Public Image Limited - Metal Box

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Public Image Limited - Metal Box (1979)
Metal Box Second Edition

 ポストパンクやらニューウェイブやらやたらと形容する言葉だけが氾濫していた80年代前半の英国アンダーグラウンド系ロックの世界、個性的なバンドがパンク以降にどんどんと出てきて収集つかなくなったってのが現状だろうが、それは70年代の英国ロックでも同じことで、カテゴライズする必要もないのかもしれない。ただし、Sex Pistolsというバンドがパンクの発祥バンドだ、と言うのと同様にP.I.Lがニューウェイブの発祥だ、と言うのも同義な気がする。多分P.I.Lがこの世界を提示しなかったら後のニューウェイブ系のバンドはもう少し異なったシーンへの出方をしていたような気がする。ジョン・ライドンという人に音楽的才能があったとは到底思えないんだが、常にアンチであったことによる先見性にあふれたセンスがあったのかもしれないとは思う。結果、出てきたバンドを見ればそのセンスを認めざるを得ないだろう。

 P.I.Lの問題作「Metal Box」。ネットでちょこっと調べるとやたらと当時の缶入りケースLPの発売とか限定盤とかそんなコレクターズ的なお話が多くて、今の時代にCDでも同じのがリリースされて、アナログも再発されてと色々と再発されまくったらしいが、まぁ、そういうのはファンじゃないと追いかけきれないし、自分は多分そういう意味では全然ファンじゃないので、そういうコレクターズ的見地によるアイテムとしての価値もあったんだ、くらいに思っている程度。「Metal Box」ならぬ「Plastic Box」ってのも出ていたり、「Second Edition」っつう同アルバムが出ていたりするワケだから、カタログをこれ以上ややこしくする必要もない。ただジョン・ライドンは45回転LP3枚組にして60分程度のアルバムをリリースしたってのは結構なオーディオマニア的発想だったらしい。そりゃ45回転の方が音良かったしね。ま、今の時代にはまるで無意味な感覚なのだが、そういう革新的な取り組みには執心だったのは面白い。

 さて、肝心の音楽…、正直に言ってまったく面白味はない。ただ、革新的。ジョン・ライドンも明らかに姿勢はパンクで、音がそうじゃないだけ。音が暗すぎるっつうか淡々とクールに進められている中で幾つかのヒステリックな側面が聴かれるけど、その実凄く冷たい感触で迫ってくるパンク。革新的な音世界で、明らかに後にニューウェイブと呼ばれるバンドの音に通じている。どんだけ天才的なんだ、この人は。バンドの演奏だって大したことないし、音だってチープだけど、主張が凄くてインパクトも絶大。リアルタイムではこれ、分からなかったんだよなぁ。もうちょっと聴いてればこのアイデンティティってわかったかもしれないけど、まず暗くてダメだった。後に聴くようになってから「Metal Box」の…っつうかP.I.Lのスタンスってのがわかってきたパターンなんでね。当時はこれ、パンクじゃないじゃねぇか、全く、と思ったもん。センスの問題ですね。

 てわけワケでどういう形でも良いけど音として一度聴いてみると結構別世界を味わうことはできます。その上で聴かないという選択肢を取ることもあるし、深みに進むということもあるか。自分は…、あまり前に進まなかったな。

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フレ
Posted byフレ

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