Comus - Out Of The Coma

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Comus - Out Of The Coma (2012)
Out Of The Coma First Utterance  [12 inch Analog]

 まさかの再結成、そしてまさかの来日公演、更にまさかの新作アルバムの登場、これでもかと驚くのがその作品の出来映えの秀逸さ。そこまで驚きを与え続けられるバンドとか音ってのもそうそうないんじゃないか?それがしかも英国での活動が40年ほど前で、新作の音が変わらない…って言うか進化しているのが恐ろしい。真のミュージシャンだったんだなと思えるコーマス。昔の作品を聴いている時は単なる時代の流れの一幕で出てきてあのとんでもない狂気の世界「First Utterance」を作り上げた集団だと思っていたけど、何のことはない、コーマスは室内楽や宮廷音楽の流れであの「First Utterance」を作っていたみたいなのだ。随分と感性が異なると違う解釈で出来上がるものだな~と思うものだが、それだって最近知った事実。

 2012年4月にリリースされた待望の新作「Out Of The Coma」は6曲入りのミニアルバム?なワケなくて、フルアルバムとしての重さやスペックをたっぷりと持ち合わせたヘヴィな一枚。ホントにこれ新作か?っつうくらいに今の時代にはあり得ない音楽が詰め込まれていて、正にファースト「First Utterance」の続編ともなるアルバムで、更に磨きがかかって洗練され、贅肉を削ぎ落したような音になってる。かと言って、あの狂気は鳴りを潜めたか?いや、進化してしっかりと存在している。一体何なんだろう、この澄み切った狂気の源泉は?とも思うがBobble Watsonの美しい歌声は普通に聴いたら普通だけど、なぜかComusで聴くとかなり向こう側にいる歌声に聴こえてしまう。それはRoger Wootonの成せる技なのか?何がここまで高揚させる要因なんだろう?そんなことを思わせるくらい自分には高尚な音楽だし、ロックだし触れてはいけない世界だけど見てみたいという世界観でもある。そしてアルバムの最後には組曲として「‪The Malgaard Suite‬」っつう16分ほどの壮大なる楽曲が収められているが、どうやらコイツは1972年のライブを記録した一曲のようで、そりゃもうそれだけで期待満々さ。ご丁寧に序章により解説までされているし、それ自体は何を言ってるのかよくわからんけど、なんか気を引き締めて聴かなきゃって気になると、更に恐ろしくも狂気じみた世界が冒頭から繰り広げられるという素晴らしさ。曲が進むに連れて何とも末恐ろしい世界に自分が連れて行かれることがわかってくる。でも、抜け出せない、救いの手は差し伸べられるのか?そんなことをマジマジと考えてしまう程の正にアルバムのハイライトなのだ。やっぱり全盛期のライブは凄まじいし、なんとリンゼイ・クーパーも参加している正に入魂の一曲なワケで、一気に名盤の域にアルバムを押し上げてしまった。こういう技は反則だろうとも思うけど、それまでの新曲だって全然ヒケを取らないんだから文句もあるまい。更にアルバムジャケットもあの時代のジャケットを彷彿させるデザインになっていて、そもそも音を期待していたんだけど、ここまで見事な世界とは感動!このアルバムジャケットもバンドの要であるRoger Woottonが書いているのだ。

 「Out Of The Coma」はアルバム全編で40分強、うまい具合にA面B面も切り分けられるサイズになっていてアナログ世代の主張とも言えるが、その分アルバムとしての効果は圧倒的に完璧に構築されていて、全く70年代に戻ったかのような魔の饗宴が繰り広げられる。久々にここまでの世界を堪能した。どんなバンドの再結成だって新作だってこんな風には作れないし出せないし、実はオールド・タイムな英国ロックファンが求めていたのはこんな素敵なアルバムだったのかと気づいた次第。まさかそれがコーマスから教わるとは思わなかった。新作ってあんまり真面目に聴く心構えがなかったんだけど、「Out Of The Coma」は完璧だ。完璧にタイムスリップしつつ、今の新しいアバンギャルドなコーマスを楽しめるし、何ら変わっていないコーマスの狂気の姿が嬉しい。こういう音は狙って作れるものなんだ…、それは凄い才能でしかないし、本人たちは全然狂人じゃないんだから…。ただ、こんな音世界にどっぷりと浸かって人生を過ごしても良いなぁ~なんて思う、そんな世界を繰り広げてくれます。なんということだ…。

 もう一度書こう、Comusという英国のバンドの「Out Of The Coma」だ。ただ、英国のあのへんの世界に理解がない人が聴くと恐らく全くおもしろくないアルバムに聴こえるかもしれないのでご注意を。

Song to Comus: The Complete Collection
Comus
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フレ
Posted byフレ

Comments 5

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ヒゲ・スカイウォーカー  
決心しました。

やっぱ買います、これ。前回見た時より安くなってそうですし…。
ここまで書かれてしまったら買うしかあるまい、というわけで。文章読んでるだけでワクワクしてきます←病んでます(笑)
1stはドラッグの力を借りて出来上がったのではなかった、ということなのでしょうか…。

しかし40年ぶりの作品なのにジャケの世界観が統一されているのは素晴らしいですね。まるでTAI PHONGの1st,2ndのような統一感。もっと異形ですけど。

2012/07/15 (Sun) 20:15 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>ヒゲ・スカイウォーカーさん

1stは実はドラッグの影響すらなかったんじゃないかと思う次第です。
純粋に狂気がやれる常人だったってことかと。
んで、コレ…、72年のライブ一曲のためにあっても良いくらい。
もちろん新作もレベル高いしハマるけど、やっぱ全盛期には敵わないね。
ジャケも含め、まだまだ統一された世界観ってのはやる気とアート作品への敬意です。

2012/07/16 (Mon) 07:02 | EDIT | REPLY |   
風呂井戸  
やや、そうだったんですか!

 40年ぶりのプログレッシブ、サイケ、そして美と狂気の再現ですか?全く知りませんでした。今度もヴァイオリン、フルートなどが絡んでくるんですか?、あの恐怖感を導く(当時の私は純粋でしたから)のヴォーカルも・・・・、今となっては懐かしの世界ですけど。
 今度のジャケの方がマンガチックですが許します。しかしあの「First Utterance」のジャケの衝撃は私の人生でも忘れられない一つです。
 是非とも聴いてみたいです。ところでこのCOMUSは、かって2ndが確かありましたよね。

2012/07/16 (Mon) 21:27 | EDIT | REPLY |   
kazz_asai  
COMUS難しいです

COMUS、なんと再結成していたんですね。全く知りませんでした。
久々に「First Utterance」聴いてみましたが、うーん、いつ聴いても私にはよくわからない…。
CURVED AIRのメンバーがPINK FLOYD(初期)をやるとこうなるのかなあ…と以前に聴いた時は漠然と感じましたが、今聴くと純粋にフォークを追究していったらあの奇妙な「歌」が生まれてきたのかとも思えます。
新作も聴いてもう1度考えてみます。

2012/07/17 (Tue) 20:24 | EDIT | REPLY |   
フレ  
Comus!いいよ!

>風呂井戸さん
うん、ヴァイオリンやフルートなどなどの室内楽器が思い切りロックに絡んできます。
ホントに恐怖感漂う世界の再現でして、その新作群を堪能した後にとどめの1972年ライブでヤラれます。

2ndは…、まぁ、なかったことにしましょう(笑)。

>kazz_asaiさん
自分も理解はしてないです、全く。ただ、凄い世界だ!ってのだけわかるくらいで…。
Curved AirがPink Floyd初期…なるほど、もっと激しいからJethro Tullを間に入れてみてください(笑)。

どうも、室内楽とか宮廷音楽とかから入ってロックを取り入れたらああなったらしいです。
だから音楽的にはかなり高貴な世界から底辺のロックを見たというバランスなんでしょうね。珍しいです。

2012/07/17 (Tue) 21:22 | EDIT | REPLY |   

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