Big Brother & The Holding Company - Cheap Thrills

13 Comments

 60年代花のサンフランシスコを代表する歌い手と言ったらやっぱりジャニス・ジョプリンに行き着く。フラワー・ムーヴメント、ヒッピー文化、セックス・ドラッグ&ロックンロールの旗手となったあまりにも有名なブルースの女王。その存在を知らしめたのは1968年発表のアルバム「Cheap Thrills」からだが、ここではまだBig Brother & The Holding Companyという名義でのリリースで、彼女の存在をクローズアップしたものではなかった。しかしアルバムを一聴すればわかるように彼女の圧倒的な歌唱力と魂が全てを支配しており、シスコサウンドやドラッグの影響、ヒッピームーブメント的な音というものは特に感じられず、純粋にブルースを追求した、そして新たなるムーブメントに取り組みサウンドが打ち出されていることに言及した記事は多くない。まあギターの音色自体はこの時期のシスコサウンドと同じだけどね。

 アルバム「Cheap Thrills」は実況録音編集盤なので冒頭のアナウンスの下りからライブ会場にいるような錯覚を起こしてアルバムを聴けるのが良い。「Combination Of The Two」は冒頭いきなり洗濯板を鳴らす音がリズムを刻み、サム・アンドリューの軽快なギターが切り込み、コーラス部隊から歌が始まり真打ちジャニスの叫びからロックンロール開始、みたいな感じで、かなり特殊なサウンド。ジャニスの歌声だけでなくロックサウンドとしてもかなり革新的な音だった。「I Need A Man To Love」でもサイケデリック調なギターサウンドがオープニングを飾るけど、それよりもベースのリズムがもの凄く心地良い…。曲の盛り上がり方もかなり良質の出来映えで、そこにジャニスとコーラス部隊の掛け合いが入るから見事に出来上がってる。ここでのギターソロの音色も乾き切ったサウンドで、かなりクラプトン的って感じもするけど、なかなか曲にマッチしていて良い。そして真打ち「Summertime」。散々ギターでコピーしたけど、ロック界であまり出てこないスケールで始まるフレーズが心地良く、その流れからジャニスのかすれた声が入ってくるのが最高。ギターのオブリガードもひとつひとつが曲に華を添えていて実に素晴らしい名曲名演名唱。ギターソロも最高だし、聴かないと損する曲だよ、これ。
 続く名曲「Piece Of My Heart」も骨格は「Combination...」と同じようなアレンジになってるけど、何と云うのか、曲中を通して凄く暖かい空気が流れていて、ゆとりと云うのか余裕と言うのか、非常に愛が溢れるサウンドと歌い方。多分ジャニスの歌唱力がこの空気感を出しているのだろう。後半のかすれた叫び声のところが心打つポイントか。スタンダードブルースになぞらえた「Turtle Blues」は伝統のアコースティックブルースを実現した曲で、こういう曲がいわゆるシスコサウンドとは大きく異なる面だろう。「Oh, Sweet Mary」は逆にシスコサウンド的側面の強い作品で、かなり独特のサイケ色が出ている。ジャニスにはあまり関係のない曲で、バンドのメンバーが自己主張するために収録してあるかのような印象だ。そして「Ball And Chain」だ。冒頭から強烈なブレイクとエグいギターサウンドがその存在を主張していて、一瞬雰囲気を沈めたところでエモーショナルな歌が入る。その後の曲展開と共にジャニスの歌声が一緒になって感情を表現していく様は見事の一言に尽きる。そして最後の最後でのジャニスだけの歌声によるエンディングは涙無くして聴けない瞬間。

 アルバム「Cheap Thrills」だけでなくこの時期のライブ録音音源は他にも「Live At Winterland 1968」「In Concert」に収録されているのでもっともっとジャニスの迫力を堪能したい人には絶対にオススメ。やっぱライブでの彼女は凄いってのを体験できる迫力を持っている。もちろんBig Brother & The Holding Companyの記念すべきファーストアルバムもジャニスが歌っているので彼女の来歴を知るには必要な一枚になる。

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フレ
Posted byフレ

Comments 13

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リュウ  

>ベースのリズムがもの凄く心地良い…

同感です・・・・。
>ロック界はもちろん出てこないスケールで始まるフレーズが心地良くって、その流れからジャニスのかすれた声が入ってくる

つくづく名文ですね!いやあ、スゴイ!
そうですか、Rock界のフレーズでは無いのですね。
Summertime、絶対真似の出来ない唯一無二のVo!これを知らない人は本当に損しますね。
Janis、本当に偉大・・・。


2006/04/29 (Sat) 22:19 | EDIT | REPLY |   
evergreen  

うまいですね~、うなってしまう書き方。
さて、私はこのBig Brother & The Holding Companyの演奏も凄いと思います。ギターの音がかっこいいなんてもんじゃなく、ジャニス以前にそこがまず驚異!ジャニスに関しては、、大人だな~て、いつ聞いても思います。
Cheap Thrillsのジャケの色が違うね!こんな茶色じゃない気がするが・・・気のせいかな~

2006/04/29 (Sat) 22:46 | EDIT | REPLY |   
V.J.  

どもども。
古い記事にTBありがとうございやす。
QMSだけぢゃなくて、JANISも記事昔書いていますので、TB投げさせてもらいましたぁ~♪

ちなみに俺は、チープ・スリルズよりもコズミック・ブルーズのほうが好きな変わりもんですから、上の2人程、あまりグッと来ませんでした(笑)
すんませんです(苦笑)

2006/04/29 (Sat) 23:48 | EDIT | REPLY |   
ママロック  

わ!これはコメントせねばと、気ばかりあせります(笑)。
BBのファーストなど聴くと、バンドとジャニスがすれ違っていくのを暗示しているようで、せつないです。
強力に時代を反映した音楽!

2006/04/30 (Sun) 02:08 | EDIT | REPLY |   
波野井露楠  

チープスリルカッコいいです。ジャケットも大好きです(^^;)。

>涙無くして聴けない瞬間
本当にそう思います…。
こんなに情熱的な歌を歌い人生を生きた人ってなかなかいないですよね。
私は必要以上に感情移入してしまう性格なので、ジャニスはいつも冷静に聴けないで困っています(^^;)。

2006/04/30 (Sun) 07:39 | EDIT | REPLY |   
harukko45  

ジャニスかぁ。やっぱり特別ですね、彼女は。ある意味、ここまで裸になってブルーズしたのは白人のジャニスだけだったかも。その分、エキセントリックな表現になってしまったところもあるけど、ここまでやらなきゃいられない真実を聴かされる感動の方が大きいですもの。
生きてFull Tilt Boogieとともに、もっと続けていたら、より深いブルーズが聴けたのではと思いつつ、いやこれで良かったのだとも思うのでした。
とは言え、紹介されているCheap Thrillsはほんとにサイコー!楽しませてくれてフレさんに感謝。

2006/04/30 (Sun) 14:22 | EDIT | REPLY |   
papini  
これは涙無くしては聴けない

最近、プログレばっか聴いてる、ちょっとおかしなpapiniです(笑
Janisはやっぱりライブ音源で聴くのが一番だと、アタシも思う。
やっぱりライブの時の彼女、って迫力が違うもん。

これ読んだら、またjanis聴きたくなってきた♪

2006/04/30 (Sun) 21:55 | EDIT | REPLY |   
フレ  
コメント多数感謝!

>リュウさん
心地良いんだよね♪ 名文…かどうかわかりませんが(笑)、褒められると嬉しいです。で、そうですね、「Summertime」のフレーズって多分ジャズ系です。コードなんかもそうなんですけど、ってもともとジャズの曲ですからねぇ…。しかし、そんなことお構いなしに名曲ですからもうそういう問題を超えてます。素晴らしいです、はい。

>evergreenさん
う~ん、そうなのかなぁ、やっぱ褒められると嬉しいです♪ 素直に書くと褒められますな(笑)。うん、バンドの演奏とか曲のアレンジとか結構斬新で、ジャニスの歌じゃなくてもそこそこ良いバンドだったと思うんですよね。ま、そうはいかないけど。で、ジャケット、色確かに変だよね。もっとカラフルだもん…。

>V.J.さん
サンクスです。トラバしました♪ まぁ、ジャニスに関しては色々あるのでいずれ全アルバム取り上げていくと思います。どれも甲乙付けがたい魅力ありますが、これは勢いが凄くて好きですね。

>ママロックさん
ファーストはそうですねぇ、スレ違ってるっつうかジャニスとバックの差がありすぎて…って感じですが、当時は逆に聞こえたのかもしれません。時代の産物、そして魂の叫び、ですね。

>波野井露楠さん
最近ですねぇ、冷静にバックの演奏云々と聴けるようになったのは(笑)。この作品はそういう聴き方しても許されると思うんですよ。クレジットがバンド名なんだから、って勝手に思ってます(笑)。

>harukko45さん
そうですね、黒人の女性の場合はブルースというよりもソウル・ゴスペルというのが多いですから、とことんブルーズってのはジャニスだけかもしれません…。だから未だに唯一無二の存在なんですねぇ…、久しぶりに楽しんでください♪

>papiniさん
ライブ!良いよね!伝わるんだよ、この人のはさ、映像でも。ナマだったらとんでもないだろうなぁ…。プログレから一気にジャニスってのは凄く差があるけど感動するのは一緒でしょうっ!

2006/05/01 (Mon) 22:13 | EDIT | REPLY |   
seira.D  
Janis JoplinのBluesって。。。

聴けば聴くほど感動しちゃうのJanis Joplinですね。
彼女の成育過程も歌に現れていてなんともいえないときがあるんだけど、そんな背景や心理状態を歌に表現して歌い上げる彼女が今でも私のカリスマです。

2006/05/02 (Tue) 19:42 | EDIT | REPLY |   
ストリ~ム  
ご無沙汰しております

久し振りにお邪魔したら、ジャニスでした。
たまたま今日よちよち歩きの記事書いたところです。
TB失礼いたします。

1ヶ月ほど前に本拠地を移しました。
そちらにもリンク貼らせて頂きたいのですがよろしいでしょうか?

2006/05/02 (Tue) 21:55 | EDIT | REPLY |   
フレ  
多々感謝!

>seria.Dさん
成育過程ですか…、その辺素直に出ちゃう人ですからねぇ…。多分毎日表情の違う曲が聴けた人でしょう。あまりにも弱々しい彼女の心があったからあのエモーショナルな歌い方ができたのかもしれませんね。

>ストリ~ムさん
ども、お久しぶりです。リンク全然OKです♪こちらも張っておきますね。

2006/05/03 (Wed) 07:57 | EDIT | REPLY |   
Hiroshi-K  
お久しぶりです

いやぁ~、相変わらずの素晴らしい記事&書き込みペースですね。

Janisの「Summertime」を聴いたのが中学1年生の夏。その時の “なんじゃ、こりゃ~!!”って感じの衝撃は今でも覚えていますね。その明るくて力強く、そして少しだけ見え隠れする愁いというか物悲しいボーカルは、やはり唯一無二ですね。

「Summertime」も良いですが、ラストの「Ball and Chain」も好きですね。特に『In Concert』でのパフォーマンスは鳥肌ものです。

2006/05/03 (Wed) 09:32 | EDIT | REPLY |   
ストリ~ム  

リンクの件、ご承諾いただきありがとうございました。
早速貼らせていただきました。
これからもよろしくお願いいたしますm(_ _)m

2006/05/03 (Wed) 16:33 | EDIT | REPLY |   

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