King Crimson - Starless and Bible Black
1. The Great Deceiver
2. Lament
3. We'll Let You Know
4. The Night Watch
5. Trio
6. The Mincer
7. Starless and Bible Black
8. Fracture
Credit: Robert Fripp, David Cross, John Wetton, Bill Bruford


完成度が高くいつまでもロックの名盤として語り継がれるほどの作品をリリースできるバンドはそうそう多くはない。練りに練って、また時間をかけにかけて「製作」されたアルバムでも歴史に残る作品は数多くあるものだが、全くの対極に位置するのが即興で録音されたアルバム。単に即興で録音されたロックのエナジーを封じ込めた熱気ムンムンの傑作、というのはライブ盤などではあり得るし、またパンクに代表される勢いによるパワーはある。でも、King Crimsonの場合は大きくその手の意味合いとは異なっていて、それはFrank Zappaと近い手法を用いてロックの歴史を彩っていると言えよう。
1973年11月23日にアムステルダムで行われたKing Crimsonのライブはしっかりと録音されて、今では単体でライブアルバムとして聴けるようになっているので、何も驚くことはないのかもしれないが、このアムステルダムのレコーディングの素材…と言うか、この頃のKing Crimsonというのはひたすら即興によるライブを繰り広げていて、その様子はライブセット「The Great Deceiver, Vol. 1」「The Great Deceiver, Vol. 2」で聴けるものだ。恐ろしいほどのテンションでそれぞれのインタープレイを堪能して、己もまた挑戦者として参加していくというような、正に戦争をしているとばかりの緊張感漂う即興プレイが常だった。Led Zeppelinのライブも似たような部分はあったが、King Crimsonのフリーフォームによる即興性は完全に突き抜けていた。
「暗黒の世界」という作品はそのアムステルダムのライブレコーディング素材をベースにして…、言い換えるとライブの即興セッションに曲名を付けた、に等しいくらいにライブで出来上がっているものが大半だ。「へ?」ってな感じでして…、「どこが?」と言いたくなるくらいの完成度の高さに驚く。繊細なフレーズや迫力ある緊張感漂う演奏、そしてジョン・ウェットンが違和感なくボーカルで入ってくると言う姿を聴いているとそれはいくらなんでもある程度曲が決まっている部分あるだろ?と思うが、概ね決まったフレーズではなくバンドアンサンブルで曲が成立しているらしい。もっともライブでひたすら繰り返した結果の完成品ではあるようだが。スタジオで多少手直しをしているものもあったり、スタジオ録音作品もあったりするが、「暗黒の世界」というアルバムの醍醐味は何と言ってもテンションの高さと緊張感。そして何が出てくるのかわからない楽しみ、更にメンバーの圧倒的な演奏力。
King Crimsonの7作目の作品で、解散1年前のライブレコーディングをまとめた代物で、この後「レッド」と言う名盤をリリースしてバンドは突然の解散。もっともこのテンションでバンドが進んで行ったらとてもじゃないがメンバーが持たなかっただろうというのはよくわかるくらいの緊迫感がバンドを制圧している。しかし「レッド」での緊張感もとてつもないもので、「太陽と戦慄」「暗黒の世界」「レッド」という三部作のテンションの高さと完成度の高さは異常だろう。
…、文章も堅く書いてみたけどやっぱ疲れる(笑)。久々のクリムゾンだけど凄いわ~、やっぱり。独りで聴いてハマってるとそのテンションの高さと緊張感がヒシヒシと伝わってくるしさ。静かな空間の中を切り裂くように始まるリフとかもう全てが攻撃的で破壊的…でも優しい旋律がいくつも待っていてくれるというか…、凄い。
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