The Stranglers - Black & White


パンクからニューウェイブへの流れとはジョン・ライドン一人が作ったものでもなく、代表的なロンドン・パンクのバンド達は皆そういう方向へと進んだのは時代の流れと言うだけで良いのか…とも思うんだけど、P.I.Lは明らかに、The Damnedは思い切りニューウェイブの世界へと進み、The Jamはそもそも持ち前のモッズスタンスに立ち返り、ザ・クラッシュはレゲエやダブへの接近を図り、The Stranglersはそもそも鍵盤入りのバンドだったからそういう方向に進むのは何ら違和感がなかったとも言える。結果一瞬だけのパンクブームからはニューウェイブという暗い世界を生み出したということで、何でだろ?とも思うよな。もっとも一方ではシーンとしてのハードコアパンクなんかも生み出してはいるんだけど、当人たちはそっちに進まなかったって所でオリジネイターからは切り離れるっつうか…、ま、いいけど。
The Stranglersの渾身の3枚目のアルバム「Black & White」は1978年にリリースされた名盤の一枚で、もちろんパンク自体は既に終焉を迎えようとしていた時期だったが、今でも誤解されているようにThe Stranglersってのはパンクバンドではない…ではない、っつうかパンクだけのバンドではなくってアジテーションとしてパンク的なものはあるが、それは手段でしかなくて音楽的にはかなり高度なスタイルを貫いているし、独自の美学も持ち合わせているロックバンドだ。ただ、攻撃性が強かった初期はパンクバンドと同じスタンスで語られることもしょうがないだろうという部分は多いし、実際に暴力的なバンドでもあったワケで(笑)。全裸のお姉ちゃん達をステージに上げてみたり殴り込みに行ってみたり、他のバンドとの交流もほとんどなく孤高の存在でもあったりする…のは多分に年齢が結構高いからというのとインテリ層が組んだバンドってのもあるか。所詮労働階級あたりとは一緒にされないぜ、みたいなのがあったのかなぁ…、よくわかんないけど。
そんな反骨部分もあってか、この「Black & White」というアルバムはタイトル通りにブラックサイドとホワイトサイドと分けられてテーマ別に収録されている。アナログ時代はA面とB面で切り分けられていたんだが、もちろんCD時代にはそうも簡単にはいかない。ただし聴いていると一発で作風が変わることに気づくだろう。A面で流れていた攻撃的でパンクなスタイルのロックから突然に実験的なシンセサウンドを中心とした作風の曲が飛び出してくるのだから。その作風はP.I.Lが提示したような実験ではなく、もっとアグレッシブな方法論による提示だった。だからリリース当時には大部分の人間には理解されなかったようだし、実際自分も「?」だった。聴く側に偏見があるとダメなんだよね。偏見なしに音楽集団のアルバムとして聞けばその凄さに気づくんだけど。だからThe Stranglersと言うバンドは今でも自分にとってはハードルとしてのしかかっているバンドのひとつで、まだ80年代以降のヨーロッパスタンスのサウンドへ入れていない。その世界に進まないとThe Stranglersってのはわからないハズなんで、いつかは進みたいんだけどなかなか…ね。まずは「Black & White」の実験的側面とパンク的エネルギーを身に染み込ませてから先に進んでいく必要があるもんね。
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