聖飢魔II - 地獄より愛をこめて

聖飢魔IIのデーモン小暮と爆風スランプのサンプラザ中野は共に同じ世代で早稲田大学出身で同じバンドに所属していたこともあり、またどちらもCBSソニーからと言うのもあってかその姿とは異なり交流が割とあったようだ。今あるかどうかは知らんが、面白いモンだな〜と昔思った記憶がある。結局音楽性やルックスは本来あまり幅が広くなくても歌えれば良い、っていう部分は大きいのかも。それと売るため売れるために演るべき事ってのを目指しているワケだ。とあるバンドのメンバーから話を聞いたことがあるが、昔売れない時代に音楽そのものをどうするとか方向性やジャンルなどについてはとっくに議論が終わっていてその方向に沿って作っていくだけの状態だし、実際に曲も出来ているので問題なかった。それよりも随分前からどう売っていくか、どうやったら売れるか、というマーケティング的な事ばかりがバンドの議論の争点だったと語っていた。結局純粋に音楽だけで評価されて売れるって事はそれほどなく、絡むべき人やメディアも使いつつイメージやもちろん音作りや曲なども含めた総合プロモーションをどうしていくかになる。好きで音楽やってるってのはアマチュアだよ、と語ってたんである意味さすがプロとも思ったし、一方では音楽ってそうなんだ?みたいなショックも受けた。
さて、話を戻して聖飢魔IIと言うバンドは当然CBSソニーから出て来ているのでその辺はすべて狙い済み、挙句初期のレコーディングではメンバーが演奏すらしていない始末。バンドらしくなってきたのはようやくこの三枚目の「地獄より愛をこめて」から、と言うのが真相じゃないだろうか。もっとも自分はこの時既に他に興味が移ってたので聖飢魔IIはほとんど聴いていなかった。それでも1986年にリリースされた時はかろうじてカセットテープに録音してもらってたようだ。何曲かは知ってるし、ジャケットやタイトルにも見覚えがあったから。
それをだな、今に至って…30年ぶりくらいに聴くワケですよ。30年近く経って聴ける、聴いてるのも考えなかったけど、聴いてもっと驚いた。ブログ仲間の某氏が聖飢魔IIが大好きなようでたまにブログに上がってくるのを見てて、そんなにハマる要素あったバンドだったかな?と不思議に思ってたけど、本作「地獄より愛をこめて」を聴いて思ったのは、少なくともこのアルバムはかなり大英帝国70年代風味のハードロックセンスが詰め込まれた作品だって事だ。メロディセンスにしても見事に泣きと暗さが入った「エルドラド」なんてのは傑作の曲だろうし、そこに至るまでの楽曲群も歌詞はともかくとして、デーモン小暮の歌もかなり幅広い歌唱によって多々チャレンジしているが、曲は一貫して大英帝国ハードロックに徹底されている。紐解けばジェイル大橋氏が全曲書き下ろしたという事でアルバムとしての統一感は半端ないことが大きな要因だろう。意外だったのはデーモン小暮ってもっと歌上手いと思ってたけど、このアルバムだとそうでもなかったように感じたくらいか。
それにしても「地獄より愛をこめて」…、カッコ良いな。当時日本で唯一メジャーレーベルからお茶の間に届けられるヘヴィメタバンドだったはず。その底力に今気づいたが、もしかしたら日本のヘヴィメタって聖飢魔IIがなかったらアングラなままだったかも?と思う。良くも悪くも聖飢魔IIのお茶の間進出によってこういうサウンドに出会ったって人も多いだろうし、しかもこの「地獄より愛をこめて」というアルバムだったらこのルーツは何なんだろう?って気にすると面白くなる。NWOBHMの流れをそのまま出しているとは思わなかったもん。時間が経つと色々わかることも多いです。
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