Pink Floyd - A Momentary Lapse of Reason

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 往年のプログレバンドの内、EL&Pは80年代まで体力が持たなかったっつうのはあるとして、その他は音楽性を大幅に変化させて頑張っていたりメンバーの融合を繰り返して生きていったりしていた中、大御所ピンク・フロイドは少々異なる歩みを見せたものだ。そもそも「ザ・ウォール」が1980年、「ファイナル・カット」が1983年のリリースなので、ロジャー・ウォーターズ健在期の独裁作品というのが華やかなる80年代とは異なり圧倒的な重さを醸し出していた。そこから先はご存じのようにロジャー・ウォーターズの脱退とピンク・フロイド名義の使用権による裁判、確執ってのがあってギルモアフロイドの誕生、となる。これが1987年にリリースされたのだった。

鬱(紙ジャケット仕様) Momentary Lapse of Reason
Pink Floyd - A Momentary Lapse of Reason (Remastered)

 「」…とはなんとまぁ、皮肉な邦題(笑)。鬱の根元でもあったロジャー・ウォーターズが不在となってからこのタイトルかい。中身は滅茶苦茶鬱感がないサウンドなのだが…。どっちかっつうと清涼感さえあるアルバムという気がする。ま、それは置いといて、この「」というアルバム、そもそもギルモアのソロ作品として制作していたものが母体になっているが故に、ベーシストにはクリムゾンを経由したトニー・レヴィンが参加して、面白い音を聴かせてくれます。ドラムにはカーマイン・アピスやジム・ケルトナーが参加、ニック・メイスンはほんの少し叩いている程度らしい。もちろんギルモアのソロ作だったらここまで幻想的な効果音や空間音を強調するようなことはなく、もっとシンプルな音になったんだと思うけど、裁判沙汰の確執の後に丁度良いタイミングでリリースできそうってことでピンク・フロイド名義にして健在性を見せつけようとしたんだと思う。だから、音響効果的な味付けは見事に往年のピンク・フロイド的エッセンスがたっぷり詰め込まれている。

 そして楽曲レベルも相当に高くて演奏は見事なので雰囲気をたっぷりと味わって世界観を見れるって意味では全くよくできているピンク・フロイドサウンドの世界です。特にギルモアのギターがほとばしる「Pink Floyd - A Momentary Lapse of Reason (Remastered) - On the Turning Away 現実との差異」なんてのは素晴らしくフロイド的。いや、そもそも冒頭の「Pink Floyd - A Momentary Lapse of Reason (Remastered) - Signs of Life 生命の動向」からして美しい水流の音色から始まり、これぞフロイドってなもんです。そういう世界が散りばめられているんだから悪いハズがない。ゆったりとしたテンポで進められる楽曲の数々、これぞフロイド的空間の定義。ただ、いかんせんボーカルが弱いかなぁ…とは思う。

 …と書いてきたけど、やっぱりどこか芯がないってのが自分的このアルバムの総論なんです。多分ロジャー・ウォーターズが持ち合わせていた重さというかポリシーっつうかコアな部分だろうと思う。ロジャーのソロ作を聴いているとそういう重さというのはしっかりと、これまで以上に感じるのでその差を感じてしまうんだな。いや、好みの問題で言えば、だけど。ただ、ギルモアフロイドの雰囲気ってのはもう良くできたエンターティンメントだし、キライじゃないしね。美しい世界だから好みなんだけど…、難しいな。まぁ、こういう世界もあるってことで聴ければ良いでしょ。

 アルバムジャケットについての逸話は有名なトコロだけど、各国盤などでジャケットが異なっているってのはあまり知られていない?ベッドに腰掛けている男性のポーズや、ロゴの位置などがそれぞれ異なっているみたいだね。



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フレ
Posted byフレ

Comments 4

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SANE  

ボクが「鬱」を感じるのは”Sorrow”ですかねぇ。
ボク好みの曲だったりします(笑)
ゆったりギルモアのギターを聴いたり
"Learning To Fly"のPVのような風景を
思い浮かべながら聴く事が多いです。

この時のツアーの映像は良く観ました。
Liveはたしかガイ・プラットがベースを弾いてましたね。

2009/07/30 (Thu) 00:33 | EDIT | REPLY |   
papini  

>鬱の根元でもあったロジャー・ウォーターズが不在となってからこのタイトルかい。
うまいこと言うなぁ、フレさん(笑
皮肉な日本語タイトルよねぇ(笑
わかっててこういうタイトルつけたのかしらね?
だとしたら、こういうセンス、アタシ好きだわ。

個人的にはわりと好きな音盤かな。
でも、そんなに頻繁には聴かないかも。
Learning To Flyを聴くために引っぱり出して
ついでにアルバム聴く、って感じになってるかも(笑
これよりも、ギルモアさんのソロの方が聴くかも知れないなぁ。

2009/07/30 (Thu) 10:19 | EDIT | REPLY |   
sinz  
最近になって・・・

PINK FLOYD関係を聞き返してみると、音楽・サウンド面ではギルモアもやはり重要な役割だったんだな、と思います。
シドもロジャースもいない「A Momentary Lapse of Reason」もフロイドらしい空気感はちゃんとあるんですよね・・・。
ただ、「The Dark Side Of The Moon」「Wish You Were Here」のような聴きごたえは無く、BGMの様に耳を素通りしてしまいましたが。
初期のシドのサイケデリック感、ロジャースのコンセプト、ギルモアの幻想的な空気感・・・。
それらが結実した音楽をもう少し聴きたかったですね。
・・・Wish You Were Here

2015/05/21 (Thu) 02:45 | EDIT | REPLY |   
フレ  
>sinzさん

ロジャー・ウォーターズの世界観は彼のソロ作で存分に、シドのサイケ感も彼のソロ作で、ギルモアのはギルモアフロイドで聴けるからいいかなと思ってますね、自分は。別に往年のバンドの再結成にこだわることもないし…、って考え方もありかなと。

2015/05/23 (Sat) 23:11 | EDIT | REPLY |   

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