T.Rex - Tanx

歴史的にはT.Rexとかマーク・ボランがグラム・ロックの元祖でもあるってのは知ってるし、実際アルバムでもビデオでも綺羅びやかなスタイルは一際目立っていたものだから違和感なく受け止められるんだが、マーク・ボランのキャリアとか音の歴史とか聴いてると…そうティラノザウルス・レックスからずっとね…、そうするとさあんまりグラムなイメージってなくって、売れるためにちょっと目立つことして神憑り的な魔法使いしてたみたいなトコあってさ、その実一瞬の煌めきを失ってしまった後の姿なんてのを見てると普通にロックミュージシャンだもん。余りにも華がなくなりすぎてたけどさ…。アルバムにしても「Slider」や「Electric Warrior」あたりが一番持ち上げられてて後はベスト盤で良いでしょ、ってな風潮、多分今でもそうだと思う。自分的にちょっと取り組めていなかったな〜ってアルバムが「Tanx」。んで、その通りに自分のブログでは取り上げていなかったんだな…ってことで再度数回聴き直しながらちょこちょこっと。
1973年にリリースされたキャリア的には8枚目のアルバム「Tanx」だけどT-Rex的には4枚目くらいかな…、最強メンバーでの最終作、マーク・ボラン名義が付かないという意味での最後のアルバム。そしてマーク・ボランの、T-Rexとしての輝きを放っている最後のアルバムとも言えるか。昔聴いた時は全然ピンと来なかったんだよ。思ったほどグラムロックでもブギアルバムでもないしキャッチーで聴きやすくてってのもちょっとイメージ違ったし、前二作と比べると聞く回数が全然少なかったアルバムなんです。その時点で聴く才能ないだろ、って話かもしれないな〜と思うくらいに今聴いててこのアルバムの持つ素晴らしさ、T-Rexというバンドの奥深さを改めて認識した次第です。
何でこんなに素晴らしく美しく涙が出てくる、そして繊細な作品なのだろう、だからこそ昔の自分にはあまり響かなかったのだろうか。ビートルズの後期に近いレベルでのアルバム風味、それ以外に誰かに似ているというような作品ではない。甘くマイルドな歌声は健在、ベースの刻み具合もかなりプロプレイヤー的だしパーカッションはもちろん効果的に味を発揮している、ブギ中心じゃないけど印象づけるギターはもちろん健在、それらをうま〜くまとめているトニー・ヴィスコンティのアレンジと才能はもちろん安心のクォリティでバンドの個性も前に出しつつ全てを結集させた作品として仕上がっている名盤。うん、名盤だと思う。英国のメロディらしさ空気雰囲気などきちんと出ててさ、しかもピュアに仕上がってるから今聴いても全然古臭さはないし、良いわ、これ。ちょっとT-Rex離れしてたけど「Tanx」がこんなに素晴らしかったとは…、気分のせいなんだろうか?いやいや、ホントに良いです。