Nightwish - Once

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 フィンランドの雄と言えば思い出すのは…、自分的にはHanoi Rocksが筆頭だが、それ以来ほとんどフィンランド出身のバンドなんて耳にすることもなかった。メタルが市民権を得るようになってからは徐々にヨーロッパでも盛り上がっていったことで、中でもフィンランドがメタル王国として君臨する事となっと知ったのもそれほど古い話ではない。そう考えるとHanoi Rocksって特殊なバンドだったんだな、と認識を改めるのだった。いやいや、Hanoi Rocksの話はともかく、フィンランドから世界を制したバンドという意味で、Hanoi Rocksの存在はフィンランドのバンドは世界制覇を夢見ることが出来たのじゃないだろうか、などとも思うワケですよ。

Once ワンス

 飛ぶ鳥落とす勢いで世界制覇を実現していったフィンランド出身のゴシックメタルバンド…否、シンフォニックメタルバンド、というべきのNightwishのターヤ在籍時代最後のアルバム「Once」にして最高傑作。このアルバムこそがNightwishだ、と自慢できる素晴らしいレベルの作品をアルバム全編に詰め込んだ傑作でして、うん、自分がこの辺聴くようになったのもこの「Once」というアルバムがあったからだ。最初の「Dark Chest Of Wonders」の複雑なアレンジとバンドの演奏力の高さが素晴らしく、更にシンフォニックな楽曲とそれでいて覚えやすい哀愁漂うメロディと華麗なる歌声が堪らない。正に非の打ち所のないダイナミックさと繊細さを持ち合わせた楽曲で、一気に音の洪水の虜にさせられるものだ。その感動の余韻の次に間髪入れずに続けられる「Wish I Had An Angel」というメランコリックなタイトルとこれまた最高峰のシンフォニックとパワーメタルの融合作。ターヤの華麗なる歌声で展開された後のサビ部分ではマルコの力強い野性的な歌唱力が楽曲を制圧して完璧な世界観を創造している。一体何でこんなのができるんだ?ってくらいに完璧。マルコの歌唱力もターヤとの対比となると、より一層パワフルに聞こえるから面白い。その対抗として存在できるターヤの歌唱力は言わずもがな。続く「Nemo」も静と動のコントラストが見事にはっきりした歌唱力を聞かせる雰囲気の曲。その背後でのアレンジが緻密に練られているのは当然の事ながら、更に楽曲の持つ美しくも儚げな雰囲気がしっかりと伝わってくる素晴らしい作品。決してバラードでは無いのに切々と綴れるあたりが単なるメタルバンドとは異なる音楽家達。「Planet Hall」のイントロを聴いてノレないリスナーもいないだろう。更にマルコの強烈で野性的な歌声を聴いて楽曲に興味を持たない人も少ないだろう。そしてパワフルかつ繊細な楽曲アレンジについてはここでもまた驚くばかりで、これだけギターが歪んでいて目立っているにも関わらず楽曲全体のパワーが凄すぎてダイナミックさやパワフルさの方に耳が向いてしまうのだ。

 ここまでの流れが強烈なので、アルバムとしての評価もダントツに挙げられるし、そんな完成度を持った作品ってのはほとんど見当たらない。聴いている方もこれは一気にハマってしまって楽しめる、と言うよりも圧倒されるという言葉の方が適切かもしれない。一息付けたのは「Creek Mary' Blood」という曲が純粋にフィンランド民謡の雰囲気も持ったバラードチックに始まる曲だから。美しいアコースティックギターで奏でられるターヤの歌声と縦笛による牧歌的にすら聞こえるムード作り…行ったことないけどフィンランドってこういう所なのかな、という想像を逞しくしてしまうような音色だ。もちろん単にバラードで終わるはずもなく、バンド全員の音が入ったクサクサの展開に進むが、単にクサいという事はまずあり得ないので楽しんでほしい。何故なら終盤では思いがけない展開にどんどん進んでいく曲だし、それでいて8分半あるのだから一大叙情詩とも言える大作ですよ、これ。自分たちの音をしっかりと主張しながら大作に於いても飽きることない作りをしていて、演奏はとんでもなく上手いので更に楽曲が昇華されるってもんでしてね…、いや、凄い。続く「The Sire」はアルバム内ではちょっと異色な横ノリな感じの美しい楽曲で、Nightwishの深みを感じさせる。その後の「Dead Gardens」はアルバム初頭に組み込まれていてもおかしくないくらいのパワフルな曲で、またまたクラクラさせられるくらいに圧倒されるが、ややシンフォニック要素を抑えているのかな。「Romanticide」も同様で、ちょっとだけギターが目立つようなパワーメタル。ただ、やっぱりコーラスワークでNightwishらしさは出てくるし、一辺倒では進まないアレンジの深さも見事。こういう深みが普通のバンドとは明らかに異なる凝り性なトコロで、余計なものが展開されるというのではなく曲の流れに必要だから展開していくという自然さが見事。いや、素晴らしい…。そしてまたしても大作「Goast Love Score」だが、今度は最初からハードに攻め立ててくるもののやはり展開が多様で、ツォーマスの鍵盤が圧倒的に活躍している見事なもの。ただ、やや散漫な印象を与える部分がある気もするが、それも些細な印象。とにかく詰め込んでみましたという濃い~楽曲のひとつで、これもまたNightwishの楽しみ。これを聞き終えると相当ぐったりしてきます。それを察してか「Kuolema Tekke Taitelijan」というフィン語での曲は静かにシンプルに癒してくれる楽曲です。こういう繊細さも見事だなぁ~とつくづくNightwishというバンドの底力を感じる次第ですな。アルバム最後は同じく静かめの楽曲「Higher Than Hope」で締めてくれます。もっとも後半はヘヴィメタルなバラードの展開をするけど、それでも疲れた耳を癒してくれるには十分な美しさを持った曲。

 いや~、疲れるアルバムですなぁ、「Once」は。結構車でも流していたり家でも流していたりするので慣れているつもりだったけど改めてじっくり聴いていると「Once」の名盤さ加減に惚れ惚れする。こんなに完成度が高い作品をリリースし続けているバンドってそうそう無いから今後も追い掛け続けるだろうなぁ。未聴の方は是非試して下さい。濃い~世界を楽しめます。



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フレ
Posted byフレ

Comments 3

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*floyd  
目下ニュー・アルバム待ちですが

 Nightwish は、あのゴシック・メタル?・シンフォニック・メタル?グループではやっばり最右翼ですね。特にターヤの歌唱力はライブでは絶対でしたね。現在のアネッテはライブでガックリきます。
 それはそれとして、nightwishの素晴らしさは、ツォーマスの音楽的構築の才能が優れている結果なんでしょうね。目下ニュー・アルバムに関わっているようですが・・・・。私はほんとはターヤで聴きたいんですが・・・・。(涙)

2010/05/29 (Sat) 21:35 | EDIT | REPLY |   
*floyd  

 もう一つ追加ですが、私はやっぱロックはライブですね。その意味でもDVD「End Of An Era」は、歴史に残る素晴らしい一枚と思っています。そこで、先日Blu-Ray もかってみたんですが、これは映像的には何も良くなっていません。つまり元の映像がそこまでなんですね。最近Blu-Ray化も色々とありますが、元の映像記録法によって良くなるモノと、全く無意味のものとありますね。

2010/05/30 (Sun) 15:15 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>*floydさん

奇跡のバンドと思っとりまして…、ここまで強烈にメタル且つシンフォニックでテクニックはバッチリで躍動感があってメロディがしっかりしていてロックで魅せられて、更にマルコの野獣性とターヤのオペラボイスという鉄壁の布陣は唯一無二でしょう。アネットについては最初は抵抗ありましたけどね、来日公演見てからはまぁ、いいか、ってのあります(笑)。それと「Dark Passion Play」が過去最高じゃないかっつうくらいの作品の出来栄えなので、何回も聴いてしまっていてアネット嬢に慣れたってのありますね。
「End of An Era」の画質…、いや~DVDでも相当綺麗なので自分的には納得してますが、まぁ、Blu-Rayでクォリティを見せつけることのできるのはここ最近の映像くらいでしょう。古いロックの映像なんてどれもこれもどんだけリマスターしても今の技術によるクォリティには絶対にならないですもん。おかげでBlu-Rayに焦って進まなくて良い自分がありがたいです(笑)。

2010/06/01 (Tue) 23:29 | EDIT | REPLY |   

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