Free - Free

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 ブルースロックと一括りで語られることの多いクリームやフリーだが、その実ブルースエッセンスを多分に含みながらも独自の解釈により楽曲としてはかなりオリジナリティを発揮していたところがその他大勢のブルースの模倣バンドとの違いではないかと。もちろん本人達はブルース大好きだし、しっかりと吸収してしまっているのでそこから離れることも難しいのだろうが、そういう基本を押さえながらも独自のグルーブとフレーズでファンを虜にしていた。それがロックってもんだ。

Free Tons of Sobs
Free - Free Free

 フリーの1969年のセカンドアルバム「Free」。クリームが解散する前後くらいに録音していてリリースされたアルバムなんだが、これがまたセカンドアルバムにしてかなり進化した渋めのロックになっているのだな。バンドとしてはフリーも68年から71年で一旦解散してるしね。まぁ、20歳前後の若者集団だったからってのはあるだろうけど、その分残された音源には若さと気合いと熱気と才能に満ち溢れた音楽が詰め込まれている。このセカンドアルバム「Free」では既に最初期のブルースカバー的な作品から独自の解釈と新機軸となる音楽が聴ける。「I'll Be Creepin」はライブ向けのフリーらしいリズムとプレイによるもので、各人が遺憾なく才能を発揮した秀作。以降のライブでも定番的にプレイされるロックチューンだね。んで「Songs of Yesterday」はアンディ・フレイザーの軽快な、そしてユニークなノリのベースラインにメンバーが絡み、ポール・ロジャースのタメの聴いた歌が響き渡るというこれも特徴的な曲だなぁ。それで三曲目の「Lying in the Sunshine」ってのが曲者でして、うん、一般的なフリーに対する感覚からしたらこれ何?誰?ってなモンだ。美しきアコギ…多分アンディ・フレイザーが弾いているものとポール・ロジャースの哀しげな歌声で展開されるバラード…と言うか、フォークソングでもないし…、なんと言うんだろうね、こういうの。淡々とアコギと歌で迫ってくるだけで、感情的に揺れるというもんでもなくてフラットなんだよ。フリーにはこの後もいくつかこういう楽曲が出てくるんだけど、アンディ・フレイザー独特の持ち味のひとつ。この人多才だわ。んで「Trouble On Double Time」はまたノリの良い、それでもアンディ・フレイザーのベースリズムがグイグイと曲を引っ張っていく曲で、コゾフの活躍がイマイチ少ないのがちょいと物足りないけどしょうがないのかな。そんで、またまた美しいフリーの一面が聴ける「Mouthfull of Glass」。ベースとクリーンなギターとアコギの絡みにゴスペルのような鍵盤の音色が効果を演出したものでね、途中のちょっとズレていくようなコード進行が心地良い。コゾフの違った側面が聴いて取れるギタープレイも聴く価値が高くって、激しくブルージーに弾くだけのギタリストではないってことがよくわかる曲です。

 ここまでがアナログA面だったね。意外とブルースに根ざした曲はここまででほとんど出てこなくて、聴けてもコソフのフレーズくらいで、新境地に達していることもわかる。ただ、まぁ、ポール・ロジャースの歌声がアレだからどうしてもソウルフルなブルースに聞こえてしまうのはあるけど、アンディ・フレイザーがかなり才能を発揮した作品だから故にバラエティに富んだ作品になってるね。ジャケットは大胆な構図でして、いや、あまり調べてないけどどんな意味だったんだろ?そしてセカンドアルバムにしてタイトルにバンド名「Free」を持ってくるのも面白いな、と。ここで新たに自分達の音楽性を誇示できたってことかな。

 さて、B面一発目を飾るのはこれまたフリーらしい名曲の「Woman」。これはもうポール・ロジャースが絶叫できる曲だし、コソフも割と見せ場がある方だし、楽曲的にはA面の「I'll Be Creepin」と同様にライブ受けするロックチューン。すると「Free Me」のようにどこか宗教的にワンパターンなリフで展開する曲へと続く。こういう曲が成り立つのはやはりポール・ロジャースの歌唱力によるところが大きいのだろうが、楽曲センスそのものはアンディ・フレイザーによるものだな、これも。ってか、このアルバムのクレジット見ると全部「Fraser, Rodgers」なんだから当たり前か。どこか境地に達している人だよなぁアンディ・フレイザーって。そこに頑張ってコソフがナイスなソロを入れるんだけど、どっちかっつうとミュージシャンとして優れたソロを入れているだけで、ギタリスト的に発揮しているモンでもない。だからコソフはこの頃も含めてセッション活動っていうのが割と多くて、弾きまくっている傾向が強かったんだ。そしてちょっと明るめに「Broad Daylight」も聴かせる曲で、かなりシンプルに作られたものの様子で凝ったことが何もできていないという感じだ。いや、悪くない曲だけど、ちと飽きるかな、これは。光る部分があまりないんだよね。妙なのはコーラスワークが入っているのでフリーらしく聞こえないってとこか。そして最後は「Mourning Sad Morning」というこれもまたアコギによるバラード…だな。ただしフルートなどで色を付けてくるのでフリーらしさってのはあんまり感じられないんだけど、こういうのもフリーなんだ、っていうのが伝わってくる、かな。これもやっぱりコーラスとか被ってくるんだけどさ、やっぱり起伏がなくってフラットなバラードなんだよ。何なんだろね、この不思議さは。英国のトラッド的な影響ではあると思うけど、ここまでフラットじゃないから…。通常のロックに対するフリー独特のリズムと同じようにトラッドに対するフリー独特のリズム、ってところか。

 昔からアナログで聴いていたアルバムで、全然リマスター盤とかボーナストラック付きとかリリースされなくて安心してたんだけど、5枚組のボックスセットが出た辺りからにわかに活気付いて、一気に紙ジャケ、リマスター、ボーナストラック付きという最も買い換える回数の少ないパターンでCDが出たのでよかった。そのボーナストラックもとんでもなくたっぷり詰め込まれているので楽しめたしね。このセカンドアルバム「Free」ではいくつかのシングルバージョンと、未発表だった「Sugar For Mr.Morrison」というこれもまたヘンなベースラインから始まる楽曲に感動したし、コソフもワウペダル使いまくって弾いている曲だから、確かにこのアルバムにはマッチしなかったろうな…とか。もちろんその他のバージョン違いなんてのも面白いんだけど、所詮はオマケでして、本編をきちんと聴いていないと楽しめないものだ。例えばアンディ・フレイザーによるアコギだと知った「Mouthfull of Glass」とかね。「Trouble on Double time」なんて初期バージョンはまったく別の曲みたいなアレンジでコソフが弾きまくってるというもんだけど、こういうのも過程を知ると面白い。

 まだまだ何度も楽しめるフリーの深い世界。衝撃的なファーストアルバム「Tons of Sobs」と世界的ヒットを放った「Fire and Water」の間に挟み込まれた形で残されているセカンドアルバム「Free」だが、それだけに野心と実験がいくつも詰め込まれたミュージシャン的に楽しめるアルバムに仕上がってます。アーティストの成長ってのはこういう風に進んでいくのかな、と。



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フレ
Posted byフレ

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