Wishbone Ash - No Smoke Without Fire

英国のバンドがアメリカ進出を狙って出す音、ってバンド側で意識して出すものなのか、プロデュース側がアメリカ風味を意識して出すものなのかって話で、トータル的にアメリカナイズされた音ってのはある。そういうのがよく分かる作品が自分では英国ではないけどマイケル・シェンカー・グループの「限りなき戦い」というアルバムで、現行CDだとオリジナルミックスとアメリカンミックスの両方が聴けるんだが、これがもう完全にプロデュース側での仕事でガラリと変わるワケで、そういうことかと納得するんですが…、曲自体は英国人は英国人な音しか出てこないだろうからやっぱアレンジだし、プロデュース側だろうなぁ。それも含めてのアルバム制作ってことだし、バンドの意思が反映されるんならそういうモンかなと多々考えてしまったのだった。
ローリー・ワイズフィールドってさ〜って思ってWishbone Ashの1978年の「No Smoke Without Fire」を取り出して見ました。昔Wishbone Ashをひたすら集めてて、後追いだったから割と順番に聴いてったんだけど、途中から全然面白くなくなって集めてただけって話。この「No Smoke Without Fire」あたりは真面目に聴いてなかったんだろうなぁと今聴いてて思った。じっくり聴いてみれば原点回帰な英国ツインリード及びWishbone Ashらしい哀愁のメロディと旋律が詰め込まれまくった繊細な作品なんだけど、なぜか初期に比べると心への響き具合が少ない。これはなんだろう?楽曲レベルやバンドの質や方向性など全てが「Argus」的なモノを指しているのに、何かが足りない。傑作です、間違いなく。あのWishbone Ashが帰ってきてるんだから、ファンなら狂喜して迎えるアルバムです。ところが、やっぱりアメリカナイズされたここ数年の影響が大きいのかバンドのサウンドはどこか湿り気のない音でアメリカンなスタイルが出ちゃってる。冒頭の「You See Red」からして乾いた感じあるもん。そんな印象もあってやっぱり傑作なのに何度も聴き込めないアルバム、が自分の印象。アルバムジャケットはヒプノシスだしプロデューサーも昔の仲間引っ張ってきてるし、完全に英国風な音に仕上がってるのに匂いがイカン。リスナーは敏感なものだ。
「Argus」を彷彿させる「The Way of World」はローリー・ワイズフィールド快心の作品で、まさしく往年のWishbone Ashを意識して、さらにツインギターバンドという看板を全面に出しながら哀愁のあるメロウなラインのみならず起伏に飛んだ展開を意識した名曲、と呼ばれるし、その話に嘘はない。ただ…、多分進化が欲しいのかも。「Argus」の世界は「Argus」で良くって、そこから発展したWishbone Ashの音ってのを皆期待してて、レイドバックも良いけど、今レイドバックするんじゃなくってさ、そういうのって書いてても難しいだろうなって思うけど、多分同じような楽曲のお話なら元々の楽曲聴く方が良くってそれが超えているなら別だけど超えてない単なる模倣だったら別に…ってトコだから。もっともコイツを聴いてファンになる人もいるだろうけどさ。
な〜んかね、聴いててもっと出来たんじゃないか?って思っちゃってさ、凄い名作です、念のため。ややアメリカ風なところが好きじゃないけど、アルバムの曲とかバンドの音は往年の姿に戻ってる。でも、何かが…ってだけ。その何かを埋めてくれたのはこの後出て来たPraying Mantisなんだよね…。
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