Led Zeppelin - Physical Graffitti

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 1980年9月25日明け方、ジョン・ボーナムが嘔吐物を詰まらせてベッドで死んでいるのが発見される。10月からの全米ツアーのリハーサルを着々と始めていた所で、既にツアー日程が組まれていた矢先の出来事だった。そこから数ヶ月、レッド・ツェッペリンは存続か解散かを検討するが、結局誰もボンゾの代わりにはなれない、ということで解散を発表。レッド・ツェッペリンの12年に渡る歴史が閉じられた。

 ん~、こうやって書くと改めてボンゾの代わりが必要だったんだなぁ~と。それで色々やったけど、こないだのアーメット・アーティガン追悼によるロンドンのO2アリーナでのボンゾの息子、ジェイソンを迎えた再結成ライブというものは素晴らしい出来事だったんだと実感するね。早く正式なDVDとかリリースされないだろうか。

 …ってなことでボンゾの命日から28年、レッド・ツェッペリンのアルバムを書き進めよう。


フィジカル・グラフィティ(紙ジャケット) デフィニティヴ・ボックスセット<SHM-CD>(紙ジャケットボックスセット)

 1975年リリースの二枚組アルバム「フィジカル・グラフィティ」。これにてレッド・ツェッペリンは自らの音楽性の深さを確立し、多様性に加えて探求性を提示したんじゃないかな。筆頭に挙げられるのはもちろん「Kashmir」。
この曲の深さは例えようもないほどだ。昔から何かと「Kashmir」のことについてはあちこちで書かれていたけど、どうしてだろうという想いもあったりしたけどね、20年以上も聴いているとわかるんだよ、その深さと広さが(笑)。ま、それは順を追っていこう。

 初っ端の「Custard Pie」からして「おぉ~!、ツェッペリンのリフだ!」という感じのギターとドラムの重さ。ボンゾの音の重さとデカさはこのアルバムが一番なんじゃないだろうか。ドンドンと迫ってくるもんね。そもそもこのリフ、変拍子っぽく聞こえるんだけどこういうマジックがジミー・ペイジのワザなんだよ。んで「The Rover」が始まるんだけど、このリフってかっこよいよな。正にジミー・ペイジならではのリフ作りでもちろん曲も引っ掛かりのある重さを持ってるんだが、ギターソロがもうかっこよい。決してテクニカルではないギタリストなんだけど、この曲にこういうギターソロか、と無理しないで弾けよ、と思うけど実に曲にマッチしたソロでさ、音色も艶やかにしていてちと違う。プラントがね、全編そうなんだけどレコーディングのせいかな、どこか幻想的な空間で歌っているような音で入ってるから、あまり直接的に歌です、っていうんじゃないからさ。これも深み。んでアナログ時代のA面ラスト「死にかけて」。ここまで、というかこの後もどれも曲が長いから片面3曲とか4曲しか入っていないアルバムってのも創作意欲の表れでして、もちろん以前レコーディングした曲も入れているけどね。まぁ、それで「死にかけて」もひとつの金字塔。カバーとかパクリとか色々言われるが、この楽曲の壮大さと底力は並大抵ではない。オープンチューニングにスライドギターを駆使したギター、正にブルースからの発想でこれだけ神懸かった深みを持つリフを仕上げるというのもジミー・ペイジの柔軟な発想。最後のお茶目な「テレテレレ~」というギターと「ボンゾの咳」が有名。で、前作の余り曲「The House of the Holy」。ん、前作から外れるのはよくわかる。アルバム的にそぐわなかったんだろうね。が、こうして聴くと何ら違和感なくヘヴィーなサウンドのツェッペリン流な曲に仕上がっているからさ。さてライブでは圧倒的な迫力を聴かせてくれる「Trampled Underfoot」。ジョンジーのクラヴィネットのリフが躍動感あってね、単調だけどその分高揚感溢れる仕上がり。正にバンド、という音でボンゾの貢献度も滅茶苦茶高いし、いやぁ~、一体となった素晴らしい曲だよ。そのまま「Kashmir」に突入。不思議なチューニングとコード進行、というかリフの音色で単純ではあるけど圧倒的な迫力と貫禄を保っている名曲。最初はボンゾももっとドラムに色々とオカズを入れたりしていたそうだが、なんとかなだめてひたすらシンプルに叩かせたということらしいが、大正解。そのへんのジミー・ペイジのセンスは見事。頭の中で自分の出したい音が鳴っているんだろう。

 そういえばジャケットについても結構凝っていて、上から入れるスリーブ型、そしてビルの窓に色々な人が現れる仕掛けで、レコードの入っているスリーブも同じようにビルの中味が印刷されているのでどの表情をジャケットに出しておくかはリスナー次第という楽しさ。こういう遊び心も英国人ならではの心意気だろうね。紙ジャケCDならこの楽しみも味わえるけど、やっぱアナログですよジャケ遊びは(笑)。

 さて二枚目のディスク。ちと気怠い感じで進められる「In the Light」もこれまでのツェッペリンにはなかった曲調でなかなか馴染みにくい曲だったけど、挑戦としてはありだよな、という感じ。そして印象的なアコーヅティックプレイ…と片付けて良いのか、ギターによる協奏曲と言うのか…「Bron Yr Aur」、「狂熱のライブ」の映画のライブ会場であるMSGに向かうまでに流れている音です。英国のフォークとも違う、クラシックとも違う、かと言ってインド的でもなく、正にジミー・ペイジのオリジナリティ溢れる作品じゃないかと思っているんだけど、こういうのってどっかに似たような音楽あるのかな?ギター一本による素晴らしきテーマ。それが終わると優しくドラムが入って「Down By The Seaside」という何ともプラントの趣味丸出しな歌詞とソフトでキャッチーな曲が始まる。ツェッペリンの幅広さと余裕がこういう曲には溢れているんだけど、それでもしっかりとボンゾの迫力なドラムとツェッペリン風な音になっているからポップには聞こえないわな。C面ラストの「Ten Years Gone」。涙あるのみ、と言わんばかりに組み上げられた楽曲で、12弦ギターを含むギターの多重演奏が素晴らしい。静と動の組み合わせも見事だし、「天国への階段」に匹敵する楽曲として「Ten Years Gone」が挙げられることも多いんだけど、そういう深さと神秘性を持った曲だよね。D面一発目、いやD面って結構好きでね。多分どの面も長くて重くて迫力あるから疲れてしまうんだけどD面は5曲入っていてサクッとした曲が多いからほっとするんだろうと思う。だから割と聴いた。アナログ時代はそういう聴き方ができたからね。だから「Night Flight」のメロディのキャッチーさとボンゾのドコドコ、ジミーのリフのセンス、ジョンジーのオルガン、どれも躍動感溢れてロックしているよね。普通に。その勢いは「The Wanton Song」も同じでいやぁ~昔からのツェッペリンらしいリフじゃないですか。重さは更にハクが付いているけど、素直にかっこよいと誰もが思えるシンプルな良さだね。「Boogie With Stu」はもうお遊びの世界でこういうのをアルバムの中でできてしまうのが凄いよな。昔は好きじゃなかった曲だけど、今はまぁあってもいいか、って思える。ピアノのロールが素晴らしいから。「Black Contry Woman」も同じような印象だったけどライブを聴いてからはやっぱりいいんだ、これ、と(笑)。まぁ、その辺適当な印象だったワケですよ。そして最後の「Sick Again」はもっと違う位置にあってもいいんじゃないかと思えるくらいロック的にナイスな曲。リフも相変わらずなツェッペリン調。重さもさすがボンゾ、だし。

 いやぁ~、マジメに書いていたらキリがないくらい深いアルバムでして、ホントは二回に分けたいくらいだよな(笑)。ボンゾの迫力は多分このアルバムリリース以降に一気に加速した感じ。それにてツェッペリンも幅が広がっていった感じでジミー・ペイジとボンゾのバンドと云えるくらいに力加減が変わってる。まぁ、裏ではプラントの息子が亡くなったりと決して良いことばかりではなかったみたいだけど、少なくともアルバム聞く限りはこの時点でも世界最強のバンドだ。いや、今はもちろんなんだが(笑)。

Bonzo Drum Roll! and Sick Again 1975


Kashmir 1975


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フレ
Posted byフレ

Comments 8

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Shinyan  
ふふふ

ガンガン文章が出て来て
しまいには、それもまどろっこしそうな感じが
他のバンドを取り上げた時と明らかに違って笑えた・・・(笑)
実は、ついさっきCD屋でこの作品を買おうとしてる親父さんが居たんだけど・・・
過去のリリース盤を買おうとしてたんで、勇気を出して話し掛け・・・
「買うなら紙ジャケでSHM-CD盤ですよ・・・」と言ったんだが・・・
大きなお世話だっただろうか・・・??

2008/09/25 (Thu) 22:41 | EDIT | REPLY |   
D.K  
幻惑されて

'KASHMIR'独特の世界観のある歌ですね。ツェップってこの手のダークでポップでは無くしかも長い曲って多いですよね!それをライブでも演ってしまう!スゴイ!あとジミーペイジのリフ作りには感動します。コテコテのロックサウンドと思えば幻想的なメロディも演れる。'BLACK DOG'等の意図的にズラしたようなリズムや独特の間これもツェップの魅力のひとつですね。カッコ良すぎ!リリース当初や10代の頃理解出来なかった曲が時間の経過と共にわかってくる曲ってこの時代多いですよね!それにしてもジミーのストラップって長かったよなあ~レスポール弾きにくそ!(笑)

2008/09/25 (Thu) 23:09 | EDIT | REPLY |   
evergreen  

こんばんは。やっぱりどうしてもコメントしたくなります。フレさん凄いですね!よくこれだけ矢継ぎ早に言葉が出てきますね・・・笑~
私は、Ten Years Goneかな・・・好きなのは。
カシミールはちょっと飽きてくる・・・繰り返しなんで。(すみません)
Night Flightも案外好きです。
スワンソング作ったことも話題になったね。
とにかく、何故2枚組みなのかな~って疑問が今だにありますね。

2008/09/25 (Thu) 23:31 | EDIT | REPLY |   
papini  

ZEPの中でもこの音盤は大好きな音盤。
っても、みんな好きなんだけどね(笑
次から次へと出てくる音に、ものすごくワクワクした。
これを初めて聴いた時、まだ子供だったけど
子供でもこの音盤の凄さというか、パワーというか
そういうのはすぐにわかったモン。
それにしても、やっぱZEPの記事は力の入り方が違うね(笑
うん、すぐわかる♪
Kashmir最強よね♪アタシはこれで、猛烈にZEPに惚れたモン♪

2008/09/26 (Fri) 09:11 | EDIT | REPLY |   
Substitute  

Physical Graffitty、多面性という切り口で語れば、Zepの最高盤でしょう。
Kashimir、ギターのリフは、1、2、3.タイコは1、2、3、4。12回に一回、頭が会う。ナベアツみたい。リフと変態リズムの魔術師、Zepを代表する1曲でしょう。
Black Country Womanのボンゾ、3:27付近の強烈なトップ一発は、大きく評価されてしかるべし。

2008/09/26 (Fri) 21:35 | EDIT | REPLY |   
まり  

いや~熱く語ってますね!
私もZepに関しては熱いんですが、うまく言葉で表現できない。
「カシミール」は西洋人がなぜこんなに東洋的な音が出せるのって
ちょっと悔しい思いもあります。
フラトラあたりがこんなサウンドをやってほしかったと出来る人達だったと
思いました。

2008/09/27 (Sat) 20:58 | EDIT | REPLY |   
フレ  
多数感謝!

>Shinyan
ん?ん~(笑)。気合いが違うって?いやぁ~そうでもないけど自然に出てるかも。しかし親父さんへのアドバイスって勇気あるなぁ。その注釈は難しいんじゃないか??SHM-CDって何?って思うし(笑)。

>D.K.さん
あのストラップの長さでレスポールを弾くのがかっこよくってね、やってみると難しいんだ、これ。でも慣れると割と大丈夫♪

>エヴァ姉さん
ん?ん~、実はほとんど全く考えてないし、これ、全然聴かないで書いてる(笑)。アタマの中で全部鳴ってるから全然平気で…。Zepはそんな感じだからいつでもどこでも聴かなくてもアタマの中で鳴らせるからラク(笑)。2枚組かぁ…、実際には一枚半くらい分だったらしいけど、前作までのあまりを入れて二枚にしたみたい。1枚半は出したかった曲だからしょうがなかったんじゃない?ま、売れるだろうしねぇ…。

>papini嬢
コレってなかなかわかりにくかったけど、子供時代に凄さを理解できたってのは凄いわ。重い、ってのは実感したけど(笑)。Zepの記事は…、ん~、勝手に言葉が出てくるのでラク(笑)。

>Substituteさん
そういう変態的なの多くて面白いのがZepですねぇ~。小節数が異なる出会いって最初は「Black Dog」かな?以降ちょくちょく出てくるので楽しめますねぇ~。

>まりさん
そうですねぇ、あの音階って摩訶不思議で無国籍な感じで…、ただ、それは「Black Mountain Side / White Summer」あたりも同じでして…、その辺のセンスが不思議なジミー・ペイジっすね。

2008/09/27 (Sat) 22:46 | EDIT | REPLY |   
オダ  

Zepで一番好きなアルバムです。
AB面でのメタリックなギターのリフ、CD面でのサウンドの多様性。
Zepは何度、聴いてもいいだんけれど、このアルバムは自分の中では別格です。

〉最後のお茶目な「テレテレレ~」というギターと「ボンゾの咳」が有名。
ここ好きです(笑。
最初CD化された時、このお遊びの部分がカットされていて、すごく悲しかったなあ。
だまされた気分って感じかな。

2008/09/29 (Mon) 01:03 | EDIT | REPLY |   

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