Led Zeppelin - Presence



さて、そのプラントが怪我してリハビリをしている最中からジミー・ペイジは合流してせっせと曲作りに励んだようだが、走り続けていたツェッペリンがプラントの事故で止まってしまった時、他のメンバーは家族団らんの時間を持てたことで喜んだようだが、真のミュージシャンで脂の乗りきったジミー・ペイジはバンドなし、音楽なしでは生きられなかった人のようで、妙に凝りまくった作品が大半を占める。プラントもあまり余ったエネルギーの全てをぶつけてきており、まぁ、並じゃないレベルの作品を録りまくった。それがこの「プレゼンス」だ。勢いと技術とのせめぎ合いに基本的なリズムでの勝負も入ってくることで圧倒的な存在感を示したタイトル通りの作品。
冒頭の「アキレス最後の戦い」からして10分半もの長い曲だが、これがプログレのダラダラとしたものではなく、思い切りハードでエッジの立った、そして複雑で緻密に詰められた結果の長さなのだから聴いていて驚くばかり。長いとかは一切感じることなく、そのテンションの高さと迫力、リズム隊の圧倒的な存在感の上によくもまぁメロディがついたもんだと感心するくらいのプラントの歌、もちろんどこからこういう発想が浮かぶのかというくらいに豊富なアイディアを詰め込んだジミー・ペイジの天才的センス。ジョンジーをして、「ジミー、キミの探しているスケールはこの世の中にはないんだよ」と言わせてしまったくらいヘンな旋律の上昇下降入り混じったフレーズが何度も登場する疾走感。イントロとエンディングにしか出てこない天才的なアルペジオ…。やっぱり勢いかなぁ、この曲は。こんなに複雑で長くて決まった感じの曲なのにライブでは更に自由にギターを弾いたりアレンジを加えていたりするのもさすがにツェッペリンと唸らせる。そういえば、終盤に差し掛かったころの「Ah Ah Ah」の所なんて普通では4回のところを5回で回していたり、前半でもリフを奏でる弦楽器隊に対してフレージングを間違って捉えたボンゾのミスもそのまま収録していたりして、聴けば聴くほどに味が出る。いや、結局最後は凄ぇ~で終わるんだけど(笑)。そして2007年12月10日のツェッペリン再結成ライブで登場した「For Your Life」。こちらは音の空間と新解釈ブルースとも云えるミドルな響きが心地良い曲。これももう圧倒的にボンゾの黒い音に影響を受けながら更にロックの音として持ち込んだ重低音なドラミングとリズムによる効果が圧巻な一曲で、シンプルな曲構成ながらも聴かせてくれる。こういう「待ち」ができるバンドって今はないし、当時もなかっただろう。希有な存在ですよ、やっぱり。それとアーミングを使っていることでわかるけどストラトで弾いてるんだよね、これ。その姿ってのはあまり浮かばないけどちょっくら驚いたもんだ。続いては一気にドタバタとした感じのする「ロイヤル・オルレアン」というこれもまた変わった曲で、そもそもツェッペリンってのは実はギターの音があまり歪んでいないので何でも対応できるんだけど、この「プレゼンス」というアルバムではそれが顕著に出ている。故にハードロックらしいハードロックってのがない。その中で「ロイヤル・オルレアン」ってのはこれもまたリズム重視で出来上がったもので、ソリッドな音でカチャカチャと鳴っているギターとやっぱりボンゾだな。プラントはこういうのキライじゃないからノリノリで歌っている感じでさ、スタジオセッションではかなり楽しんだであろう感じがする。あぁ、不思議な曲だ…カリプソとソウルのミックスなのかな、決して上手くはないジミー・ペイジのギターが絡むのも面白いが(笑)。そんな所でA面が終わり、圧倒的に「アキレス最後の戦い」のインパクトが強くて、続く二曲はそのインパクトと疲れを癒してくれる意味合いが大きいために空間の多い曲と疲れない曲になっていたのだろう。
「プレゼンス」のジャケットはヒプノシス…って見りゃわかるか(笑)。不思議なオブジェクトがそこかしこで存在しているということ=「プレゼンス」という意味合いでもあるようだが、あまり好きじゃなかったなぁ、このジャケットは。どこかツェッペリンらしくないと言うか、芸術性もあまり感じられなくてね、よくこんなのジミー・ペイジがOK出したもんだと思うけど、今でも見ていて飽きないってのは凄い。好きじゃないけど中ジャケまで色々と見ていて何だろなぁ~と飽きないもん。ヒプノシスって大体そうなんだけど、多分考えても意味ないから考えないけど気になる(笑)。それよりもスワンソングのレーベルってかっこよいなぁ~とか、そっちに行っちゃうってのもあったかな。
そしてB面はこれまたガツンと「俺の罪」というパクリともカバーとも言われるがどう聴いてもオリジナルだろう、これは。プラントとペイジでしか出来なかったであろう冒頭のユニゾンからして強烈、そこにリズム隊が絡んでくるんだが、これもまた凄くてメロディ隊とリズム隊が完全に別のことやってるみたいにぶつかり合って進められる。それが途中から一緒になるから面白い。この辺になると自分達の出来ることが相当レベル高くなってりうから単にギターフレーズに対してキメを打つリズム隊としても一風変わった取り組みをしているんだろうけど、それにしてもあり得ないだろってくらいのキメワザ。これもまたリズムな曲だが、プラントの歌も本領発揮とばかりに雄叫びを上げまくっている。そしてジミー・ペイジもここでは弾きまくったギタリストになっていて、最もツェッペリンらしい一面が出ている曲で、ハードロック的です。だが、やはりリズムが中心になっているからこの時期の特徴がよく出てきてるし、ギターの音色もかなり変化しているのもよくわかるし。そして「キャンディ・ストア・ロック」ではシャープでソリッドでドタバタしたツェッペリンらしいロックが聴けるね。もうちょっとこの曲ってクローズアップしてあげてもよかったんじゃないかと思えるくらいの出来映えでしてね、うん、ハードなギターの音に加えてしっかりアコギが入ってるから面白くてさ、三枚目のアルバムみたいにアコギ中心で考えてたら、この曲もアコギで出来ちゃったんだろうな、なんてのがわかるから勝手に想像できる。それでもこういうアレンジとノリにしたのはこの頃の勢いだろう。途中な曲を繋ぐパートがあるんだけど、そこが妙~に浮いていてプログレッシブな雰囲気を出しているのは自然ながらもひとつづつの音を無駄にしないでフレーズとして使っているかってのがある。しかしここでもリズム隊…ボンゾの圧倒的な存在感が目立つ。続くはこれもまた空間を利用した曲でA面の「For Your Life」に対抗したものか?それにしてもこういう普通のリズムの中で変拍子的に聴かせるフレージングってのが面白くてさ、ツェッペリンらしいよね。こういうの聴くとついコピーしたくなるし、どういう風になっているんだろう?っていう興味が沸くもん。しかし楽曲の重さに反比例してえらくキャッチーでメロディのある歌の旋律ってのもこれまた狙い通りなんだろうけど、さすがだなぁと唸らせる。アレンジを全く変えてしまったら何の曲かわからなくなるだろうけど、ポップに聞こえるだろうなぁとちょっと想像を駆り立てる曲かも。しかし…、かっこよい。こういう曲ってのも飽きないなぁ。終わったと思ったらまだまだ続くという曲構成もツボを突いてるしさ(笑)。そして最後の真打ち「一人でお茶を」。スローブルース…というだけでは言葉が足りなくて、アダルトな大人の雰囲気が漂うブルースをオシャレに解釈した曲で、ギターの音色やフレーズ、歌の感情表現などなど基本的にブルースを繰り広げていたツェッペリンならではの味わいが聴いて取れる素晴らしい作品。メジャーどころではあまり出てこないがディープなファンには圧倒的な支持を得る傑作。9分半にも渡るブルージーな空気の中には感情の起伏と音への表現、そしてギタリスト、ジミー・ペイジここにありと言わんばかりの弾きまくり姿も心地良い。こういう引っ掛かりのあるギターってのはこの人にしかできないでしょ(笑)。正に成熟したツェッペリンの最後のブルースソング。
「プレゼンス」ってさぁ、初期のツェッペリンのアルバムほど取っ付きやすくないんだよね。だから最初は難しかった…ってか、リズム隊が強調されすぎてたからかもしれない。ギターに情熱を燃やして聴いている頃はやっぱ初期聴くからさ。でも、だんだんツェッペリンそのものが好きになってくるとあちこち気になって…、それで「アキレス最後の戦い」をバンドでコピーしてみて、その凄さと緻密さとかっこよさに内側から気付いたっていうかさ、聴いている時だけの感覚じゃなくてね、そういうのがあってからこのアルバムが凄く面白くなった。完璧なアルバムってのはそうそうないけど、「プレゼンス」はかなりその部類に近いよ。一生聴いても飽きないっていうのもあるし…、それは多分「フィジカル・グラフィティ」もそうだけど、ディープなんだよ。いや、面白いんだよ。楽しいんだよ。あぁ~、やっぱツェッペリンの世界は素晴らしいねぇ…。
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