



ある日CDショップをフラフラしながら試聴コーナーで物珍しいものを散策している中、何やら思わせぶりなキャッチコピーが付けられた作品に出会った。悪いがCD屋の店員が書くポップによるキャッチコピーなんぞに惹かれることはまずあり得なくて、それ自体がきっかけとは思えないのだが、やはりそういう素晴らしい音楽ってのは人を寄せ付ける魔力が備わっているのだろうか。そうして出会ったバンドが
EGO-WRAPPIN’
という日本の、大阪のバンド。
そこで出会ったサウンドは
「色彩のブルース」
と呼ばれるマキシシングルで、クレジット上では4曲だが実際には5曲収録しているというヒネたサービス精神もなかなか良いのだが、それよりも曲そのものが素晴らしいのだ。バンド自体は今ももちろんあって、結構売れてるんじゃないかな。ちなみにCDは2001年暮れのリリースなのでウチのブログサイトには珍しく異常に新しいバンド…と言うかユニットなのだ。名前は知らないがボーカルのお姉ちゃんとギターのお兄ちゃんが組んでるんだけど、もちろんバックには様々な楽器があって、しかし、それらは全てジャズ系のミュージシャンで固められている。何せサウンドは古き良き昭和のブルースを奏でていて、怪しさや混沌とした街並みなんてのも表現できているなんか凄い世界で、一発でハマり込んだもんな。この「色彩のブルース」ってのがとにかく素晴らしいんだけど、続く「Nearvous Breakdown」っつうライブバージョンも場末のバーで演奏している堕落したミュージシャンっつう雰囲気がしっかり醸し出されていて、酒とタバコと男の日々、って感じでさ、桃井かおりやマリリン・モンローあたりが役者として登場しててもおかしくないんだよ。で、このバンドの歌のお姉ちゃんがこれまた凄い声量と歌のいやらしさを持っていて聴いていると気持ち良いくらい思い切りの良い歌が聴ける。こういう曲を奏でるんだったらライブはコンサートホールなんかでやっちゃいけないね。ホントに場末のライブハウスやバーでやるのが良いが、日本にはなかなかそういう場所がないのも事実でもったいないな。面白いことにこういうサウンドが若者にウケているみたいでまだまだ日本も捨てたモノではない、なんて微笑んでしまう。
この人達のサウンドの根本には日本のブルースはもちろんあるんだけど多国籍的音楽集団という面も感じられ、特にサックスの奏でるメロディがもの悲しさ=叙情を引き出していて、楽器の持つ表情の豊かさが素晴らしく全面に出されている。これはピアノでもギターでも同じコトが云えるし、特に「かつて」という曲のイントロから奏でられるサックス→ピアノ→ギター→ハイハットという音色の情緒に加えて感情表現豊かな歌声がとどめを刺す。たかが5曲入りのマキシシングルのくせに10数回聴いても飽き足らない音楽の深さをしっかりと教えてくれる作品で、アルバム
「色彩のブルース」
、次作
「満ち汐のロマンス」
あたりの濃い世界が実に好ましくて良い。最近の作品がどういう兆候なのか知らないんだけど、この時期のが一番輝いているんじゃないかな…。
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