King Crimson - Starless and Bible Black

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King Crimson : 暗黒の世界 (1974)

1. The Great Deceiver
2. Lament
3. We'll Let You Know
4. The Night Watch
5. Trio
6. The Mincer
7. Starless and Bible Black
8. Fracture

Credit: Robert Fripp, David Cross, John Wetton, Bill Bruford

暗黒の世界(紙ジャケット仕様) The Great Deceiver, Vol. 1

 完成度が高くいつまでもロックの名盤として語り継がれるほどの作品をリリースできるバンドはそうそう多くはない。練りに練って、また時間をかけにかけて「製作」されたアルバムでも歴史に残る作品は数多くあるものだが、全くの対極に位置するのが即興で録音されたアルバム。単に即興で録音されたロックのエナジーを封じ込めた熱気ムンムンの傑作、というのはライブ盤などではあり得るし、またパンクに代表される勢いによるパワーはある。でも、King Crimsonの場合は大きくその手の意味合いとは異なっていて、それはFrank Zappaと近い手法を用いてロックの歴史を彩っていると言えよう。

 1973年11月23日にアムステルダムで行われたKing Crimsonのライブはしっかりと録音されて、今では単体でライブアルバムとして聴けるようになっているので、何も驚くことはないのかもしれないが、このアムステルダムのレコーディングの素材…と言うか、この頃のKing Crimsonというのはひたすら即興によるライブを繰り広げていて、その様子はライブセット「The Great Deceiver, Vol. 1」「The Great Deceiver, Vol. 2」で聴けるものだ。恐ろしいほどのテンションでそれぞれのインタープレイを堪能して、己もまた挑戦者として参加していくというような、正に戦争をしているとばかりの緊張感漂う即興プレイが常だった。Led Zeppelinのライブも似たような部分はあったが、King Crimsonのフリーフォームによる即興性は完全に突き抜けていた。

 「暗黒の世界」という作品はそのアムステルダムのライブレコーディング素材をベースにして…、言い換えるとライブの即興セッションに曲名を付けた、に等しいくらいにライブで出来上がっているものが大半だ。「へ?」ってな感じでして…、「どこが?」と言いたくなるくらいの完成度の高さに驚く。繊細なフレーズや迫力ある緊張感漂う演奏、そしてジョン・ウェットンが違和感なくボーカルで入ってくると言う姿を聴いているとそれはいくらなんでもある程度曲が決まっている部分あるだろ?と思うが、概ね決まったフレーズではなくバンドアンサンブルで曲が成立しているらしい。もっともライブでひたすら繰り返した結果の完成品ではあるようだが。スタジオで多少手直しをしているものもあったり、スタジオ録音作品もあったりするが、「暗黒の世界」というアルバムの醍醐味は何と言ってもテンションの高さと緊張感。そして何が出てくるのかわからない楽しみ、更にメンバーの圧倒的な演奏力。

 King Crimsonの7作目の作品で、解散1年前のライブレコーディングをまとめた代物で、この後「レッド」と言う名盤をリリースしてバンドは突然の解散。もっともこのテンションでバンドが進んで行ったらとてもじゃないがメンバーが持たなかっただろうというのはよくわかるくらいの緊迫感がバンドを制圧している。しかし「レッド」での緊張感もとてつもないもので、「太陽と戦慄」「暗黒の世界」「レッド」という三部作のテンションの高さと完成度の高さは異常だろう。

 …、文章も堅く書いてみたけどやっぱ疲れる(笑)。久々のクリムゾンだけど凄いわ~、やっぱり。独りで聴いてハマってるとそのテンションの高さと緊張感がヒシヒシと伝わってくるしさ。静かな空間の中を切り裂くように始まるリフとかもう全てが攻撃的で破壊的…でも優しい旋律がいくつも待っていてくれるというか…、凄い。



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フレ
Posted byフレ

Comments 3

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*floyd  
胸が熱くなる・・・・

 このころのクリムゾンを思い出すと、ほんとに苦しいほど胸が熱くなります。そして無数に近いブートレグを探し求め聴きあさったあの頃は、歳とは関係無しに私のほんとの青春だったのかも・・・。 今もその残骸が棚に詰まっていますが・・・、オフィシャル・ライブものが聴かれるようになって既に長い年月が経過しましたが・・・、でも音の悪いブートでライブに接したときの感動は忘れられるモノではありません。
 私はクロスもウェットンもブラッフォードも好きです。フリップは当然ですが、ほんとに彼らは凄かった。

2010/05/29 (Sat) 21:59 | EDIT | REPLY |   
segador  

まさに、クリムゾン黄金期の作品でしょうなぁ。
個人的には「太陽と戦慄」の次に好きな音盤だったりします。
なんか、この辺のブートをとってもたくさん買ったような記憶がありますが(笑

あ、そう言えばツイッターし始めたんですね、フレさん。
あの、個人的にどうもなんていうか、仕組みが今ひとつわからないので、手をつけてなかったりするんですが・・・(笑

2010/05/31 (Mon) 07:19 | EDIT | REPLY |   
フレ  
もっともっと聴きたいクリムゾン!

>*floydさん
「Astral Navigation」の衝撃はありましたねぇ~。「Nuclear Fusion」とかも驚いたし、そのヘンだと今はオフィシャルになっちゃったけど69年のマーキーのライブ「The Lurking Fear」なんてぶっ飛びものでしたよ。そこに4CDセットが出てきて、オフィシャルブートシリーズで…。クリムゾンってライブの本数限られてるからブートも割と揃えやすかったんですよね。69年数本、71-72年は音良いの少ないけど演奏はとんでもなく混沌としてるし、73年最初はジェイミー・ムーア参加だからこれがまたエグくて…、そこからは言わずもがなの世界で74年のラストライブで完結。聴き倒しましたねぇ~、クリムゾンは。

>segador嬢
「太陽と戦慄」の次…ってことは前もあるんだよね(笑)。いや、これ以降の三枚はセットなんだよ、自分的に(笑)。あとは1st。う~ん、邪道だろうけど、インパクト順だろうな、きっと。いや、他のも凄い好きだけど、敢えて、ならばね。

twitter…仕組みはよーわからん。簡単に言うと友達の友達は皆友達だ、といいなっていう世界観。情報収集ツールの一環だね、これ。発信しても常に注目されるネタ振れないもん。

2010/06/01 (Tue) 23:39 | EDIT | REPLY |   

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