



1960年代末、サンフランシスコではフラワームーヴメントが沸き起こり、ヒッピー文化が最先端となったいわゆる幸せの幻想時代となるが、先のジェファーソン・エアプレーンと共に時代の寵児となり、その精神思想が歴史を築き上げて超ユートピアファン層を獲得し、更にそれが世代を超えてひとつのアイコンとなった英雄的なバンドが
グレイトフル・デッド
だ。グレイトフル・デッド…美しいバンド名だ。そして街で見かける数々のシンボルマークともなったデッドのイラスト、どれもこれもが一見おどろおどろしい面を持ったもので、そういった周辺状況を見ているととても手を出す気にはなれないバンドなのかもしれない。ある意味宗教団体のようなものだから。
そんな深い意味を知るまでもなく、単純にロック名盤として語られた雑誌を見たことから17歳の時に初めてデッドのアルバムを聴くこととなった。ファーストアルバム
「The Grateful Dead」
だ。そして17歳にこのアルバムはあまりにもヘヴィー過ぎた。サイケデリック的アーティスティックな面が養われていない時期にこのようなドラッグ思想に支えられたアルバムはまともに聴けたモノではなく、以降二十年近く
グレイトフル・デッド
と云うバンドは封印されたままだったんだな。ことある毎にデッドヘッズと呼ばれるマニアやコレクターなどに出会い、彼等はコミューンを形成してネットでも盛んに交流をしている。そして新参者であろうが古くからのファンであろうがごくごく親しみやすい環境を作っていて非常にオープンな姿勢のファンが多く、そして明るいのだ。何を自慢げにするでもなく、デッドを押し付けるでもなく、ごく普通のロックファンとしてもちろんアメリカの良き時代の理解者として接してくれる人が多かったのだ。そこから受ける印象は決してデッドのおどろどろしたイメージではなく、またドラッグまみれな幻想を持ったイメージでもなく、かなりさわやかな印象さえ受けるものだった。
「ん? でもデッドだろ~?(←17歳の記憶が甦る…×××)」
が、多数のうわさ話や情報過多になってきた昨今、そしてデッドの後継者とも云われる
Phish
という集団によるユニークなハロウィンの試み…、などなどと状況も情報も変わってきた頃にふとデッドに再挑戦してみようという気になったのであった…。
聴いたアルバムは
「Live / Dead」
。いやぁ~~~~~驚いた。何という素晴らしいアルバム!インプロビゼーションでのみ構成されたと云っても過言ではないくらいのライブ即興バンドの醍醐味を一気に味わい、且つ驚くことにそれが全くストレスを感じないさわやかな浮遊感に包まれたサウンドがスピーカーを奏でている。英国のインプロバンドだったら絶対に疲れてしまうであろうあの瞬間が皆無なのだ。ベックの「Blow By Blow」のような湿っぽさはかけらもなく、プログレバンドのようなハマり度もなく、ただただひたすら心地良い音色が空気と共にカラダをすり抜けていく、そんな美しいサウンドなのだ。そしてそれこそがユートピアの世界、ヒッピー思想なのかもしれないしドラッグサウンドなのかもしれないけど、実に美しくて驚いた。心底驚いた。スタジオアルバムの名作と呼ばれる
「Aoxomoxoa」
もいいけど、やっぱりライブでその本領を発揮する。時代の象徴ともなったフィルモアウェストのライブを収録した
「Fillmore West 1969」
も絶品だし、ハマっていくとどんどんとこの時期の音源が山積みにリリースされており、更にコレクター間での音源も自由に解放されているので正直キリがない世界だ。しかしハマる人の気持ちがよくわかる素晴らしいバンドで、これを聴かずして一生終わることなくって良かったのかなぁとも思う。
改めて、
偉大なる死、グレイトフル・デッドを褒め讃えたい。そして英雄ジェリー・ガルシアに冥福をお祈りします。グレイトフル・デッド。
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