書けた(笑)。うん、クリムゾンって突然変異の塊なんだよ。英国ロックを聴きまくって歴史的にも分析したりするんだけど、このバンドはやっぱり異質。ルーツがない状態でいきなり出てきてしかも当時から売れまくったっていう…、もちろんジャイルズ、ジャイルズ&フリップっていうのが布石としてあったりジュディー・ダイブルとの出会いなどあるんだけど、音楽的にアレ…いや、これから書く「21バカ」みたいな曲が出てくるってのは全く正体不明。そういう意味ではジミヘンよりも突然変異なんだよな。自分の探求不足かもしれないが、そうだったら教えてくれ~、どこからアレが出てきたのか。うん。

 ま、そんなこと云っても存在するモノは存在するワケなので素直に認めよう(笑)。キング・クリムゾンの強烈なファーストアルバム「クリムゾンキングの宮殿:In The Court Of The Crimson King」。まずジャケットだよ、やっぱ。これ、誰が見ても一発で覚えられるしインパクトがある大顔面ジャケで、それだけでも印象的。書いたのはロバート・フリップ卿の友人らしいが、まさかこれほど売れるとは思わなかっただろうから結構儲け損なったんじゃないだろうか。ま、友人だからその辺は上手くやったのかもしれない。うん、アルバムリリース後数年で亡くなったらしいけど。で、この原画が確かフリップの事務所の受付の奥に飾ってあるんじゃなかったっけ?結構小さいんだよね。

 初めてこのレコードを聴いた時の印象って…、最初はすげぇっ!って感じで、次にああ、綺麗な曲もあるんだなぁ、って。そんでプログレらしい曲だなぁ…ってB面に行くといい曲だなぁ…って思ったらもう大して音が聞こえない苦痛の8分間だっけ?があって、タムタムが入ってきて初めて、やっと来たよ~、長かった~っていう印象。うん、このアルバムはそういう風に曲が並んでるのです。

 まぁ、それじゃ面白くないから一応マジメに書いておくとさ、一曲目の「21バカ」(「21世紀の精神異常者」というタイトルのため、仲間内ではコレで通じるのだ)のリフのインパクトも去ることながらグレッグ・レイクのぶち切れたようなボーカルも相当インパクトあって、何だコレ?って衝撃が走るし、途中のキメのトコロなんて、超絶ものでしょ?面白いのはこのキメのトコロってグレッグ・レイクのベース音が一音だけ抜けてるんだよね。一箇所だけ途切れるの。意識してるのかミスなのか知らないけど、どっちにしても面白い効果。ここで音抜けるってことないと思うので多分ミスじゃないかな、と思ってるけど。でもって、「風に語りて」の美しい英国的伝承音楽から来ている楽曲で、こういうのがあるからクリムゾンの価値が一辺倒に収まらないんだろうな。もちろんジュディ・ダイブルの歌うバージョンの方が単体で聴くなら綺麗。アルバムならコチラ。そして最早超有名な「混乱、それが私の墓碑銘」ってヤツよ。そうそう、クリムゾンって楽曲もジャケットもともかく歌詞も難解で知的ないわゆる芸術的な詞が書かれているのも特徴だよね。ピート・シンフィールドさん。そういうのが一気に集まってきていたってのがこれも凄いコトなんだよな。やっぱバンドは化学反応なのだ。で、「Moonchild」…もうさぁ、美しい曲とメロディで3分間ポップスとしてももの凄く良い曲なんだけどそれに8分間の効果音が紐付くのだ。クレジットから見るとやっぱりこの曲に付いてくるワケで、どっちかと云うと次の「クリムゾンキングの宮殿」の序章として付いている方が納得するんだけどな。ま、アルバム単位でしか聴かないからどっちでも一緒だけど、この長い長い効果音を大音量で一人で悦に入って聞いていると心地良いところで「タトットットトッ、ジャーン」って入ってきてさ、この感触を味わいたいがために「Moonchild」から長々と聴き入るんだよ(笑)。もうそれで完璧。

 ちょっと久々にマニアックに書いておくと…っつうか当たり前かも知れないけど、英国オリジナルアイランドレーベルのピンクラベルでリリースされたものがオリジナルマスターからのダイレクトカッティングで音が一番良かったってことなのだ。一度聴いたことがあるが全く音像が違っていて驚いた記憶がある。以降は各国に配給されたファーストジェネレーションマスターからのカッティングプレスなので音が違い、繊細な部分がやっぱりオリジナルとは異なるようだ。CD時代になってからも何度もリマスタリングされていたにもかかわらず、正真正銘のオリジナルマスターテープからデジタルリマスタリングされたのはついこないだリリースされたファイナルバージョンだけということらしい。そこまでは聴いてないんだけど、どうやら見事に音の質が違うらしいのでコレはいずれ聴いておきたいなぁと思ってる。ま、それだけ何度も再発されるとうんざりするのもあるが(笑)。

関連記事
フレ
Posted byフレ

Comments 13

There are no comments yet.
papini  
いちばん!

これは・・・これはコメをしなくては!
って、アタシ毎日くだらないこと書いてるけど(笑

だってさ、フレさんのこの辺の記事、って面白いんだもん♪

クリムゾンは突然変異っていうか
フリップ卿が変態なんだと思う(笑
んで、類が友を呼んで、それが世界に広がっちゃったんだね。
この頃のロックとは、まさに一線を画してるじゃない?>「21バカ」
多分、フリップ卿のアタマん中で、いろんな音の構造みたいなのが出来上がってたんだと思う。これ作るときに。
思いついてできるモンじゃない、って思うモン。

これ、クリムゾンの中じゃ別格だけど
本人達にとっても、これはトラウマになっちゃったんだね、って
あとの作品を聴くと思う。

あ、ちなみにファイナルバージョン、買っちゃった(笑
アタシ、このアルバムだけで何枚持ってるかわかんないよ・・・(笑

2006/08/18 (Fri) 20:47 | EDIT | REPLY |   
evergreen  

papini嬢がフリップ卿好き、私がフリップ卿音痴・・・なんかな~好みって歳じゃないね!(爆)

うんうん、偶然の産物って片付けちゃってるよね!わからんね!

私は、アナログで聞いてるから、デジタル、特に26ビットのあれ、カルチャーショックだった・・・
だって、アナログだと「21ばか」ので出しのこまか~い音聞こえないんだよね!こんな音が入ってたんだ~
だから、CDは今だに偽者のような気がしてるんですよ、本当は逆下も知れないが、そんな事をYESの「危機」の1曲目小鳥のさえずりにも感じたんですが・・・ファイナルバージョン買いたい!しかし・・・買う優先順位でおちちゃうなあ

2006/08/18 (Fri) 21:58 | EDIT | REPLY |   
harukko45  

フレさん、やっぱりこの時期のものには文の熱さが違うね。いやいや楽しくよんでおります。
で、プログレ苦手の私にもクリムゾンは別モノ別格でした。特のこのファーストはとんでもない。結局、これを越えられなかったとも言えるけど。
ついついロバート・フリップが焦点になって、それも当然だけど、イアン・マクドナルドの大活躍も讃えたい!その後の彼はいま一つ盛り上がらなかったけど、ここでの彼の仕事は文句なしで、大好きです。

2006/08/19 (Sat) 01:10 | EDIT | REPLY |   
Yama  

突然変異、化学反応。言いえて妙だと思います。

ロック、ジャズ、フォーク、クラシックのイディオムを云々という常套句も間違ってはいないと思いますが(うちのHPのレコメンでも使ってます)、じゃあなぜこの音になるんだという根本的な説明にはならないですもんね。

GG&Fと『宮殿』の間の隔たりは相当なものがありますからね。もしかすると、破棄された初期のレコーディング音源がミッシング・リンクになっているのかもしれませんね。

ファイナル・ヴァージョン。細かくは聴き比べていないのですが、一聴しただけでも分かるのは、音の分離が良くなっていることですか。ただ、クリムゾンのリマスターCDは元々音はかなり優秀だったと思うので、劇的な変化とまではいかない様な気もします。

2006/08/19 (Sat) 01:16 | EDIT | REPLY |   
ぷくちゃん  

昔のアルバムと比べて、最近のCDではシンバルの音が違うように聞こえます。凄くクリアにしっかりと・・・

最初「21世紀」を聞いた時には声のかれた人が歌っているのかと勘違いした遠い日を思い出します。

私にはブルースの匂いぷんぷんのアルバムですが・・・

2006/08/19 (Sat) 11:20 | EDIT | REPLY |   
いたち野郎  

GG&Fの牧歌的なアルバムからは「21バカ」は想像できませんね。ルーツはまったく感じられません(汗) 

最新のは知り合いに借りて、ウチのピンクアイランドと聴き比べしましたが…CDは色々聴こえますね!エヴァさんのおっしゃるとおり、こんな音があったの?という発見もできますが、これまたエヴァさんと同意で、結局耳の慣れでアナログの音に落ち着きました(笑)

2006/08/20 (Sun) 01:53 | EDIT | REPLY |   
フレ  
多数ありがとうございますっ!もっとどーぞ。

やっぱコレやると反響が大きくて面白い♪
ありがとうございやすっ!

>papini嬢
面白い?ありがと♪やっぱフリップ卿は変態だからねぇ、でもさ、思い付くか、これ?って感じ。アタマの中で出来上がってたものが出来たっつうよりももっと激しいのが出来たんだろうなぁ。ま、この一作の呪縛から逃れられなかったってのあるかもしれないけど、後はメンバー違うんだからねぇ…。このアルバム何枚持ってるか?みんな言いたくないんじゃない(笑)?

>エヴァ姉さん
あ、やっぱそういうクリアーなために聞こえる音ってのあるんだ?でもなぁ、もう買いたくないしさ(笑)。そう、優先順位落ちちゃうんだよね。しかし気にはなる。

>harukko45さん
ども♪う~ん、一番好きな時期のロックですからねぇ、つい文面にリキ入ります(笑)。そうそう、イアン・マクドナルドの功績は偉大ですよ。…っつうか全員凄い功績ですよ、これは。フリップだけじゃないバンドの音ですもん。マイケル・ジャイルズのドラムも美しいですし。フリップなしクリムゾンでのライブではかなり好評だったらしいですよ。もちろん「21バカ」やったみたいです♪

>Yamaさん
やっぱ出所不明ですかねぇ、この音は。破棄されたレコーディング音源、残ってないかなぁ…。別に解明したからどうってもんじゃないですけど、やっぱり知りたいですよね。うん。ファイナルバージョンは徐々にそこに向かった人には少しずつの音質アップでしょうけど、アナログからいきなりファイナルバージョンだったら強烈に違うんでしょうね。自分はリマスター盤CDあるけど、それでもういいや~って感じです(笑)。いや、いずれ入手しますが…。

>ぷくちゃん
やっぱ音違いますか…。そりゃそうか。「21バカ」は声の枯れた人が歌ってるんでいいんじゃない?だって歪んでるもん、声(笑)。しかしブルースの匂いですか…。それは全く感じなかったので面白いなぁと。ま、泥臭いっちゃそう言う感じもありますね。なるほど…。

>いたち野郎さん
うん、GG&Fは単なるその他大勢と同じ位置付け。やっぱ正体不明の突然変異だねぇ。お、音の方は、やっぱ新鮮みたいね。まぁ、アナログの音に慣れてるとCDは、ってのあるけど興味はそそられるなぁ。自分で書いてて、持ってないってのもヤなもんだけど、、、いずれ、だな(笑)。

2006/08/20 (Sun) 16:16 | EDIT | REPLY |   
kazz12000  
ファイナルヴァージョン、良いですよ!

ご挨拶遅くなってすみません、トラバありがとうでした。

やはりこの時期、というよりこのアルバムはI.McDonaldの存在が大きいものに感じますよね。他のメンバーと合わさる事で仰るように化学反応が起きて、この凄まじい威力を持ったアルバムが出来上がったのだと思っています。

今後ともよろしくお願いします。

2006/12/20 (Wed) 23:14 | EDIT | REPLY |   
波野井露楠  

初のプログレ記事を書いてみました。
例によって、拙い記事ですが、TBさせていただきました。
す、すみません(^^;)!汗

2007/04/28 (Sat) 01:52 | EDIT | REPLY |   
zagan  

"Jethro Tull"が好き。





と、書き逃げすると、寿命が縮まりそうだ。  (遁走

2007/10/03 (Wed) 15:40 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>zaganさん

いやぁ…タルも好きっすけどやっぱクリムゾン凄いっす。

2007/10/06 (Sat) 11:29 | EDIT | REPLY |   
sihuku  
こんばんわ

はじめまして。コメントとTBとありがとうございました。
紹介量といい、記事のボリューム感といい圧巻ですね=
色々と楽しめますし、また参考になる事も多いですね~☆

コレも良い機会!と思います。出来れば(問題が無ければ・・・)貴ブログさまとリンクさせて頂いても宜しいでしょうか?
どうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m

2008/01/12 (Sat) 20:32 | EDIT | REPLY |   
sihuku  
こんばんわ。

リンクの件ありがとうございますm(_ _)m
またお邪魔させて頂きます♪
どうぞ宜しくお願いします。
”ロック”の深みが沢山眠っていますよね!?

2008/01/13 (Sun) 22:58 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply

Trackbacks 11

Click to send a trackback(FC2 User)
この記事へのトラックバック
この記事へのトラックバック
  •  解禁したそばから・・・
  • はい、今日の2本目。解禁したからさ。訳詞とかいろいろがんばってたけどさ。やっぱり音盤ないと始まんないじゃん?KING CRIMSON 「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」これはね、あちこちのHPやらブログで書かれてるし、名盤だし、ウンチクとか、そういうものは違うとこか
  • 2006.08.18 (Fri) 20:49 | Trapo de la eternidad
この記事へのトラックバック
  •  クリムゾン・キングの宮殿
  • ”衝撃のデビュー・アルバム”と形容されるアルバムは数多くあれど、今回紹介するこのキング・クリムゾンのデビュー・アルバムほど、その言葉を体現しているものはない。まさに真の”衝撃のデビュー・アルバム”と言えるだろう。という事で今回はコチラのアルバムを紹介です
  • 2006.08.18 (Fri) 22:53 | ROCK ANTHOLOGY BLOG
この記事へのトラックバック
  •  ★クリムゾン・キングの宮殿~ORIGINAL MASTER EDITION
  •  キング・クリムゾンの名盤中の名盤である1st『IN THE COURT OF THE CRIMSON KING』のマスターテープが管理倉庫の中から新たに発見された、というニュースを聞いたのは今年に入ってからだったろうか。そのオリジナル・マスターテープを使用した最新版の『クリムゾン・キン
  • 2006.08.19 (Sat) 01:23 | 廃盤日記(増補改訂版)
この記事へのトラックバック
  •  Lark's Tongues in Aspic/KING CRIMSON (キング・クリムゾン)
  • Lark's Tongues in Aspic: 30th Anniversary (Rmst)KING CRIMSONLarks Tongues in Aspic [FROM UK][IMPORT][ジャケットの写真をクリックするとリンク先のAmazonで試聴できます。] Bill Bruford(Dr.ビル・ブラ
  • 2006.08.19 (Sat) 22:22 | OOH LA LA - my favorite songs
この記事へのトラックバック
この記事へのトラックバック
  •  King Crimson / In The Court Of Crimson king
  • キング・クリムゾンの全てはここに始まり、ここに帰結するというくらい、その後の全アルバム、そして現在も良い意味においても悪い意味においても重くのし掛かっている、巨大な背後霊的ファースト・アルバム。
  • 2006.12.20 (Wed) 23:16 | Fractalism
この記事へのトラックバック
  •  キングクリムゾン『In the Court of the Crimson king』
  • King Crimsonの衝撃のデビュー・アルバム『In the Court of the Crimson king(邦題:クリムゾン・キングの宮殿)』。1969年発表。一言で言うと「古典」です。このアルバムほど「古典」という言葉が似合う作品はありません。ビートルズが奏でていたロックンロールから“....
  • 2007.03.29 (Thu) 12:59 | ROCK野郎のロックなブログ
この記事へのトラックバック
  •  King Crimson ~In the Court of the Crimson King~
  • orign 1969シド・パレット脱退後のピンク・フロイドが"Ummagumma"を発表した年に発表されたアルバム。zagan中学二年生。洋楽に興味を持ち始め、なぜかピンク・フロイドは知っていたがクリムゾンは意識に無か...
  • 2007.10.01 (Mon) 20:54 | Zagan's Blog
この記事へのトラックバック
この記事へのトラックバック