The Rolling Stones - Beggars Banquet
60年代を駆け抜けたロックの伝説の中には必ずと言って良いほどにブライアン・ジョーンズの名が出てくる。昔からそういう伝説を追求するのも興味津々でストーンズの初期の作品には割と早く手を付けた方だった。世代的には後追いだったのでリアルタイムでどうだったのかは推測の域を出ないが、ブライアン・ジョーンズの凄さをレコードで実感できるシーンは実は非常に少ないのではないかと。最初期のアルバムはカバーばかりが収録されていて、そこでのブライアン・ジョーンズのコピーのセンスは凄かったと言われるが、イマイチはっきりと個性が出ているワケでもない。なので自分的には「黒く塗れ」のシタールやああいうのがブライアン・ジョーンズの凄さなのだろうとの印象。後はやたらとドラッグに溺れた貴公子というイメージが強い。
さて、そのブライアン・ジョーンズが参加した最後のストーンズ作品がこの名盤「ベガーズ・バンケット」だ。自分的にジャケットは招待状のヤツの方が印象深い。トイレのって、格好悪いし品がないが、招待状のジャケットの方が中味にあってる気がする。これはよく聴いた。ストーンズを理解するにはコイツだ、って思ったし、果たしてこれのどこがロックなんだ?と思う部分も多くて。ブルース好きからロックに進んだけどかなり融合的に独自色を出してきた作品だろう。キースとミックの存在感が凄くて特にキースの自己主張がバンドをグイグイと引っ張ってるからドラッグ漬けのブライアン・ジョーンズは参加できるところ少なかったと思う。ここまでオリジナリティを出してしまったら脱退も至極当然だろうし、そうやって情景を想像しながら聴いてみると面白い。
最初の「悪魔を哀れむ歌」からしてぶっ飛んでる。ストーンズの中では一二を争うくらい好きな曲だ。このギターソロの音色は何を使っても簡単には出ない。そして次の「No Expectations」だっていきなりバラードだが、スライドとピアノを駆使したストーンズらしい曲。こういう綺麗な曲がストーンズの初期にはよく聴かれて、中期で磨きがかかったのもあるが、やはりこの辺の空気感が好き。「Dear Doctor」はカントリータッチな3拍子の曲で、かなり本家に近づいてて、ミックの歌に余裕を感じられる作品。「Parachute Woman」は思い切りブルースな曲なのでブライアン・ジョーンズが活躍しているのかもしれない。しかしどれもこれもロックの名盤と言う割には全く歪んだギターの曲などなくて、アコギが歪んでると言う代物だからロックと言うのは音じゃなくてスピリッツの問題だ。これほどロックに聞こえるアルバムも多くはない。
疾走感と緊張感に溢れる名曲「Street Fighting Man」ですらギターがメインに出てこないで民族的なリズムを前面に出している。しかしコレ、かっこ良い。全部前に食う感じで入ってるもん。なかなか思い付かないし、それにしてもハウリングの音までもレコードに入れてしまうのは珍しい。普通こんな音は入れないし、バンド側も嫌がっただろうけどどうなんだろ?しょうがなかったのだろうか?そんな事もないだろうから狙ったのかも。自然発生による偶然を上手く使ったのかもしれないが、実に抑揚してくるアルバム。そしてアメリカンな「放蕩息子」もテンション高くて素晴らしい。
全くブライアン・ジョーンズの居場所が見当たらないロックの名盤「ベガーズ・バンケット」、そうしてドラッグにまみれていくブライアン・ジョーンズ。カバーの才能はピカイチだったが才能を磨く努力に長けていたキースとミックの意欲に負けてしまった天才。
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