![Masters From the Vaults [DVD] [Import]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/517MW0W96PL._SL160_.jpg)
ロックにおけるフィドル=バイオリンが使われ始めたのは多分60年代後半くらいからだと思うが、ごった煮の何でもアリ的なロックが盛んとなった時期に持ち込まれてきている。フェアポート・コンベンションなんてのはトラッドから来ているからそうした楽器の使われ方ってのは不思議ではないが、ロックのフィールドで意識的に使われ始めたのは70年代初期だろう。もちろんキング・クリムゾンなんていう化け物も存在するんだけど、ちょっと変わったところではカーブド・エアーってのが結構良い。もちろんボーカルがお嬢様ってのも聴くには大きく左右しているのだが。
カーブド・エアーのボーカルを務めているのは紅一点の実に美しい
ソーニャ・クリスティーナだが、
ファーストアルバム
では妙にサイケなギターとバイオリンの織り出すミスマッチな過激さがユニークな荒削りなサウンドで、ちょっと異質な印象。一括りにプログレッシブロックとも云えない時期。
セカンドアルバム
では変形6面開きのジャケットがコレクター心をくすぐる作りだったが、音の方も繊細になり、小曲がマニア心をくすぐる秀作。で、サード
「ファンタスマゴリア」
になると物語性が出てきて名曲も数多く収録され、ジャズ系の面々も揃えたバランスの良い作品なので人気が高い。が、ここで取り上げるのはその次にリリースされた、実態の見えにくいこの時期のプログレッシブバンドには珍しい
「ライブ」
だ。最初の三枚を聴いてからこのライブを聴くと「え?」って云うくらい激しいロックバンドの音なのだ。ソーニャの歌はヒステリックに叫びまくっているし、バンドのサウンドもごまかしのない正にロックバンドの音で、何となくベールに包まれていたプログレバンドの生々しい証明って感じ。バイオリンって実はロックな楽器なんだ~っていうこともよくわかる。「It Happened Today」からもうハードロック的な音だし(は言い過ぎだが)、綿密に構成された「マリー・アントワネット」って曲ももっと繊細なモノとして聴いていたのがあれ?って感じ(笑)。プログレ~?って嫌悪感のある人も全くそんなこと知らなくてもかっこいいこの
ライブアルバム
こそがこのバンド素晴らしいトコロのはずなのだが…、割と無視されてるかな。
…と云うのもこの作品以降メンバーががらりと変わり、ドラムには後に
ポリス
に参加することとなるスチュワート・コープランドが座り、この歌姫を妻に据えているのもさすがだが、またもや落ち着いたサウンドに舞い戻ることとなる。こうして聴いていると
カーブド・エアーというバンドの歴史においてこのライブ盤は実にはみ出たアルバムで、浮いている。が、そのおかげで妙に人間くさいバンドとして記憶に残るプログレバンドのひとつとして君臨(?)することとなったのだ…。そういえば
1972年のライブ(テレビ映像)
がDVDでリリースされているのでこいつを見るのも一興かな。
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