Renaissance - Grandine Il Vento

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Renaissance - Grandine Il Vento (2013)
消ゆる風

 近年では70年代のバンドの復活劇が頻繁に起きているが、概ねライブ活動が中心だったりしてリバイバルを楽しむ風潮が強いものが多く、それはそれで楽しめるのだが、中には新作、新録素材をリリースしてくるバンドも多い。もちろんアーティスト志向からしたら当然のことだし、旧知の仲間がまた一緒に出会ってみればそれなりに楽しめたり昔の刺激を受けたりしながらなど色々あるだろう。ただし、頑ななリスナー達からしてみると概ねその新作は70年代の黄金期と比較することが常で、そのレベルを、またはその音楽性を持っていないと決して真の意味ではその復活したバンドを手放しで喜び聴きまくるということにはならない。当然付き合いで新作は多分ほぼ入手することだろうが、中身を20回も30回も聴いたか?と問われて「Yes」という人は多くはないと思う。やはり昔の作品に手が伸びるものだ。そういう意味で復活劇を成功させているバンドというのは多くはないだろう。しかもメジャーなバンドならともかくプログレ系やニッチなバンドであればより一層頑ななファンも多いのだから難しさは増す。

 Renaissanceというバンドの新作「消ゆる風」だ。ボーカルはもちろんアニー・ハズラム、そうクリスタルボイスの第一人者のアニー・ハズラムの歌声に依るRenaissance…、果たしてそうなのか?これはアニー・ハズラムがRenaissanceをテーマに歌ったアルバムなんじゃないか?もしくは売るための方策じゃないか?マイケル・ダンフォードこそがRenaissanceのサウンドの要であったことは既に知られている事実だが、彼は本作「消ゆる風」を録音中に他界してしまった。だからこそトリビュートの意味もありRenaissance名義でのリリースになるのだが、もちろん自分自身Renaissance名義だから聴くワケで、アニー・ハズラム名義だったら別に今聞くこともなかったかなと思うんだから、やっぱりRenaissance名義は強い。そしてそのおかげでとてつもなく素晴らしいアルバムに出会えることになったことに感謝している。ず〜っと否定論ばかり書いていたのにいきなり何だこの肯定論は?って話なんだが、大抵そういう感じに思って斜に構えて手に取ることが多い中でさ、こんなに美しく素晴らしいアルバムだったから余計に感動してしまってね…、そう70年代の最高峰のRenaissanceの音世界をそのまま継続した…いや昇華させたアルバムの仕上がりとも言えるので驚きや衝撃が大きかったんです。アニー・ハズラムの歌声…と言うか歌い方も全部70年代そのままで声質もほとんど変わらないという驚き、そして驚愕のハイトーンまでそのまま…、見事。

 そして楽曲群のRenaissanceらしさ…もともとロックとクラシックの融合がテーマになったバンド、そこに聴きやすさを入れていたのだが、そのまま進化させている姿を見ることが出来るのにも驚いた。ゲスト陣のイアン・アンダーソンとジョン・ウェットンという人選も見事に現役連中なのでこの進化系Renaissanceの音に違和感なく、むしろ気品を添えているとも言えるくらい馴染んでいる。楽曲の起伏や複雑さ、更に牧歌性や強烈なアプローチなど全てが70年代の実験精神に基づいたもので、それでも美しく聴かせる曲として存在させているアニー・ハズラムの歌声が素晴らしい。Renaissanceを好きなファンはこういう音を求めていたのだと思う。その期待に見事に応えた作品と言えるはずだ。その背景にはレコード会社の資金で録音した作品ではなくファンから募った基金を元に作品を作ったからというのも大きく影響している気がする。レーベル意向=売るため意向ではなく、聞き手の意向を叶えるために作ったアルバムだからなのだろう。全てがと言うわけではないが、やはりアーティストとファンの繋がりだけで見ればこの姿は正しいスタイルな気がする。ただ、進化することは難しいけど、今の復活劇というテーマで行くならリスナーが聴きたいものを具現化する作り方が理想的かも。

 細かいことは何でも良いんだが、とにかくこの「消ゆる風」は久々に驚きと感動を受けたRenaissanceの新作です。昔自分がプログレにハマった時に出会ったRenaissanceの感動をそのまままた与えてくれた作品とも言えるレベル感。素晴らしい。






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フレ
Posted byフレ

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風呂井戸  
何回目の復活でしょうか

 フレさんがRenaissance党であったとは・・・・ちょっと意外でした。
 私も結構オリジナル・ルネッサンスも好きでしたが、メインのアニー・ハズラム(マイケル・ダンフォードのと言わなければいけないかなぁ~~)のルネツサンスにはずいぶんお世話になりました(笑)・・・「お伽噺」あたりが最高点でした。
 2000年の「トスカーナ」の復活劇もありましたが、私はもうそれほど感動も無く忘れていました。ここに来てニュー・アルバムとは、全く知らないでいて驚きました。私もこうして知れば、やっぱり聴くことになるんでしょうね。SHM-CD もあってサウンドにも気合いが入っていそうですね。

2013/05/29 (Wed) 21:47 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>風呂井戸さん

「Songs for All Seasons」までは好きですねぇ。随分お世話になりましたもん。最近あんまり出さなかったから意外だったのかもしれにですね(笑)。
「トスカーナ」はちょっと…でしたが今作はかなりイケてますよ。

2013/06/01 (Sat) 11:02 | EDIT | REPLY |   

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