



コンセプトアルバムという作品はいくつもリリースされており、もちろんそのパイオニアとなったバンドがどれなのかはなかなか議論にケリが付かないのだが、プリティ・シングスの
「S.F.ソロウ」
という作品もその狭間に位置している作品だろう。アルバムリリース自体はザ・フーの
「Tommy」
よりも早かったもののそれを世に知らしめる役割を担うレコード会社の方が難色を示していたため売り出されなかったという不運もあり、一般的知名度を獲得することなくこの
「S.F.ソロウ」
という傑作はサイケの名盤として語られることとなったのだ。同様にキンクスの「Village Green」も売り手側がそういう売り方を考えつかなかったためにこれもまた
「Tommy」
のロックオペラ論に全ての話題を持って行かれてしまったようだ。もっとも本人達がそんなことを気にしていたのかどうかは知らないが。余談だがザ・フーのピート・タウンジェンドはキンクスのファンだし、プリティ・シングスもリアルで聴いていた人だ。
さて、このアルバム、「S.F.」と付くが「セバスチャン.F」という人の「S.F.」なのでいわゆるサイエンス・フィクションの意味ではない。即ち「セバスチャン.F.の悲劇」というストーリーアルバムなのだ…。
それまでブルースロックバンドだったプリティ・シングスにサイケデリックの波が訪れ、ドラマーにはあの、
トゥインク
が参加し、より一層のサイケ色に拍車がかかるわけだが、この
トゥインク
って人もまたロック史を飾るに相応しい人物なのでいずれまた…。で、1967年にこの作品
「S.F.ソロウ」
をリリースしたが、モロにサイケデリックなジャケットと音に包まれたアルバムで、さすがに英国と舌を巻く曲の作りとメロディーセンスは凄いなぁと実感するし、中でも5曲目の「風船は燃えている」って曲での正に60年代を象徴する熱い演奏はライブでの盛り上がりであれば凄いんだろうなぁと想像されるかっこいい作品で面白いなぁ。もしかしたらこのバンドの演奏って他のどのバンドのよりも良いのかもしれない。でも売り方が下手だったんかな。そりゃ、まあ、ディック・テイラーの運命がそのままバンドの運命になっているような気もするが(笑)。ちなみにこの人初期ストーンズのメンバーでベースを弾いていた人です。
そんなプリティ・シングスの作品だけど、次作
「Parashute」
もサイケ調の作品でなかなかの快作。やっぱ英国の60年代出身のバンドは実力が違うよな。
「S.F.ソロウ」
と比べるとちょっとさっぱりしちゃった感じがあって、混沌さがないのが時代を反映していると思うんだけど、それでも楽曲のレベルは相当なもので、これは英国ロック好きだからそう聞こえるのかもしれないけど、どこからどう切り取っても英国的なメロディやサウンド、コラージュも含めて興味深い曲ばかりなので良い。ジャケットも相当ヘンだからなぁ。あ、気持ち良く聞こえるのはもちろんドラッグ向けのアルバムだからでしょうね。サイケだし、時代だもん。
ちなみに1977年頃になるとZeppelinのSwan Songレーベルからのアルバムリリースとなり、
「Savage Eye」
なんてのがヒプノシスのジャケットでリリースされているんだけど、ここでのプリティ・シングスは見事な英国ハードロックバンドに生まれ変わっているので驚き(笑)。メンバーの変化が絶え間なく行われているバンドだったからだろうけど、彼等なりに時代を生き抜いていく術を一生懸命模索していたんだなぁと思う。
ちなみに1999年かな?メンバーが再結集して、ギタリストにあのデイヴ・ギルモアを迎えて
「S.F.ソロウ」
の再演をしたんだけど、CDとか出てるのかな?まあ、ギルモアさんだから出さない可能性もあるけど、そんなトコロで今でも当時のアーティストネットワークが繋がっているっていうのは面白いなぁと思う。
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